差別と迷信を超えて|アフリカで障がいがある子を育てる現実

ジンバブエでは今でも、障がいを持って生まれた子どもは不吉であるとか、神に下された罰だなどと言われることがよくあります。ジンバブエの主な宗教はキリスト教ですが、身体的・精神的な障害に関する迷信も数多く存在します。統合失調症などの精神疾患が、悪霊に取り憑かれたことが原因だと見なされることもあります。また、障がいがある子どもを産んだ女性は、ジンバブエの文化的な背景から差別を受けることが多く、出産前に母親やその家族が魔術を行ったせいだとまで言う人もいます。

不便な生活環境に耐えながら

2021年のこと、私はある4人の姉妹に出会いました。彼女たちは、それぞれが脳性麻痺の子どもを出産し、育てていました。住まいは、首都ハラレの中心部から数キロ離れたところにあるエプワース。小さく狭い家々がひしめき合う地域のため、車椅子の利用には困難が伴うエリアです。路上には尖った石や釘、ガラスの破片などが常に散らばり、とても脳性麻痺の子供たちが安全に移動できるような環境ではありません。

子どもたちの病状は成長するにつれて悪化し、当時17歳だった最年長の子は特に深刻な状態でした。これは、リハビリテーション療法や専用装具、筋肉の痙攣を緩和する薬などの適切な治療を、幼少期に受けられなかったことが関係しています。この子たちから目を離すわけにはいかないため、母親たちは中々働きにも出られず、この子たち自身も教育や仕事といった社会への道が開かれずにいます。

コロナ禍以前ですら、エプワースの平均世帯収入は月々わずか185USドル程度でした。生活必需品の購入に最低でも500USドルが必要とされる現代において、どれだけ生活が苦しいかは想像に難くありません。母親たちは、日々の食事や世話に使えるお金がわずか50USドルしかない月もあると言っていました。そしてこの4姉妹の夫たちは家にも寄り付かず、子どもの障害は妻に責任があるとして、一切の支援を行っていませんでした。

差別的な偏見で傷つけられる子どもたち

障がいに対するこのような偏見や迷信により、エプワースのような地域社会においては、障がいがある人々が一人の人間として扱われないといったことが多々あります。この4姉妹の近隣住民たちも同様で、脳性麻痺についての正しい知識や理解が足りないために様々な誤解を抱き、助けが必要なこの家族は逆に周囲から孤立してしまっています。近隣住民たちは自分の子に何か良からぬ影響があることを恐れ、障がいがある子たちと遊ぶことを子供たちに禁じているのです。このように、周囲が正しい知識を持たず一方的な偏見を抱き続けることで、障がいがある子どもたちは身体的な危害や言葉でのいじめなど、差別の対象となりやすい現実があります。

一方、問題は山積しているものの、ジンバブエは他のアフリカ連合(African Union)加盟国とともに前進し始めています。具体的には、「African Disability Protocol(アフリカ障がい者プロトコル)」の策定を通じて障がい者の権利を守り、彼らに対する認識を変えるための取り組みを着々と進めていることが挙げられます。この「African Disability Protocol」とは、2018年にアフリカ連合によって採択された、アフリカの障がい者に関する権利を保護・促進するための地域的な対策です。そして2023年に、ユニセフは障がい者を含む育児プログラムを農村部・都市部の両方で立ち上げ、障がいに対する偏見や誤解を解消すると共に親や介護協力者への教育を進めています。

他者との普遍的な絆がもたらす明るい希望

アフリカの哲学用語で「ウブントゥ」、ジンバブエで使われるショナ語では「フンフ」という言葉があります。いずれも「人間性、人間らしさ、相互依存」などを意味し、更には「私たちは他者との関係によって成り立っている」という考え方を表します。単に他者に親切にするだけでなく、他者の人間性を認め、尊重することを大切にする普遍的な絆です。先述の4姉妹の長女はこの精神を実際に体現したような人で、自分の子どもたちの存在や障がいを負担だと考えることなく、また他の子たちと何か違うとも思っていません。彼女は子どもたちの笑い声を聞くのが大好きで、子どもたちが泣けば一緒に悲しくも寂しくもなります。彼女は、自分が強く健康でいられるからこそ子どもたちの面倒をみられること、そして同じような境遇にある妹たちを支えることができることを幸せだと言い、そのことに感謝しているのです。

インクルーシブな社会を育むためには、社会が「ウブントゥ」の精神を持ち、障がいがある人々にもその信念で接することが重要です。そうすれば、障がいの有無に関係なく、すべての人々にとってより公平で公正な生活が約束されるに違いありません。

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


DEIに関連する実際のビジネスケースを学び、DEI戦略を活用することで、あなたの組織・チームをより強化する可能性を探ってみませんか。詳しくはこちらをご覧ください

Top Posts This Week


Learning Cycle Editorial Team

世界各国のスタッフライターから、旬なDE&I関連ニュースやトピックスをお届けします!

私たちは、社会や職場におけるダイバーシティの促進に日々全力を注いでいます。DE&Iの浸透に向けて、グローバルの色々な意見に触れてみてください。(更新日は毎週火曜日、木曜日を予定しています。) まだ一般的には数少ない、「DEIイベント・セミナー」も毎月ご紹介しています。こちらも是非お勧めです!

日本語と併せ、オリジナルの英語バージョンもお読みください。尚、時差と公開タイミングの関係から該当ページが表示されない場合があります。


Categories


In Association With

聴くテレ朝「ホンマのホンネ」(株式会社テレビ朝日)
サストモ(LINEヤフー株式会社)
「Pride Action30」特設サイト(パナソニック コネクト株式会社)