肥満に貼られた劣性のレッテル|体型にとらわれない公平性の価値

Credit: RamaGaspar, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons


差別や偏見について考えるとき、多くの人は人種やジェンダー、障がいなどを思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、あまり話題にはならなくても、「体のサイズや体型」もまた深刻な差別の対象となっています。人種と同じように、体型を隠すことは容易ではありません。2022年には、世界人口の8人に1人が肥満と分類されており、その数は今後さらに増加すると予測されています。珍しいことではないにもかかわらず、肥満への嫌悪や差別を意味する「ファットフォビア(Fatphobia)」は、社会に根強く存在しています。

肥満に対し向けられる人々や社会の差別

このファットフォビアから生まれる侮蔑的な行為を、「ファット・シェーミング(Fat Shaming)」と呼びます。太っていたり大柄であることを理由にその人を批判し、公然と嘲笑したりすることを意味します。日常生活において、太っているだけでまじまじと見られたり、からかわれたりするなどのマイクロアグレッションを受けるだけでなく、社会構造に紐づいた差別にも直面します。たとえば、支給される制服のサイズ展開が少なく着られるものがなかったり、座席が小さくて体を収められない、といった問題です。

「標準体型」を基準にした設計

交通機関や公共施設の利用しやすさは、その中でも大きな課題です。標準体型だけを想定した設計では、決してインクルーシブとは言えません。実際、スタジアムや遊園地の乗り物の座席は、多様な体型に対応しきれていません。バスや飛行機も、快適さより収容人数を優先して設計されており、標準体型の人ですら窮屈に感じることがあります。特に航空機では座席が年々狭くなっており、状況はさらに深刻です。通路や座席の狭さから、大柄な乗客には複数席の購入を求める航空会社も増えてきました。しかし、たとえ追加料金を支払っても、その便が満席の場合には購入した席を使えないこともあります。

医療サービスを利用する際に体型に関して嫌な思いをするかのアンケート

医療サービスを利用する際に体型に関して嫌な思いをするかという質問への回答
Credit: House of Commons Committee via UK Parliament


医療過誤を引き起こす肥満への偏見

医療の現場において、ファットフォビアは致命的な結果を招くこともあります。肥満体型の患者に対し、どんな症状が出ていてもまず減量を勧める医師は少なくありません。その結果、本来必要な検査や診断が行われず、誤診や病気の見落としにつながることもあります。減量努力をしていないにも関わらず、急激な体重減少が見られた場合、やせ型や標準体型の患者であればうつ病や深刻な疾患の可能性が疑われ、慎重な経過観察となるのが一般的です。しかし過去には、大幅な体重減少がみられた肥満患者に対し、医師は健康状態の改善と捉え、その背後に潜む深刻な病状が見落とされたケースも報告されています。こうした医療上の判断ミスは、最悪の場合、患者の命に危険を及ぼします。

また、肥満体型は就業機会にも影響します。多くの国では、体型に基づく差別を禁じる法律はほとんど存在しないため、法的な罰則はありません。ある調査によると、大柄な人は採用や昇進の機会が標準体型の人より少なく、同じ能力を持っていても低い給与が提示される傾向があります。さらに、人種やジェンダーのように、採用や昇進において一定の割合での雇用を義務づけるクオータ制や、大規模な社会運動も肥満に関しては存在しないため、格差解消が進みにくいのが現実です。

現在アメリカでは、National Association to Advance Fat Acceptance(全米肥満受容推進協会) や Obesity Action Coalition(肥満行動連合) などのNPO団体が、肥満に対する差別の解消や、医療と社会サービスの格差是正に向けて活動しています。また、Association for Size Diversity and Health (サイズの多様性と健康協会)のように、体重や体型に左右されない医療を推進する団体もあります。しかし、社会全体を変えるためには、私たち一人ひとりの意識改革も不可欠です。自分の中にある無意識に抱く偏見を見直し、すべての人が安心して暮らせる環境をつくっていくことが求められます。大柄な人たちを社会から排除し、尊厳やさまざまな可能性を奪うことは、公平性やインクルージョンそのものを損なう行為です。インクルージョンとは意識の持ち方だけでなく、あらゆる体型を前提にした仕組みやデザインを積極的に取り入れることでもあります。これからの社会は「サイズ」によって線引きされる場であってはならず、誰もが例外なく「居場所がある」と感じられる空間であるべきだと私たちは考えます。

浜辺で、異なる体型の3人の女性が楽しんでいる様子

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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