最近の報道では、ウクライナ戦争やガザでの軍事衝突、さらにはアメリカの大統領選挙後も続く社会の分断など、私たちは日々様々な紛争を目にしています。しかし、これらは世界で起きている対立の一部に過ぎず、全てが平等に報道されているわけではありません。ニュースとして取り上げられることがないまま、今も世界中では多くの紛争が起きています。
増え続ける「難民」と「国内避難民」
通常、「難民」という言葉は「紛争等で自国を強制的に追われ、安全を求め他国に移住する人々」を指します。一方、「紛争、災害、迫害などによりやむを得ず自宅を後にしながらも自国の中にとどまっている人々」は、「国内避難民」と区別して呼ばれます。難民や国内避難民の発生は、それぞれの国の紛争状況、隣国との関係などから大きな影響を受けることとなります。例えば西アフリカにある国、ブルキナファソの国内治安問題は深刻且つ複雑です。この国は2019年から内紛が続いており、これまでに8,400人以上が争いに巻き込まれ命を失いました。現在、ブルキナファソでは過去最多の200万人以上が避難を余儀なくされています。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、ブルキナファソから15万人近くの難民が近隣国へ避難する一方、主に北側に国境を接するマリからは、約4万人の難民を受け入れるという状況になっています。
カリブ海の国、ハイチも国内避難の危機に瀕しています。同国では犯罪組織による暴力行為の増加が原因で、人々は自宅からの避難を余儀なくされています。2024年時点で、国内避難民は58万人以上に膨れ上がっていますが、国連による総額6億7,400万ドルの支援計画は、まだ42%しか資金調達の目途が立っておらず、厳しい状況です。
アフリカ北東部に位置するスーダンの難民は、状況の深刻さをさらに浮き彫りにしています。現在の政治的混乱以前から、スーダンではすでに重大な人道危機が発生しており、1,580万人以上が支援を必要としていました。UNHCRによりますと、2023年初頭から2024年後半にかけて、60万人以上の避難民がスーダンから隣国のチャドへ逃れ、2024年にはさらに50万人以上が南スーダンへと避難しました。
幾重にも苦しめられる難民たち
普段報道されない戦争やその国の人々について、情報をより詳しく収集することは可能です。しかし本当に重要なポイントは、「なぜ私たちはこういった状況に関心を持つべきなのか」という点です。難民であることは、自ら望んだ選択ではありません。生まれてくる環境を選べないのは、私たちも同じです。しかし難民たちは、人種、教育環境や雇用機会などあらゆる側面で差別を受けるという、不公平な現実に直面しています。彼らは逆境に生きることを強いられ、肉体的にも精神的にも、大きな苦痛に耐えながら毎日を生きています。
例えば、20代の母親である難民の証言によると、多くの女性が生活のために売春等の性的搾取を受けているとのことです。中には、チャドへの避難の際に、あろうことか支援側の人物や地元の法的機関から虐待を受けたと話す女性もいます。安全であるべき場所で彼らが得たのは、絶望という追い打ちだったのです。UNHCRのインタビューで、アラブ系の作家であるシャーム・マスクーン氏はこう語っています。「多くの困難を乗り越え、難民がやっと避難先の国に到着する頃には、彼らは心も体も疲弊しきっています。自分の周りで何が起こっているのか理解できず、現地の文化や習慣も分からず、外に出てパンや飲み物を買うことすらできない状況は、さらに彼らを追い詰めます。周囲との繋がりが全くない環境に置かれる孤独感は計り知れません。」
世界中すべての人々に安心と安全を
難民とは単なる統計的な「数」ではなく、それぞれの家族と共に夢や希望を持って生きていた「人たち」です。それが突然、不当に奪われてしまうという現実。アメリカの心理学者、マズローは「5段階の欲求階層理論」を提唱し、「人間の欲求は階層的、段階的に組織されている」ことを示しました。その中で「安全」は、2番目の基本的欲求として挙げられており、それは単なる願望ではなく、権利であると説明しています。したがって、安全な生活環境は追い求めるものではなく、本来、無条件で保障されるべきものなのです。常日頃から、私は周囲や世界の人々を気にかけ、思いを馳せています。このような思いを世界中の人が持つことができたら、今起こっている様々な困難に、いつか光が差す日が来るのではないでしょうか。

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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