女性×ギャンブルの新たな可能性|危険な依存リスクと支援対策

北米におけるギャンブル業界は、伝統的に「男性優位」の世界でした。ギャンブルの運営側も、賭けに参加する顧客たちも男性の割合が高く、現在もこの業界の管理職は男性が70%を占めています。

様々なギャンブルにおいて大きなジェンダーギャップは見られないものの、現在急成長している「スポーツベッティング(スポーツ賭博)」の参加者は、70%が男性です。日本では違法ですが、世界ではスポーツベッティングを含むオンライン賭博を合法化する国が増える中、さらなる市場拡大に向けて、「女性」という強力で未開拓なマーケットへの注目が不可欠となっています。一つの事例として、「スタンレー・クエンチャー・タンブラー」の成功があります。このタンブラーは老舗水筒メーカーの商品で、その保温性や耐久性などから、元々は屋外で働く男性労働者中心に愛用されてきました。ところが最近のマーケティング戦略やSNSによってアメリカの女性を中心に爆発的な人気となり、売上は2023年までのわずか4年で10倍の7億5000万ドルを越えるまでに成長しました。このように、女性市場が握る可能性は計り知れないのです。

ギャンブルゲーム業界における職種別の男女比を示すグラフ

Data: 業界別の従業員男女比  Gaming Industry Workforce Diversity Report via American Gaming Association


顧客も従業員も女性増のギャンブル業界

今や多くの女性が経済的に自立し、ギャンブルに触れる機会も増えました。ギャンブル業界は積極的に女性をターゲットとするようになり、女性市場の拡大に注力しています。オンライン賭博の普及や、「Bet She Wins」のような女性向けギャンブルコミュニティの定着により、女性がギャンブルに参加しやすい環境が整い、実際に参加率も上昇しています。The American Gaming Association(米国ゲーム協会)によると、女性のスポーツベッティング人気は徐々に高まっており、現在では参加者の26%が女性とのこと。また、2023年から2024年の1年で、スーパーボウル賭博に参加した女性の数は51%も増加しました。こうした中、ギャンブル業界では「Global Gaming Women」のような女性支援組織が設立され、業界内の交流やメンターシップの機会を提供しています。同組織には現在、ギャンブル業界で働く7,500人以上の女性が所属しています。

ギャンブルに潜む重大なリスクと女性特有の傾向

しかし、ギャンブルには依存症などの重大なリスクがあり、本人やその家族に深刻な影響を及ぼす可能性があります。多くの事業者は、ギャンブル依存症や過度なギャンブルによる経済的リスクや社会的リスクを軽減する施策を実施していますが、依存のリスクにおける男女差には十分な配慮が為されていません。女性はアプリやウェブサイトなど、よりプライベートな空間で賭け事をする傾向があり、そのため、娯楽としてのギャンブルが依存症へと移行する兆候を周囲が察知しにくいという特徴があります。また、女性は「子どもの保護者」という社会的イメージが強いため、ギャンブルで問題を抱えても、自ら助けを求めにくいという課題もあります。さらに、ギャンブル依存がもたらす影響は経済的損失にとどまらず、家族、とりわけ子どもたちの身の安全や命に関わるリスクに発展することもあります。例えば、母親がカジノでギャンブルに熱中し、炎天下の車内に放置された子どもが死亡するという痛ましい事件も実際に報告されています。

ギャンブルを正しく安全に楽しむために

ギャンブル業界の今後の成長において、女性が重要な役割を果たすことは言うまでもありません。しかし持続可能な成長を実現するためには、ギャンブル業界が、ジェンダーなどの多様性を考慮した運営方針を明確に打ち出す必要があります。具体的には、依存症を防ぎ安全にギャンブルを楽しめるプログラム(Responsible Gambling Program)の普及や、マーケティング戦略、商品開発の工夫を行い、依存症や経済的リスク、社会的リスクを軽減するような対策です。また、ギャンブルを安全に楽しむための女性向け支援ツールを充実させ、依存症予防やリスク管理について学ぶ機会を提供することで、若い世代にも正しい知識を広めることができます。近年の研究では、成人より未成年の若者のほうがギャンブルによる問題を抱える割合が高いことが分かっており、非常に深刻な問題となっています。実際、筆者自身もこの業界に携わる者として、6歳の娘に「安全な遊びとは何か」について話しています。彼女が将来、ギャンブルを娯楽の一つとして選んだとしても、楽しむための知識と手段を持っていてほしいとの願いからです。「Gamblers Anonymous」はギャンブル依存症の人たちを支援する国際的な自助グループですが、ここでは対面やオンラインでの女性向けミーティングを行い、お互いの経験を共有しながら回復を目指しています。また、「The Broke Girl Society」のポッドキャストでは、体験談の共有以外にも専門家との対談や参加者同士の支え合いの場を提供し、ギャンブル依存症に悩む女性を支援しています。こうした取り組みは、より健全なギャンブル文化を築くための、着実な一歩となるでしょう。

女性の持つ影響力を理解し、それを事業に活かせる企業は、長期的な成功を手にする可能性がより高まります。さらに運が良ければ、「スタンレー・タンブラー」のような爆発的ヒットも、将来的に期待できるかもしれません。

セッション中に依存症について話し合う女性心理学者と患者

ゲストライター K. Maseliによる寄稿

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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