アメリカでは現在、全体の17.9%にあたる約650万世帯が食料不安を抱えています。そのうち、子どものいる家庭は8.9%にのぼります。2025年には、アメリカの政府予算が議会で承認されず、一部の行政サービスが一時的に停止する「政府閉鎖」が起こりました。この影響で、SNAP(Supplemental Nutrition Assistance Program:補足的栄養支援プログラム)の11月分の給付が大きく遅れ、多くの家庭が毎日の食糧確保に不安を抱える事態となっています。SNAPは低所得世帯向けの公的支援で、食費に特化した生活保護のような制度です。今回の政府閉鎖は、こうした支援を利用する人々への偏見や社会的な差別意識が、未だに存在することを浮き彫りにしました。社会に根付くこの偏見は、セーフティーネット予算の削減に始まり、街から弱い立場の人々を排除する「敵対的建築物」に至るまで、様々な影響を及ぼしています。
貧困層への支援を巡り分かれる世論
11月分のSNAP給付に関する政府討議において、受給者に対する人種差別的、階級差別的ともとれる発言が多く聞かれ、そういった風潮が一層広まることとなりました。「低所得層は給付金で楽をしている」という偏見で世論は二分され、支援規模についても意見が割れています。中には、生活保護は税金の無駄遣いだとの主張もあります。こうした意見には、受給者が給付金をジャンクフードに使ったり、逆にステーキやロブスターなどの高級食材を購入しているという誤情報が流れたことなども少なからず影響しています。
さらには、給付金が支給されないことに腹を立てた黒人女性が、店で略奪や暴言に及ぶ様子に見せかけた、AI生成の偽動画まで拡散されています。こうしたフェイク映像に登場する女性たちは、「ウェルフェア・クイーン」と揶揄され、嘲笑の標的となりました。この言葉は、1980年代にレーガン大統領の発言を通して広まった蔑称で、黒人女性を不正受給や働かない人々の象徴とした偏見の産物です。

本当に支援を必要とする人が救われない現実
低所得層の多くが黒人や先住民族であることは事実ですが、SNAP受給者の実態とは必ずしも一致していません。実際、受給者の大多数は白人の高齢者です。黒人女性が不正受給をしているかのような誤ったイメージは、事実と全く違うのです。そしてこの差は、有色人種の低所得者の中に、「ウェルフェア・クイーン」などと後ろ指をさされることを恐れて申請を控える人が、非常に多く存在する可能性を示しています。
中には、受給資格があっても、社会的スティグマが原因で制度の利用に抵抗感があり、申請をためらう人もいます。特に男性は、生活支援を受けることで批判されるケースが女性の約3倍にものぼるとされます。男性が、「稼ぎ手であるべき」というジェンダーロールを強く期待されることが背景にあると見られ、支援を受ける行為を「人生の失敗」や「負け犬」として捉えてしまう、男性特有の価値観の現れでもあります。

SNAP 受給者の人種別割合
Credit: What the data says about food stamps in the U.S., Pew Research Center, Washington, D.C. (November 14, 2025)
地域に投入されるお金は利益を循環させる
給付金受給者に対する誤ったイメージを広めるのではなく、支援金給付制度の利点や、制度がなかった場合の影響などを正確に伝えることが重要です。たとえば、連邦政府がSNAPに1ドルを投じると、子どもやその家族が食料を得られるだけでなく、地域経済には約1.79ドルの経済効果がもたらされるといいます。
本来、私たちがお互いに助け合うことに理由は必要ありません。社会の弱い立場の人々を支える行為は、最終的には社会全体への大きな利益となり返ってきます。だからこそ、必要な人が支援を確実に受けられるよう、社会保障制度を支える財源を安定的に確保し、拡充していくことが求められます。たとえ受給者が給付金を「ジャンクフード」に使ったとしても、少なくとも飢えをしのげているという事実の方が重要です。生活支援制度は、その国で暮らす、すべての人がより良い未来をつかむための礎です。私たちはその価値を正しく理解し、支え続けていく必要があるのです。

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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