旅行の中でも、飛行機による空の旅は格別です。日常から解き放たれた自由と、これから体験する様々な出来事への期待で胸が膨らみます。ところがナイジェリアでは、車椅子利用者に対する差別によって、障がいのある人々は時に存在を完全に無視されたような悲しい気持ちにさせられることがあります。旅行を楽しみにして空港に到着し、いよいよ搭乗という時に航空会社から「車椅子では飛行機に乗れません」と言われたら、皆さんはどうしますか?ナイジェリアでは、実際に多くの車椅子利用者がこのような経験をしています。同国の航空業界が真にインクルーシブな環境を乗客に提供できるようになるには、まだ多くの課題が残されています。
多発する搭乗拒否
ナイジェリアの政府高官、オラレワジュ・オラドス氏は、事前にチケットを購入し搭乗手続きまで済んでいたにもかかわらず、同国のアクレ空港でグリーンアフリカ航空による搭乗拒否に遭いました。理由はただ1つ、彼が車椅子を使用していたということ。結局彼は予定していた飛行機には乗れず、別の航空会社から高い値段で搭乗券を購入せざるを得ませんでした。ナイジェリアの障がい者権利活動家であり、NGOの創設者兼CEOであるチケ・オコグウ氏の場合も、ダナ航空が車椅子利用者である彼の搭乗を拒否。その際に同航空会社は、「特別なケアが必要な乗客」の夜間搭乗を禁止する規則の存在を理由にしています。さらに教師として働くグロリア・メアリー・ヌオグボ氏も同航空会社から同様の扱いを受けるなど、車椅子利用者を邪魔者扱いし、排除するかのような航空会社の姿勢が改めて明らかとなりました。
障がい者への偏見と構造的問題
これらの事例は、たまたま起きた出来事ではありません。現在のナイジェリアの航空業界が抱える、組織的な問題と密接な関連があります。同国における空港の多くは、車椅子用のスロープ、エレベーター、バリアフリーのトイレなど、障害のある乗客向けの基本的な設備すら整っていません。移動にサポートが必要な乗客には、その場しのぎの対応で、訓練など受けていないスタッフが介助を行うのが実情です。2018年に成立した「障がい者差別禁止法」では、空港を含む公共建築物に障がい者用の設備を導入することが義務付けられています。しかし現実には未だ設置が進んでいない建物も多く、障害のある人は誰にも頼れず自分で何とかせざるを得ません。他文化への理解不足や偏見の存在も問題を深刻化させており、空港スタッフが障がいのある乗客の介助訓練をまともに受けていないことが原因で、乗客に対する失礼な態度や不必要なトラブルに発展することも多々あります。
現在、障がい者の権利向上に尽力するアデボラ・ダニエル大司教のような人々が、社会を変えようと先頭に立って活動しています。彼自身も、ナイジェリアのムルタラ・ムハンマド国際空港にあるケンタッキー・フライドチキン(KFC)で「車椅子は入店禁止」と言われ、障がいに対する差別を経験しました。この一件で世間の批判を浴びたKFCは謝罪に追い込まれましたが、同時に空港の構造的な欠陥がいかに深刻であるかが浮き彫りとなりました。ダニエル大司教は自身の経験からインクルーシブな社会の必要性を強く感じ、障がい者の声をより広く社会に届け、世の中を改革すべく活動を続けています。しかし、本当に変わることを目的とするならば、謝罪を受けるだけでは意味がありません。絶対的に必要なのは「改善に向けた行動」なのです。空港設備や構造の使いやすさを見直し、スタッフへの訓練を義務化する。そして障がい者権利法の厳格な施行と遵守の徹底が、インクルーシブな社会への重要なステップとなります。

アデボラ・ダニエル大司教とオライタン夫人
Credit: Opelogbon, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
スカンジナビア航空の取り組みに学ぶ
ナイジェリアが未だ環境整備に窮する一方で、ノルウェーなど北欧のスカンジナビア諸国においては、インクルーシブな空港設備のために最大限の対策が講じられています。例えば、ノルウェーでは空港の造りそのものに様々な配慮が施され、ほぼすべての空港バスに車椅子用のリフトやスロープがあります。こういった環境整備によって、障がいのある人々もスムーズな旅行を楽しむことができます。またスカンジナビア航空(SAS)は、すべての乗客が快適な旅を満喫できるよう明確な方針を打ち出し、特別な配慮が必要な、特に障がいにより移動が難しい乗客へのサポートを提供するなど、アクセシビリティ向上に真剣に取り組んでいます。
障害があるからといって、せっかくの楽しい旅行を屈辱的な経験で台無しにしてはなりません。多くの手つかずの問題を抱えるナイジェリアは、国家としてより本腰を入れた対策を行う必要があります。航空業界は乗客の身体の状態に関係なく、すべての乗客を重んじ、敬意を持った対応ができるようにならなければなりません。その日が来て初めて、空の旅は全ての人にとって公平なものとなり、車椅子利用者も安心して快適な旅行を楽しむことができるのです。

Credit: Sharon Hahn Darlin, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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