現代の公共図書館は、本の無料貸し出しはもちろんのこと、中にはCDやDVD、ゲーム、楽譜など趣味にまつわるものを借りられるところも多くあります。また、無線LANやパソコンの利用、教室、屋内集会スペース、語学サポートなど様々なサービスを、無料または低料金で利用できる場所にもなっています。このように、図書館は地域社会にとって貴重で必要な施設です。
禁書運動の急速な拡大
一方大変残念なことに、アメリカでは既に流通している特定の書籍を禁ずる「禁書運動」が拡大しています。図書館員に好意的な有権者は全体の90%、図書館から特定図書を撤去することに71%が反対しているにもかかわらず、この動きが近年加速度的に高まっているのです。禁書運動を支持する人達は図書館を「有害施設」とし、該当する本の貸し出しを禁止または制限することを強く求めています。中には、図書館の閉鎖を声高に叫び、暴力的な脅迫に至ったケースもあります。アメリカの公共図書館は今、その存在そのものが危険にさらされています。
高まる学校図書館への圧力
アメリカでの禁書運動は今に始まったことではありませんが、一昔前は学校や学校図書館が主な規制対象でした。アメリカ図書館協会によりますと、2023年の学校図書館への検閲・図書撤去要求は、なんと4,240冊に上ります。これは2022年の過去最高記録2,571冊から、わずか1年で65%も増加したことになります。主たる対象は思春期、性教育、性関連全般、人種的マイノリティなどのジャンルで、特に人種的・性的マイノリティに関する書籍は、禁書が求められたうちの47%を占めました。
公共図書館も規制対象?
近年では、子供達が通う学校図書館から一般の公共図書館にターゲットが広がり、学校と同じ禁書要求リストが各公共図書館にも突き付けられています。
この一連の運動により、フロリダ州、ユタ州、テキサス州などでは学校図書館に関する州法改定が行われています。例えばフロリダ州では2022年に小学校3年生までを対象として「LGBT教育を禁ずる」法律が制定され、2023年には対象が一気に高校生まで引き上げられた結果、関連書籍が学校図書館から姿を消しました。現時点での対象はまだ学校図書館のみですが、今後公共図書館に適用されないとも限りません。社会的に禁書反対の意見が猛烈に高まるか、逆に全面的に彼らが勝利するか。いずれかに行きつくまで、この流れが止むことはないでしょう。
しかしもしこのような禁書運動に歯止めを掛けられなかったら、図書館は今後どうなってしまうのでしょうか。地域住民が被る不利益が甚大となることは想像に難くありませんが、単にサービスを利用できなくなるだけでは済みません。運動が激化し、図書館員に対して直接的な攻撃が加えられる可能性もあります。現にいくつかの州では、図書館サービスの提供を違法とする動きが見られはじめました。禁書を支持する保守的な議員達が制定した法律ができることで、その「不適切図書」を置いた図書館員が罪に問われることも将来的に考えられます。ある地域では、実際に図書館職員が個人攻撃や脅迫を受ける事案も発生しています。図書館員としての仕事をしただけで、なぜそのような迫害を受けなければならないのでしょうか。
禁書運動家達に誠意と対話の姿勢があったなら、おそらく話し合いで解決することもできるでしょう。しかし、彼らの考えや態度は非常に頑なです。そもそもこの運動は「多様性に反対」し、自分達と異なる人々を罰し排除しよういう考えに基づいているためです。自由の国アメリカ全土で、公共図書館が危険にさらされている現実がここにあります。それは同時に、他国への今後の影響をも意味します。アメリカに端を発した社会問題が、他国に飛び火するのはよくあること。もしかしたらあなたの国も、その日が近いかもかもしれません。自由に本を選び読む権利、表現の自由、知性主義。これらに異を唱える社会思想がアメリカで蔓延し、国外に波及する事態にまさに今、世界が直面しています。だからこそ私たちは、誰もが直視すべき深刻な問題だと考えます。
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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