アメリカ社会保障局委員長、マーティン・オマリー氏は、Supplemental Security Income(65歳以上、もしくは障がいのある低所得者への給付金制度。以下SSI)の審査時に使用される職業データベースを、約50年ぶりに更新すると発表しました。また、障がい者がSSIを申請すると、従事可能な職業があるかどうかを社会保障局が職業分類辞典(Dictionary of Occupational Titles、以下DOT)にて審議しますが、そこから114もの古い職業が削除されました。中には爬虫類の飼育やナッツの選別などといった仕事もあり、これがSSI給付希望者からの給付申請をことごとく却下してきた一因とも考えられるため、これでやっと実態に近づいてきたと言えます。また今後の障がい者申請への基準が大きく変わるということにも繋がり、障がい者本人や支援団体にとって非常に大きな変化となります。
時代遅れの職業データベース
一般的にアメリカで障がい者申請を行う際、DOTデータベース上にその申請者が出来そうな仕事(主には座って行う業務)があれば「労働が可能」と判定され、SSIの給付が棄却されることがあります。申請者の年齢、就学履歴、職歴なども確認の上データベースと照合するので、システム的には一見合理的にも思えます。ところが、2022年のワシントン・ポストの調査で、社会保障局が「実際には既に存在しない職業が含まれた基準で審査し、SSI申請を却下していた」という問題が明らかになりました。1977年の最終更新以来、オートメーション化や海外への業務委託などが進み、今は消えてしまったような職業が依然としてDOTに載せられている状態が続いていたのが原因です。近年は時代とともに肉体労働中心の仕事から情報関連やサービス業に移行しつつありますが、実はアメリカ労働省は既にこのデータベースを33年前から全く使用していませんでした。ワシントン・ポストの調査によれば、古いDOTを基準に審査したことで、何千、何万もの申請が受理されず棄却されていたということです。実際の正確な数は不明なものの、社会保障局の発表では2020年の申請件数全体のうち67%が受理されませんでした。
不平等で理不尽な審査基準
電気技師として働いていたロバート・ハード氏は、不幸にも脳卒中を2度も患いました。そんな彼は、ナッツの選別やダウエル・ピンの検査、卵の検品などの簡単な仕事なら出来ると判定され、社会保険局はSSI申請を受理しなかったのです。ワシントン・ポストの調査に対してハード氏は、「私の手が終始震えているのを見れば、ナッツ選別の仕事すら難しいことくらいすぐに分かるはずだ」と制度の不備を訴えました。
米国政府は既にこういった諸問題を把握しており、社会保障局と退役軍人局の障がい者プログラムはどちらも「最重要課題」と考えられていました。これらの障がい者プログラムは国民に対して不利益となり兼ねず、内容を一新すべきと認識されていたということです。米国政府説明責任局(Government Accountability Office、政府の監視・監査を行うアメリカ合衆国連邦政府の独立機関)も、これらのプログラムが未だに古い情報に基づき運営されていることを強く憂慮していると見解を述べました。
障がい者申請と給付制度、改善への道
DOTのデータが刷新され、今は存在しない職業がデータから削除されても、障がい者の社会保障申請が承認されるのは容易ではありません。社会保障の申請をしてから決定通知を受け取るまで6〜8ヶ月も掛かるのです。それでもこの措置により受給基準が改善されるのは確かで、障がい者や支援者たちにとって大きな一歩になることは間違いありません。
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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