Credit: pikisuperstar via Magnific
フェミニズムとは、性別やジェンダーに関わらず、すべての人が平等な権利と機会を持ち、個人の生き方を自ら選択できる社会を目指す思想であり、社会運動です。しかし近年、SNSの爆発的な普及を背景に、フェミニズムに対する偏見や誤解が拡大しています。ネットを眺めていると、フェミニズムを過激で攻撃的なもの、あたかも「男性を敵視する思想」であるかのように歪曲された投稿や動画、コメントを目にすることが少なくありません。フェミニズムが本来の理念とは著しく異なる姿にねじ曲げられる様子を、私はこれまで幾度も目の当たりにしてきました。
特に問題なのは、男性優位の価値観や女性蔑視を広める「マノスフィア」のインフルエンサーや、フェミニズムという概念を正しく解釈していない人たちによる、過激な情報発信です。そのなかでも、こうした誤った情報や不当な印象操作が、アルゴリズムに乗って広範囲に拡散されている点が非常に懸念されています。悪意ある投稿が、フェミニズムとの唯一の接点になっている人も多く、本来の主張が正確に理解されないまま、偏見が定着してしまっているのです。そのため、感情論や誤解に基づく言説を排し、フェミニズムについての明確で客観的な事実に基づいた議論が、これまで以上に重要になっています。
女性優位を目指す思想という誤解
「フェミニズム(Feminism)」という言葉は、「女性」を意味するラテン語「Femina」に由来しています。この語源的背景から、男性があらゆる場面で権力を握る「家父長制」の対極、すなわち男性優位から女性優位の社会に置き換えようとする運動だと誤認されることが多々あります。しかし、これは明確な誤りです。歴史的に見ても、フェミニズムは女性への抑圧や不平等を解消するために始まった社会運動でした。しかし現在では、性別やジェンダーにまつわる問題にとどまらず、社会的に不利な立場に置かれてきた人々が直面する、さまざまな格差や差別に向き合う思想へと発展しました。
フェミニズムは、男性を嫌悪する思想でもなければ、家父長制が生み出した構造的問題の責任を個々の男性に転嫁するものでもありません。また、すべての男性が家父長制の恩恵を受けていると決めつけるものでもなければ、男性自身が直面する不平等や差別を否定するものでもありません。フェミニズムが重視しているのは、男性と同様に、女性もまた「単一で均質なグループ」として一括りにはできないという点です。ジェンダーは、人種や階級、性的指向、障がい、文化など、アイデンティティを構成する他の要素と密接に絡み合っています。そのため、同じコミュニティに属する人々の間であっても、個々人が経験する不平等の形は異なります。フェミニズムが理想とするのは、誰もが同じ経験をするはずだと決めつけることではなく、こうした違いを受け止めることなのです。
フェミニズムの本質は自由と平等
フェミニズムの根底にあるのは、平等であることと、自らの生き方を自由に選択できる権利です。そして、平和な社会にどう貢献するかを、一人ひとりが主体的に意思決定し、進むべき道を切り開いていけることを大切にしています。この思想が同時に問いかけているのは、女性だけでなく、あらゆる人々を縛りつけている家父長制の構造そのものです。「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」といった伝統的な性別役割に当てはまらないという理由だけで、不当に不利益を被るべきではないという考え方を広めているのです。著名なフェミニズム活動家であった故グロリア・スタイネムは、かつてこう語っています。「フェミニズムの目的は、一人ひとりの個性を解放することです。そして私たち誰もが、生まれ持った資質と育ってきた環境の双方によって形づくられた、かけがえのない存在であると深く理解することにあります。」


グラフ(上):男女平等に賛成する人の割合
グラフ(下):自分を「フェミニスト」と考える人の割合
フェミニズムに共感しても「フェミニスト」とは名乗らない
平等を重視するこうした意識は、自らをフェミニストだとは考えてない人たちの間にも浸透しています。イギリスの世論調査会社YouGovによると、「男女は同等の権利と社会的地位を持つべきだ」という考えに回答者の77%が同意した一方で、自らをフェミニストだと答えた人は32%にとどまりました。つまり、すでに多くの人がフェミニズムの本質的な理念を共有しているにもかかわらず、「フェミニズム」という言葉に対する誤ったイメージが広がったことで、自分自身ををフェミニズム活動の支持者として位置付ける抵抗感を抱いているのが実情です。
フェミニズムを、ジェンダー間で勝ち負けを競うものと捉えるべきではありません。平等とは、誰かが得をすれば誰かが損をする「ゼロサムゲーム」ではないのです。女性が社会的な権利や機会、より大きな自由を手にしても、それによって男性の権利や自由が奪われることはありません。 公正な仕組みをつくることが、誰かの自由を奪うのではなく、誰もが自由に生きられる可能性をより一層広げます。これこそが、私たちがともに目指すべき社会です。SNS上のフェミニズムに関する断片的な解釈を鵜呑みにせず、信頼できるフェミニズム研究者や活動家の論考、さまざまな調査や書籍に触れ、誤った情報を正すことで、この運動への理解を一層深めることができます。
ネット上で広まる、表面的で単純化されたフェミニズム観は、この思想が持つ本来の理念とは大きくかけ離れています。フェミニズムがジェンダー格差というソーシャルイシューの解決を成し遂げるために、男性を敵にする必要はまったくありません。むしろ男性には、男性同士の間で生じている誤解を正していくという、不可欠で重要な役割が期待されています。フェミニズムとは、「男なんて最低だ」といった極端な思想ではなく、また女性が男性に取って代わり社会の頂点に立つことを目指すものでもないと、まずは理解することが重要です。そして性別という属性によって、個人の選択肢や将来の可能性、生き方の自由が制限されない社会を構築すること。それこそが、フェミニズムの本質です。
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

Credit: Joanna Morris via YouGov

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