女性が社会で活躍することが当たり前となった現代。それでも依然、男女賃金格差は確実に存在し、2026年現在、女性の賃金は男性より18%も低い水準にとどまっています。アメリカの統計によると、大学院においては修士号取得者の63%、博士号取得者の57%を女性が占めており、いずれも女性が男性を上回っています。学歴が高ければ高いほどより良い職に就き、高い収入が手に入ると考えるのが一般的ですが、女性の現実を見渡したとき、この前提は容易に覆されてしまいます。
過小評価される女性の仕事
伝統的に男性が多い職種であっても、女性の進出が進むにつれて、その仕事自体の社会的価値や賃金水準が「女性の仕事」として過小評価され、低下していく傾向があります。このジェンダーバイアスの典型的な例が、企業における事務職です。幅広いスキルが求められ、組織を円滑に動かす要である事務職は、もともとは男性中心のエリート職として扱われていました。しかし現在、秘書やアシスタント業務の実に90%は女性が担うなか、その社会的な評価は大きく変わりました。私自身、事務アシスタントとして働いた経験がありますが、「所詮は事務の人間」という目で見られ、どれだけ良いアイデアを出しても真剣に受け止めてもらえないことを痛感したものです。かつては重要とされた業務が、女性の仕事というイメージがついた途端に、誰にでもできる簡単な仕事だと思われるようになりました。
さらに問題を複雑にしているのが、女性の割合が高まると男性がその職種から離れていくという現象です。驚くことに、この傾向は早くも大学の専攻を選ぶ段階から始まっており、女性の割合がわずか25%という水準を超えると、多くの男性がその分野を敬遠するようになります。 これはSTEM分野(科学・技術・工学・数学)において顕著であり、中でも生物学や心理学など、女性が多数を占める分野は「ソフトサイエンス」、つまり簡単で重要度の低い学問というレッテルが貼られています。そのイメージが男性の参入を一層妨げることとなり、「女性が多いから一流の学問ではない」という女性蔑視的な認識がさらに増幅する悪循環を生んでいるのです。

分野別ジェンダーギャップの解消状況 (2025年) Credit: World Economic Forum, Global Gender Gap Index 2025 via Weforum.org
男性の参入で仕事の価値が上がる矛盾
一方、それとは逆に女性中心だった分野に男性が参入すると、その職種の社会的価値や賃金水準が向上する傾向があります。「コンピューター」はもともとデータ分析や計算を担う「計算手」を指す言葉で、担い手の多くは女性でした。 NASAにおける初期の宇宙飛行を支えたのも、そうした女性たちでした。しかし彼女たちの賃金は、同じプロジェクトで働く男性より40%も低かったといいます。やがてコンピューターの仕組みやプログラミングを研究する「コンピューターサイエンス」という学問が発展し注目を集めるにつれて、この職種に参入する男性が増え、賃金も上昇していきました。
同様の傾向は、現代にも見られます。「ソフトサイエンス」や、女性が多いとされる看護や教育分野といった、いわゆる「ピンクカラー職」に男性が進出すると、その職種の平均賃金が上昇します。そして男性たちは、女性よりもはるかに早く管理職へと昇進していきます。女性の昇進を阻む「ガラスの天井」とは逆に、こうした男性の優遇は「ガラスのエスカレーター」現象と呼ばれます。男性であるというだけで優遇され、見えないエスカレーターに乗るように自動的に出世への近道を歩み、その仕事で組織に長年貢献してきた女性たちの昇進を阻んでいくのです。
このように不平等な状況の中で、女性は成功のために男性以上の努力を求められながらも、その成果は性別を理由になかなか正当に評価されません。一方で男性はどの分野に就いても、単に男性であるというだけで、高い賃金や上位の役職が与えられやすい構造になっています。
女性の不利益は社会全体の損失
女性の仕事が軽んじられる風潮は、直接的には女性への大きな不利益となりますが、男性にとっても決して他人事ではありません。 男女問わず、同性が少ない分野や職場で働く人たちは、ジェンダーへの固定観念が見えない壁となり、本来の力を十分に発揮できなくなります。これは個人の問題にとどまらず、社会全体の成長と発展を損なうことにもつながります。
結局のところ、ここで挙げた問題の根底にあるのは、女性の仕事や貢献に対する社会の見方そのものです。 このバイアスと決別し、格差をなくしていくこと。 それは性別にかかわらず、すべての人が自分に合った仕事ができる社会を築くために、私たち一人ひとりの行動にかかっています。

NASAが開催した女子高校生向けイベント「STEM Girls Night In」での一コマ Credit: NASA/Goddard/Debbie Mccallum, CC BY 2.0, via Flickr
ゲストライター T. Msizaによる寄稿
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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