コロナの猛威がピークだった頃、医療従事者たちの常軌を逸した働き方が問題視されたことを覚えている方も多いでしょう。それ以来、ビジネス界における「バーンアウト(燃え尽き症候群)」は今でも注目のトピックとなっています。従業員がバーンアウトになると、心身ともに重大な影響が及び、企業にとっては全く持って軽視できない問題となります。ある調査では、バーンアウトを経験した男性は36%だったのに対し女性は44%と、より高い割合が出ています。女性は男性より、仕事のストレスを強く感じる状況にあるのです。
過剰なストレスにさらされる女性たち
ではなぜ女性は男性よりストレスを抱え、バーンアウトに陥る人が多いのでしょうか。2024年に実施されたDeloitte社の「Women @ Work」調査によると、身体の不調、仕事と育児・介護などとの両立、快適な労働環境でないことなど、様々な要因が浮かび上がりました。USA Today紙でも、サム・ハンモック氏が同様の論説記事を書いています。彼女はその記事の中で、「女性は仕事以外の社会的責任が多過ぎて、自分自身に目を向ける時間がほとんどない。とにかく全てが過剰な状態なのです。」と語っています。
こうした問題が中々解決されないこともあり、女性たちは段々と職場から去り始めています。働く女性の16%が既に退職という選択を行い、彼女たちはその主な理由に、十分な報酬とサポートが得られなかったこと、仕事と私生活を両立することの難しさ、そして職場でのハラスメントやマイクロアグレッションの増加などを挙げています。マイクロアグレッションとは、女性を含むマイノリティーや社会的に不利な立場にある人々に対し無意識に行われる、差別または否定的な言動のこと。その言動は、小さく、また繰り返し執拗に行われることもポイントです。女性たちは、ちょっとしたメモを取る、コーヒーを淹れるなど、自身の仕事に直接関係ない雑用を任されることも未だに多いのです。このように、従業員の精神的状態を軽視し何も対策を取らないでいると、当然ながら離職率が上がります。それにより、アメリカ全体の企業で1兆ドルもの追加コストが発生する可能性もあり、コストだけでなく優秀な人材を企業がみすみす失うことにも繋がってしまいます。
倫理的規範を変えるにはまず戦略から
それでは、女性社員のバーンアウトや不要な退職を未然に防ぐために、企業側は何ができるのでしょうか?先述のサム・ハンモック氏の記事では、女性がバーンアウトに打ち勝つために必要な職場の条件として、チャイルドケアサービスやフレックス勤務の促進、そして有給休暇の消化といったものが挙げられています。実際、女性の68%がチャイルドケアサービスを重要と考えていますが、チャイルドケアを提供する企業で働いていると答えた女性は、わずか21%に留まっています。このようなサービスが十分に行きわたらない状況は以前から続いており、これは「男性は外で働き、女性は家で介護や家事を担う」という、一昔前の既成概念が多分に影響していると見られます。現在では労働力の半分は女性であり、働き方や従業員のニーズが以前とは大きく変化していることを、企業側はしっかり考慮する必要があります。
支援と協力の相乗効果
「What Women Really Want At Work」は、GallupやCenter for Creative Leadershipなどの研究機関が行った調査・報告をまとめたものですが、それによると女性は、単に報酬の改善やサポートを求めているわけではありません。彼女たちは、リーダーシップやマネジメントの問題にも言及しており、これらは企業の方針や報酬・サポートの仕組みを変えるだけでは解決できない問題です。企業のリーダーシップの問題や企業文化を変えるのは容易ではありませんが、肝心なのは「男性のリーダーが女性側に寄り添い、女性と一緒にこのバーンアウト問題に取り組むこと」です。アメリカ心理学会は、企業側が従業員に対して定期的にコミュニケーションを図り、バーンアウトの可能性や過剰な負担を抱えさせていないかチェックすることを推奨しています。ストレスの少ない職場環境を整備するということは、女性だけでなく、全ての従業員、そして企業に、長期的な利益をもたらすことになるのです。
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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