揺れるアメリカ社会|人々はLGBT+を受け入れたのか?

現在、アメリカの娯楽コンテンツや広告は世界中に配信され、多くの人々が日常的にアメリカの文化に触れています。そこからは「アメリカ社会はLGBT+の存在を当然のように受け入れている」というイメージを誰もが抱き、そう信じていることでしょう。ところが、実態は異なります。

アメリカは広大な国土に加え多種多様な地域文化が存在するため、LGBT+への理解は実のところ様々で、受容度にも場所によってかなりの差があります。住んでいる場所によって、彼らが自分たちをオープンにしても安全に暮らせるか?という重要な状況が全く違うわけです。ドラマや映画のように、LGBT+を一つの個性と認識し、祝福し、歓迎している地域も確かにあります。ところが一方で、LGBT+への反発や拒否感が強く、暴力や殺害の脅迫を受けるような地域も存在します。これまで「普通」と考えられていたシスジェンダー(体と心の性が一致している人)やヘテロセクシュアル(恋愛対象が異性である人)という定義から外れる人々が「安全に暮らせない地域」は、むしろ国土の大部分を占めているのが現実です。

時代の変化と法律的なマイルストーン

地域による格差が大きいとはいえ、アメリカのLGBT+の人々を取り巻く環境はここ数十年で大きく改善されてきました。そのことは、2015年に連邦最高裁判所が下した「オバーゲフェル対ホッジス判決」にとてもよく表れています。この判決で、同性婚は合衆国憲法修正第14条によって保護される権利である、つまり「同性婚は合法である」と判断されたのです。この修正条項は、米国政府が特定のグループや集団にのみ適用される法律を制定すること、権利を拡大したりすることを禁じています。アメリカのすべての人々は皆が平等で、公平な扱いを受けなければならない。従って、異性間の結婚が合法であれば、同性間の結婚もまた同様に合法とみなす、というわけです。

LGBT+を取り巻く受容の変動

こうして、同性愛者の存在を受け入れる社会的な度合いは上下しつつも、全体としては上昇傾向にあると見られます。ギャラップ社の世論調査によりますと、オバーゲフェル判決の1カ月前にあたる2015年5月には、63%のアメリカ人が「ゲイやレズビアンの関係は道徳的に容認できる」と考えていました。その後この数字は上昇し、2022年に71%まで達しましたが、翌2023年には再び64%まで減少。こういった数値の変動は、アメリカの政治派閥の極端な二極化の結果であり、賛成派と反対派がそれぞれの主義思想を一層強めることで、社会がまさに揺れ動いている状況だと考えられています。

トランスジェンダー容認への課題

先述のオバーゲフェル判決により同性婚はアメリカで合法化されましたが、法律できちんと保護されるには至っていません。州法や連邦法は依然として結婚を「男女間のもの」と定義しているため、一部の政府関係者民間企業などの間でも、同性カップルに対する偏見や差別が存在します。同性婚は、婚姻尊重法が成立する2022年までうやむやな状態にあり、様々な解釈がなされました。が、この婚姻尊重法により、最終的に結婚は「2人の個人間のもの」と再定義され、「性別、人種、民族、国籍」を理由に結婚権を否定することは禁止と、初めて明言されたのです。

アメリカでは、様々なマイノリティの性的指向についての理解が進んではいますが、トランスジェンダーに関してはむしろ受容度は低いままです。2021年に行われたギャラップ社の世論調査によりますと、アメリカ人の46%が道徳的な観点からも性別変更を容認していましたが、2023年には43%まで減少しています。実際に過去10年には、自分の性別とは違うトイレを使用することや、トランスジェンダーの子どもや大人に医療を提供することを違法とするような法案が相次ぎました。またフロリダ州では、トランスジェンダーの子どもの親権を、ジェンダーの選択を認める両親から州に移すという試みまでありました。1969年ニューヨーク、LGBT+の拠点となっていたゲイバーに警察が踏み込み捜査を行い、それに抵抗した人々が暴動を起こしたストーンウォール事件。この事件以来、アメリカはジェンダーとセクシュアル・マイノリティへの理解、受容への長い道のりを歩み、今日に至りました。やっとここまで来たのですから、すべてのLGBT+とその支援者たちは、この55年間に達成してきた進歩を妨げる勢力に常に目を見張り、これからもひるまず抵抗し続けることが大変重要です。

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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