一日の仕事を終え、帰宅して何気なくつけたテレビ。そこで連日のように報じられる、理不尽な出来事やマイノリティの尊厳そのものをめぐる議論に、やり場のない苛立ちや消耗感を経験する人は多いのではないでしょうか。これまで選挙では必ず投票し、社会問題にも声を上げてきた。それでも、一向に変わらない現実を突きつけられると、「結局一人の力では何も変えられない」という無力感や絶望感に襲われてしまうものです。
大きな課題にこそ不可欠なSolidarity
こうした無力感が積み重なると、人は次第に大きな社会問題から距離を取るようになります。それは関心を失ったからではなく、真剣に向き合ってきた分、心が折れてしまうためです。そうした状態になると、多くの人は「自分一人が行動しても意味はない」と投げやりな気持ちになってしまいます。しかし、そこで沈黙し、問題から目を背けてしまうと、既存の権力構造や不平等な世の中の問題をいつまでも解決することはできません。たとえ個人では太刀打ちできないように思える課題であっても、周囲の人々とSolidarity(ソリダリティ:連帯)を築き、共に行動することで、変化への道は確かに開かれていくのです。

Credit: Global Solidarity Report 2025, via Global Nation
個の連携で生まれる変化
「アライシップ(Allyship)」とは、差別や疎外に直面する人々を支援する行動や姿勢を指します。アライシップには、当事者の経験に真摯に耳を傾け、見過ごされがちな声を拾い、不平等を生み出す制度や慣行、人々の日常的な行動に異議を唱えることまでが含まれています。特に、自らの比較的優位な立場を活かし、組織や社会の中で発言力や権限を持たない人々を支えるアライシップは、DEIを進めるうえで重要な役割を果たします。
Solidarityは、こうしたアライシップの理念を土台にしながら、個々の支援にとどまらず、集団として連携し行動することを重視します。不正義や不平等を、特定のマイノリティだけの問題ではなく、社会や組織全体の健全性に関わる課題として捉え、責任を皆で担うという考え方です。近年の人種格差の是正に向けた動きや、ジェンダー平等、労働者の権利を求める社会運動は、Solidarityの力を象徴する例と言えるでしょう。共通の価値観のもとで人々が連帯し共に行動するとき、変化はより速く、確かなものになります。Solidarityは、公平性を「一部の人が背負う課題」から、「皆で引き受ける責任」へと変えていきます。
研究においても、社会や組織の変革を進めるうえでは、個別の訴えよりも、集団による行動の方が効果的であることが示されています。社会的に不利な立場に置かれている人々は、個人の努力だけでは越えられない構造的な壁に日々直面しています。
Solidarityは、人々が連携して不公平な制度に向き合い、権力構造を見直し、必要な場面で集団としての力を発揮することを可能にします。その結果、変革の責任をマイノリティの人々だけに押しつけることなく、組織全体で取り組むことにより、より確かな成果につながります。
Solidarityで組織は強くなる
組織の中でSolidarityを実践するチームは、相互の信頼が厚く、心理的安全性や協働性も高い傾向にあります。不平等や排除につながる行為を見過ごさず、組織として向き合う姿勢を示すことで、従業員のエンゲージメントや組織への信頼感は格段に高まります。まずは、共通の問題意識を持つ仲間とつながり、従業員リソースグループ(ERG)などへの参加を促すことが大きな一歩です。同時に、上層部のリーダーが、組織の方針や評価制度、意思決定のプロセスに、Solidarityの視点を組み込むことも欠かせません。
またSolidarityは、マイノリティの人々、特に組織の中で十分な機会が与えられてこなかった人々の孤立を和らげ、帰属意識を育むことで、人材の定着にも寄与します。こうした意識が根づく組織は、人種差別やハラスメントなどコンプライアンスに反する出来事に直面した際にも、形式的な声明だけで終わるのではなく、自社独自の価値観や信念に沿った真摯な行動を取れる体制が整っています。
メンバーへのサポートやアライシップを単なる「善意」にとどめず、実際の変化へと結びつける力をSolidarityは秘めています。その鍵となるのは、責任を皆で引き受けるという姿勢。立場や違いを越えて共に立ち上がることで、個人では成し得ない形で不平等に立ち向かうことができます。人々の分断が深まる現代社会において、Solidarityは、よりインクルーシブでしなやかな強さを持つ、一人ひとりの尊厳を大切にする職場への道を示してくれます。DEIを持続的に前進させるためには、個々の努力だけではなく、皆で向き合い続ける覚悟と行動が今後も強く求められます。

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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