現代の社会において、障がいがある労働者が仕事でキャリアを築き成功することは、一般的に少々ハードルが高いと考えられています。それは周囲の無理解や障がいへの偏見などが原因ですが、もちろんこのような労働者も問題なく仕事ができるよう、多くの国には制度面でのサポートがあります。例えば、アメリカの「障がいがあるアメリカ人法」。これは、障がいを理由に仕事を奪われたり解雇されたりすることから人々を守るために1990年に制定された法律です。更に「チケット・トゥー・プログラム」と呼ばれるアメリカ連邦政府の復職プログラム(キャリア・カウンセリング、職業リハビリテーション、職業紹介、職業訓練などのサービス)や「14(c)証明書(障がい者特別最低賃金証明書)」など、州ごとの制度が整備されています。
雇用統計と制度とのギャップ
それにも関わらず、アメリカの障がい者雇用率は22.5%にとどまっています。2023年には、障がいがある労働者の約3分の1が、職場での差別経験があるとの報告もあります。更には、基準よりも低い賃金で労働提供しているケースもあります。様々な保護制度があるのなら、なぜ一向に障がい者の雇用や処遇が改善されないのでしょうか。

その理由として、実は多くの企業が、障がい者を雇用するよりも制度への違反罰金を支払う方を選択していることが考えられます。その方が会社にとって相対的に利益だという発想です。では制度自体はどうかというと、残念ながらこれもあまり期待できません。先述の「14(c)証明書」(1938年にアメリカ合衆国において制定された連邦法律に含まれる)は、障がいがある労働者に最低賃金以下の給料を支払うことを企業側に認めています。時給4.15ドル。これは「14(c)証明書」などを保持する企業が、障がいがある人々へ支払っている「平均時給」です。更に3.50ドルを切ることさえあります。こういった現状を考えれば、米国における障がい者労働者の給与が一般賃金より約42%も低い理由がよく分かります。結果的に、障がいがある労働者の多くは今でも高収入の仕事を得ることが非常に難しく、一般労働者よりも賃金が低くなっています。
偏見と誤解を乗り越える
最近では身体的な障がいだけでなく、ADHDのような発達障がいの労働者にも偏見がつきまといます。ADHDの人は怠け者だ、生産性に欠ける、知的障がいがある人に普通の仕事は無理だ、など様々です。しかし実際には、障がい者を雇用することが企業にとっての強みとなるケースが多いのです。2023年にアクセンチュアが発表したレポートによりますと、障がい者雇用を率先して行った企業では売上による収益が改善され、結果的に利益が平均2倍になったという報告もあります。また、障がいがある労働者は、障がいが無い労働者よりも生産性が25%も高く、会社にとって忠実な社員であることもこのレポートに書かれています。
障がいがある労働者を企業が雇いたがらないもう一つの理由として、受け入れ準備に多額の費用がかかるという先入観もあるのではないでしょうか。例えばハイブリッドワークスケジュール(テレワークとオフィスワークの組み合わせ)の調整に始まり、オフィス設備の追加購入まで、その懸念は様々です。しかしながら、その年間平均コストは約3,750ドル、そのうち50%は1度きりの購入(1件約300ドル程度)で済むものです。もちろん一時的な費用は発生しますが、このような設備や全体の調整は、障がいがある労働者だけでなく、経営側にも利点があります。実際、ハイブリッドワークの導入で働き方の幅を広げ、企業側もより多くの人材をプールしたりビジネスチャンスを広げる良いきっかけにもなります。障がい者雇用を促進し多様な職場文化を創り上げることによって、企業側も生産性を高め、利益を最大化することが可能となるのです。
真のインクルージョン(包括性)への道
コロナによるパンデミック以降、最初は試験導入であったハイブリッドワークも生産性に問題が無いことが明らかになりました。このように全体としては良い前進も見られますが、まだまだ多くの企業は課題を抱えたままです。でも近い将来、制度違反の罰金などを払うより、障がいがある社員と共に社内の多様性、包括性を高める方に投資する方が何倍も価値があると気づく日が、いずれ来るかもしれません。
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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