南北間格差とランドラッシュ|国土開発に隠された真実とは?

Credit: Africa Is a Country


想像してみてください。ある日あなたが家でくつろいでいると、見も知らない人が突然家に上がり込み、「今から私たちがこの土地の所有者だ」と何の説明も無しに占拠する状況を。これが今世界で起きている「土地収奪」であり、権力を持つ者が弱者から力ずくで土地を奪う乱暴な行為です。でもこれは遠い世界の話ではありません。かつての植民地時代と同じことが、今まさに起こっているのです。資金力のあるアメリカ、ヨーロッパ諸国、中国、サウジアラビア、ロシアなどの国々が、アフリカ、南アジア、南米で次々と広大な土地を手に入れています。彼らは「気候変動問題」をまるでギリシャ神話の「トロイの木馬」のごとく利用し、表面上は「グリーンエネルギー」や「資源」の提供を確約したように見せかけます。真の目的は自分たちの利益にあり、その土地の人々を苦しめていることにはお構いなしです。これは「グリーングラビング」または「グリーンコロニアリズム」とも呼ばれます。「グリーングラビング」は、環境保護や持続可能な開発を名目にし、実際には地元住民の権利を侵害したり土地を奪取したりする行為のこと。そして「グリーンコロニアリズム」とは、環境保護や気候変動対策を大義名分として、先進国や外部の権力が発展途上国や先住民の土地、資源、文化に対して支配的・搾取的な態度を取ることを指します。これは植民地主義の新しい形態と見なされ、環境問題への対策を弱い国や地域の犠牲のもとに行うことが根本的な問題と考えられます。

グリーングラビングの実例

例えば、西アフリカのナイジェリア南部に位置する広大なデルタ地帯、ニジェール。この場所に、世界最大級の石油・ガス会社の一つである「シェル」は、数十年にわたる石油採掘やパイプラインの破損、石油の流出事故によって深刻な環境汚染をもたらしました。この環境汚染は、地元の漁業や農業にも悪影響を及ぼしており、住民の健康問題も深刻です。しかしその環境汚染に対し何ら復旧作業を行わないまま、無責任にもその地域から撤退しようとしているのです。

未開拓で肥沃な土地が広大に広がるアフリカは、そういった企業や国の格好の標的となります。先進諸国や一部の発展途上国は、アフリカをさも発掘した金鉱のように扱い、そこで何世代にもわたり暮らしてきた様々な地域社会への影響などは一切考慮されません。例えばUAEを拠点とするブルーカーボン社は、ジンバブエやケニアなどの国で、最大20%の森林所有権を取得しています。彼らの主な目的は、その森林保護活動で「炭素クレジット」を取得し、それを売却して上限を超えた排出量と相殺することで、ひいては石油資源の豊富な国がCO2排出を継続的に可能にすることにあります。一部の環境保護活動家たちは、こうした行為が土地を代々管理してきた地元住民の居場所を奪うこと、その土地に関する貴重な知見を持つ人々をその場所から追い出すことに繋がるとの強い懸念を示しています。最近このブルーカーボン社はリベリア政府とも契約を結びましたが、地元の代表らに何の事前相談もせずに行われたため、その強引な手法に疑問が投げかけられています。

ダメージを受ける地域社会

土地の売買は、売り買いする両者の利害関係が等しく公平であるかのように思われがちですが、特にアフリカでは法的に確立された土地所有権がないことから土地の搾取が横行し、環境破壊、食糧不安、地域住民の追い出しなどの要因となっています。IMF(国際通貨基金)や世界銀行のような国際金融機関(International Financial Institution)の動きは実のところ富裕国の意向が色濃く反映され、貧困国の開発や債務救済よりも外国投資による土地取引に誘導されるケースが多発しています。一方、2024年にコロンビアの首都ボゴタで開催される「International Conference on Global Land Grabbing(世界の土地収奪に関する国際会議)」では、コロンビアが長年取り組んできた土地に関する不平等解消への取り組みや、社会から疎外された地域住民に対して土地の権利を確保するなどの対策も議題に取り上げられ、同じような問題を抱える国々にとって希望の光をもたらしています。

公平な解決への努力

その土地と地域住民を不当な搾取から守り、公正な土地分配を実現するために、私たちはコロンビアの事例から学び、透明性の高いコミュニティ主導の交渉を行うべきだと考えます。先住民、女性、長年不利な立場に置かれてきた地元の人々の声を、全ての意思決定において尊重することが大事なのです。そしてグローバルな事業展開を行う企業は、その活動が地域の人々に与える影響をそろそろ慎重に考慮すべき時が来ています。それと同時に、政府は地域社会からの搾取に加担するのではなく、包括的で持続可能な投資を促進する環境を整えることで地域を支援しなくてはいけません。そして公正な利益分配の確保により、地域の弱い立場の人々の土地所有権を保護することが非常に重要です。

最終的には土地の所有は企業に委ねられるのではなく、これまで疎外されてきたその地域社会に帰するのが一番です。地域の人々の要望を最大限に考慮し、公平性と説明責任を政府や企業に強く求めること。それでようやく、人々は抑圧による支配から解放され、エンパワーメントの源となる土地と共に未来へと前進することが出来るでしょう。

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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