昨今、世界各地で続く出生率の低下は、人口の年齢構成に深刻な影響を及ぼしつつあります。国連の報告によれば、1人の女性が一生のうちに産む子どもの平均人数を示す「合計特殊出生率」は、2021年の世界平均で2.3人。1950年代の5人からほぼ半減しています。2024年には韓国(0.7人)、日本(1.2人)、アメリカ(1.6人)など、2人を下回る国も増え、いずれも過去最低水準を記録しています。この傾向は世界的に広がっており、そこには生活費の高騰やジェンダー不平等、中絶や育児支援などに関する政策上の制約といった、現代社会が抱える課題が背景にあります。

世界各国の合計特殊出生率
Credit: Korakys, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
子どもを諦めざるを得ない現実
多くの家庭は、子どもを持ちたくても経済的に難しいという現実に直面しています。2000年から2020年の間、アメリカ人の約9割が、収入の伸びを上回る住宅価格の上昇を経験しました。特に女性は、不平等な所得格差に加え、家事育児の負担をほぼ一人で担うことを期待される社会的圧力の中で、子どもを持つことを断念せざるを得ない状況にあります。ジェンダー平等が進めば出生率も回復するのではとの見方もありますが、現実はそう単純ではありません。
政府の政策も出生率に大きく影響しますが、その結果は必ずしも望ましいものとは限りません。アメリカでは、2022年に妊娠中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド判決」が覆され、中絶が規制されたことで、一部の地域では出生率がわずかながら上昇しました。しかし同時に、特に黒人女性の妊娠や出産に関する死亡率が上昇するという、深刻な事態も起きています。中国の「一人っ子政策」は既に廃止されていますが、伝統的に男児を望む価値観とこの政策が重なった結果、男性が女性より約3,000万人多くなるという深刻な人口の偏りを生み出しました。こうした事例は、生殖の権利を制限し人口を強制的にコントロールすることが、社会に長期的な影響を及ぼすことを示しています。各国は今、将来的に深刻な問題へと発展しかねない「人口の時限爆弾」に直面しているのです。
急速な高齢化と社会への影響
多くの国で、急速な高齢化が進んでいます。日本は世界で最も高齢化が進んだ国であり、人口の30%を65歳以上が占めています。一方、韓国ではこのままの傾向が続けば、2070年までに65歳以上の人口が50%に達すると予測されています。高齢者が増える一方で、労働人口となる若年層が減少すると、社会保障を「利用する側」と「支える側」のバランスが崩れ、制度への負担が増大します。年金や医療費の支出が増える一方で納税者が減少すれば、経済成長の鈍化や世界経済の不安定化を招く恐れさえあります。
広がる「子どもを持たない」という選択
出生率の低下は、単に経済的事情だけでなく、子どもを持つことに対する価値観の変化も反映しています。アメリカでは、成人の47%が「子どもを持たない」と答えており、2018年から10ポイント増加しました。日本では、「子どもを持ちたい」が37%、「持ちたくない」が36%とほぼ拮抗。韓国では「持つ予定はない」が39%で、「持ちたい」と答えた31%を上回り、より明確な傾向が見られます。
こうした価値観の変化は、単なる個人の選択にとどまらず、社会全体の課題を映し出しています。冒頭でも触れたように、生活費の高騰やジェンダー不平等、中絶や育児支援に関する政策の制約、そして将来への不安といった社会の根深い問題が、世界的な出生率低下に大きく影響しているのです。人口減少と高齢化が進む中で、経済的、社会的な負担はますます重くなっていきます。この課題に対処するには、家族を支え、平等を促進し、経済的に無理なく安心して子育てができる環境を整えることが必要です。こうした長期的かつ持続可能な取り組みが、今後の社会にとって不可欠です。

ゲストライター E. Takamuraによる寄稿
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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