皆さんは、南米の女性達が性差別への抗議活動を行う様子を、ニュースなどでご覧になったことはありますか? もしかしたらその光景の中に、「緑のハンカチ」を目にされた方も多いのではないでしょうか。この緑のハンカチは地域のフェミニスト運動のシンボルであり、また女性の権利、とりわけ「リプロダクティブ・ライツ(妊娠、中絶、避妊など生殖に関する個人の権利)」を求める闘いの象徴でもあるのです。
アルゼンチンにおける女性運動の変遷
「ハンカチ」を抵抗や戦いの象徴として用いるのには、アルゼンチンの歴史的な背景があります。1976年から1983年まで続いた独裁政権下で、アルゼンチンでは人権侵害が甚だしく、子供たちを含む多くの人々が拉致され行方不明となりました。この事態に母親たちが首都ブエノスアイレスのマヨ広場で抗議活動を始めることとなり、「マヨ広場の母たち(Las Madres de Plaza de Mayo)」という団体が結成されました。当時母親たちは行方不明になった子供たちを探し出すため、白いハンカチを頭に巻いて抗議活動を行いました。この歴史になぞらえ、現代のフェミニスト運動のシンボルとして「緑のハンカチ」が定着したのです。この運動の支持者たちはこのハンカチを身に着け、自分たちの信念を積極的に表現するようになりました。
緑のハンカチは闘いのシンボル
「パニュエロ・ベルデ(pañuelo verde)」と呼ばれる緑のハンカチがアルゼンチンで見られるようになったのは、2003年のことです。それ以来、リプロダクティブ・ライツ運動だけでなく、性教育の機会や避妊具の普及を求めるといった様々な運動の象徴へと広がっていきました。ハンカチには、「正しい知識と性教育による正しい選択を、中絶しないための避妊を、命を守る安全で合法な中絶を」というスローガンが書かれています。これは南米でリプロダクティブ・ライツを求める人々が掲げる基本理念です。これらを実行するための法案が通らなければ、性教育が不十分なまま危険で非合法な中絶が続き、国民に重大な健康リスクが生じると彼らは主張しています。
活動家たちはこの運動を「グリーン・ウェーブ(Marea Verde、緑の波)」と呼び、その波はメキシコ、チリ、ペルーなど南米全域に広がりました。この「グリーン・ウェーブ」は2020年にアルゼンチンで最大の盛り上がりを見せ、何年にも亘る抗議活動と支援運動を経て、妊娠14週目までの中絶を合法とする法案が遂に可決されるに至りました。
リプロダクティブ・ライツを巡る緑と青の対立
2016年から2020年までの4年間、南米ではフェミニストたちの活動が非常に活発化し、特にアルゼンチンでは若者の間で強い支持を得ました。しかし緑のハンカチが中絶権を求めるシンボルとなる一方、やがて反対運動も目立つようになります。中絶反対を訴える活動家たちは「青のハンカチ」をシンボルとし、「二つの命を救おう」をスローガンに中絶反対運動を展開しました。これがいわゆる「ブルー・ウェーブ(青い波)」です。この活動も若者たちを中心に広まり、緑または青のハンカチを人から見える部分に身につけることで、自らの意見を明確に表明するようになりました。抗議運動時だけでなく日常生活の中で、多くの人々がハンカチをリュックに結びつけたり、首に巻いたり、ブレスレットとして身に着けたりする光景がよく見られたものです。
こうして緑のハンカチは、南米における女性の権利獲得運動の中で、女性たちを団結させるシンボル的存在となりました。今も人々が法改革を求めて声を上げる中、緑のハンカチは改革運動への連帯と勝利の象徴として、これからも存在し続けるでしょう。平等を求めるアクティブな運動は重要ですが、職場など日常的な場を女性やマイノリティにとってより安全でインクルーシブな環境とすることも、大きな変化への一歩となります。弱い立場の人々に耳を傾け、支援的な環境を積極的に作り出すことで、私たちは真の変化に貢献することができるのです。
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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