企業の真心をデザインに|販売戦略とは一線を画す支援の形

欧米を中心に13,000店舗以上を展開する、大手ディスカウントスーパーのAldi。この企業と同様に、かつてDEI推進を積極的に掲げていた多くの企業が、近年は方針を転換し、DEIから距離を置くようになっています。こうした動きに対し、消費者の間では「本気の支援ではなく単なるイメージ戦略だったのか」という戸惑いと落胆の声が広がっています。LGBTQ+支援の象徴であるレインボーロゴを掲げるだけの見せかけの取り組みでは、当事者たちには何ら意味を成しません。

過去3年間で、四半期決算説明会でDEIに言及する企業数減少を示すグラフ

過去3年間の四半期決算説明会で DEI に言及した企業数
Credit: AlphaSense, via Axios


明治の取り組み、プライド支援を形に

菓子や乳製品でおなじみの日本の食品メーカー、株式会社 明治(以下、明治)。そして世界中で愛されるスニーカーブランドのコンバース。この2社は、プライド月間(毎年6月)を起点に、一貫した姿勢でLGBTQ+コミュニティを支え続ける代表的な企業です。例えば明治は、人気チョコレート商品「マーブル」にて多様な気持ちに寄り添う「ダイバーシティパッケージ」を数量限定で発売しました。また、従業員リソースグループ(ERG)としてLGBTQ+アライネットワーク「Marble」が組成されており、工場から本社に至るまで、あらゆる社員の積極的な参加が呼びかけられています。ERG活動のうち月90分を勤務扱いとする会社からの支援もあり、現在のメンバーは約100名にのぼるといいます。

2024年に発売されたマーブルパウチ ダイバーシティパッケージは、「アライ」としてLGBTQ+コミュニティをはじめとした多種多様な人々を支援する、明治の継続的なコミットメントを表しています。同社は日本で初めてとなる常設の大型総合LGBTQ+センターの運営を行うプライドハウス東京に2022年から協賛していますが、2023年には同団体と協働で、明治ミルクチョコレートCUBIE Diversityパッケージを数量限定で発売しました。日本のバレンタインデーは、女性から男性へチョコレートを贈るという、性別に基づく慣習が意識される日です。その中で、レインボーをイメージしたCUBIEのダイバーシティパッケージには、性的マイノリティの人々も含め、多様な人がバレンタインを楽しめるようにとの思いが込められています。このCUBIEのコンセプトをもとに、翌2024年のマーブルのダイバーシティパッケージは、多様な人々に寄り添う企業の思いをより強く反映しました。

マーブルパウチ ダイバーシティパッケージ


長期的な活動が見せる企業姿勢

コンバースは、2025年6月のプライド月間に発売したLGBTQ+デザイン商品を、期間限定ではなく通年で購入可能としました。これは、限定商品で購入を誘う手法に一線を画し、プライド活動への継続的な支援を貫く同社の姿勢を明確に示すものです。「Proud to Be」と名付けられたこの特別コレクションは、既に10年以上続く取り組みとなりました。2025年には、LGBTQ+の支援団体であるIt Gets Better ProjectやAli Forney Centerいった団体と連携し、国内外のチャリティに約340万ドルを寄付すると表明しました。これら様々な活動により、LGBTQ+コミュニティの存在が一般社会でも認識されるようになり、彼らへのより深い理解と支援につながっています。

毎月6億人以上が利用する写真共有サービスPinterestも、2月の黒人歴史月間(Black History Month)において、黒人コミュニティへのアライシップを明確に示しました。同社の黒人従業員とアライによるERG「Blackboard」は、「Tailored」と名付けたキャンペーンを発案。過去から現代までの黒人ファッションの魅力を紹介すると共に、黒人スタイリストのロナルド・バートン3世の功績を称えました。また、PR企業のCEOブレナン・ネバダ氏は、「2025年は黒人歴史月間への企業の取り組みがほとんど見られなかった」と指摘。かつて賛同企業が非常に多かったことを考えると、昨今の急激な減少は異例といえます。利益優先の企業が増え、またトランプ政権への迎合を意図したDEI後退の動きが強まる中、Pinterestは一貫して取り組みを続けた、数少ない企業のひとつです。

Z世代が見抜く企業の本気度

購買力が急速に伸びているZ世代(1990年代後半〜2010年代前半生まれ)は、企業のDEIに対する動向を鋭く見ています。数年間の「見せかけの支援」の後、利益優先のために方針を翻すのではないかと、企業に対し常に懐疑的な見方をしているのです。たとえば、かつてDEI推進に積極的で、マイノリティ支援でも高く評価されていたアメリカの大手小売チェーンTargetは、DEI支援縮小によりプライドイベントのスポンサーから外されることとなり、最終的にCEOの辞任や120億ドルもの損失を招き、企業価値に大きな影響を与えました。今や「大企業を信頼できる」と答える人はわずか30%という時代です。世論や社会の動きに流されることなく、地域社会への投資と自社の価値観を貫く姿勢こそ、今の企業に求められていると言えるでしょう。

風になびくレインボーフラッグ

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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