私たちは長い人生の中で、全く知らない土地に移り住むという選択をすることがあります。その理由や決断までの背景は人それぞれですが、根底には「何か新しいものを求める」といった気持ちが多かれ少なかれ存在するものです。より良い生活を求めて移り住む人もいれば、仕事や学校の都合、パートナーや家族の関係、新しい経験をするためなど、目的は様々です。
新しい世界への一歩
住み慣れた環境を離れて新しい場所へ行くことは、愛する家族や親しい友人と別れることにもなり、不安を感じるのは当然です。新しい土地の気候、その場所特有の文化や食べ物に慣れていく必要もあります。変化に対して生じる抵抗感は人間として極めて自然な反応ですが、重要なのは、同時に「何を新しく得られるか」を意識することです。新しい環境に身を置くと、自分自身のことや人生について、そして移り住んだ先の社会や人々の魅力について、貴重な気づきを得ることができるのです。
私は若い頃、将来を模索する中で生まれ故郷を離れました。それが私にとって、初めての転居でした。成人後は医療従事者として活躍できる場を求め、再び新天地へ。それまで住んでいた西アフリカは教育や医療業界に構造的な不備が多かったので、もしそこで医療関連の仕事を目指していたら、恐らく大変な苦労が待っていたのではないかと思います。そうして、私は西アフリカから中央ヨーロッパに移り、将来に向けて学業を続けることとなりました。
自分が「異質」であると自覚する経験
私の大学の授業は英語で行われていましたが、街の住民のほとんどは英語を話しませんでした。彼らの話す言葉は英語とは全然違うものだったので、理解できる単語はほとんどありませんでした。そのため、大学の授業以外の日常生活で食料品を買ったりバスに乗ったりする時には、いつも翻訳アプリが大活躍でした。
また、現地の人々との人種の違いを体感し、驚くこともありました。新しい環境に馴染みしっかり根を下ろせたと思えるまで、自分の忍耐力と適応力を最大限に使い、頑張っていたのを思い出します。時折街の人々があまり得意ではない英語で「あなたの髪は珍しくて魅力的ですね」と話しかけてきたのですが、その時は自分の肌の色や髪の質感の違いをそれまでになく意識したものです。中には黙って私の髪に触る人もいましたし、スーパーマーケットで商品を手に取ろうと身をかがめた時、なぜか髪の毛を引っ張られたこともありました。
新しい土地が教えてくれる自分の本質
こうした様々な経験は決してネガティブなことだけではなく、暮らし方や生き方には多くの選択肢があることを学んだと私は思っています。移り住んだ街の良いところをじっくり観察し、それを故郷での経験と比較し、客観的に考察することもできました。個人的には、故郷の西アフリカのインフラがいかに整備されていないかということをとても強く感じました。交通システムから郵便、医療システムに至るまで、中央ヨーロッパの公共施設を利用するたびに、西アフリカがまだ発展の途上であるのをひしひしと感じたものです。一方で、新しい場所での自立した毎日は新鮮であり、自分の本質的な部分、自分が本当は何を望み、何を好むのかなど、自身について多くの気づきを得ることができました。
新しい土地に移り住み、その社会に馴染むにはとかく苦労が付き物です。しかし、新しいことを学び、窮屈な社会規範に縛られずに本当の自分を見つけることは、非常に貴重で得難い経験となります。その数々の経験から、個人の成長やよりよい生活への、ポジティブで解放的な一歩が生まれるのです。自分を全くの新しい環境に置くことで、今まで知らなかった素晴らしい考え方や社会のシステムに刺激を受けます。そしてその場所に適応していくことは一種の挑戦であり、成長への絶好の機会でもあります。将来母国に帰国するか否かに関係なく、新しい社会で発見した自分自身、そして現地の人々との多様な経験は、人生の中で決して消えることのない財産となっていくことでしょう。

ゲストライター M. Oyejolaによる寄稿
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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