インクルーシブデザインが溶け込む、古き良きヨーロッパの街並み

私たちが快適に暮らせるインクルーシブ(包括的)な社会を実現するためには、障がいがある人々のためのアクセシビリティ整備がとても重要です。その点、ヨーロッパの歴史的な建築物はとかく複雑な構造となっており、アクセシビリティの観点から障がい者にとってはハードルが高く、障がいが無い人との差をより強く感じさせてしまいます。公平な社会の実現に向けて前進が見られる昨今ですが、とりわけ歴史的な建築物においては、様々な障害がある人々にとって未だ大きな課題が残ります。今からちょうど10年前の2014年、障がい者のアクセシビリティに関する法定基準を満たしていたのは、当時28か国だったEU加盟国のうちわずか15か国しかありませんでした。このことを問題視した国々も多く、近年では、歴史的に重要な建物や場所に関するアクセシビリティ向上にむけて政策や規制が導入されています。こういった取り組みは各国の法律に加えEUからの指導により更に促進される形となっており、EU加盟国全体として「障がい者の権利を保護し、包括的で平等な社会を推進する」という強い姿勢が示されています。このように法的な整備が進められる一方、依然として大きな課題もあります。

法律と政策で障がい者をサポート

EU基本権憲章第26条「障がい者の統合に関する権利」には、このように記されています。「障がい者は、その独立、自分の居住地の選択、社会的及び職業的統合並びに社会生活への参加を確保するために措置を講じる権利を有する」と。EU加盟諸国には、障がいがある人々が様々なサービスや情報を利用するための政策が、既にいくつか存在します。例えば、欧州アクセシビリティ法(European Accessibility Act、以下EAA)やEU基本権憲章(EU Charter of Fundamental Rights)など。

前者のEAAは、障がい者や高齢者が生活の場で直面する困難を少しでも減らすことを目的に、交通機関や教育システムに容易にアクセスできるよう整備し、労働機会を平等に与えられるように環境を整える役割を担っています。車椅子利用者のためのスロープの設置などは、その一例です。また、障がい者が携われる職種を増やし雇用を拡大したり、彼らの手による商品やサービスの価格を低く設定せず、標準的な価格で販売できるようにするなどのサポートを行っています。

ヨーロッパ各地で進むアクセシビリティ強化

最近では、社会における包括性がいかに重要かという認識がかなり浸透してきました。しかしその認識の上に作られた戦略を、いかに実行に移すかが次のポイントです。その過程では、戦略の練り直しを積み重ねながらの前進となるかもしれません。それでも多くの国が、こういった対策に積極的に取り組み、障がいがある人々も観光地の魅力を十分満喫できるような国にする努力を日々続けています。

オランダ南部にある都市「ブレダ」は、美しい旧市街の街並みやブレダ城、教会などが観光名所として有名です。ここでは、街の古い石畳を車椅子で移動しやすいように整備する中で、古くからの美しさを損なわないような対策も同時に行っています。石畳の石を剥がし、裏返してノミで丁寧に平らにし、見た目はそのままに、車椅子でもスムーズに移動できる表面に仕上げました。また、同じくオランダの「ロッテルダム」では、車椅子利用者やその他の障がいがある人々が、凸凹で通りにくい舗装箇所を報告できるアプリケーションを作成しました。アプリを通じて報告が入ると、その道路は短期間で平らにされ、歩きやすく車椅子でも移動できるよう、早急に工事が行われます。そしてフランスの「リヨン」では、視覚障がい者のために、バス停や横断歩道、様々な公共・民間の建築物に「音声ビーコン」を導入しています。このビーコンは、例えば次に来るバスや行き先などの情報を、視覚情報ではなく音声で伝えてくれるものです。

ブレダー(オランダ)の街並み
Credit:
Ben BenderCC BY 4.0


快適でさらにインクルーシブなヨーロッパへ

このような状況下、EUのアクセシビリティ特別法は各国で機能しているのか、そして今後それをどのように評価していくべきか、といった点はまだ検証および検討が必要です。ほとんどのヨーロッパ諸国が必要な対策を行い、障がいがある人々が世界を自由に旅行できるようになるには、まだ解決しなくてはいけないことがいくつもあります。しかし、ヨーロッパの国や都市が様々な工夫を凝らし、技術を駆使し、可能な限り対応しているという現状には明るい未来が感じられます。たとえばロンドンの地下鉄はアクセシビリティを全面的に向上させており、画期的な乗りやすさと障がい者への配慮が感じられ、そこにも希望を見出すことが出来ます。これからのヨーロッパ諸国に、大きな期待が寄せられます!

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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