Credit: Company Information Session, Dick Thomas Johnson, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
日本企業においては、ジェンダーや人種の多様性がまだ十分に浸透しているとは言い難いのが現状です。未だに女性の取締役は全体の6.2%と他の先進国に比べ明らかに低く、また労働人口の97.5%は日本人が占め、外国人はわずか2.5%です。その背景には、終身雇用や年功序列といった日本特有の企業文化が今なお根強く残っており、その結果、組織内の同質性が高く、多様な視点を取り入れにくい状況が続いていることが考えられます。こうした従来の企業文化は効率的な会社経営に貢献する一方で、グローバル競争が激化する昨今の状況では、イノベーションを阻害する要因にもなっています。
企業内の同質性が長く続くと、それが原因で「自己強化的なサイクル」が生まれます。つまり、多様性が欠如することで新しい視点が入りにくくなり、結果としてその同質的な文化が維持され続けるということです。チームメンバーの思考や方向性が似通っている場合、自分たちの主張を裏付ける情報のみを重視する「確証バイアス」や、集団の中で反対意見が言いにくくなり独創的な観点を失う「グループ・シンク(集団浅慮)」を助長してしまいます。そのうち企業内で多様な視点や批判的な意見はほとんど出なくなり、大きな判断ミスにも繋がりかねない危険な状態となります。
代わり映えしないリーダーシップの果てに
この典型的なケースとして、東芝で起きた会計不正事件が挙げられます。東芝では、リーダー層は皆似たような考えの社員が多く、そのような多様性の欠如とトップダウンの管理体制により、透明性や倫理性よりも同調に重きが置かれてきました。そして2008年からの数年間、東芝の経営陣は約12億ドルの利益の水増しに手を染めることとなります。この事件には、社内コンセンサスが常に最優先され、異議を唱えるなどもってのほかという暗黙のルールが背景にありました。社員にとって、企業戦略に異議を唱えたり、不正行為を報告しにくい空気が社内にあったのです。
偏見と倫理基準の低下
三菱電機の品質管理に絡む不正も、同質的な企業文化に起因しています。三菱電機では数十年にわたり、国内工場の約70%が変圧器などの製品の品質管理データを偽造し、規制に準拠しているように改ざんするなどの不正を行っていました。社員たちは長年にわたりその事実を知りながら、問題を提起したり基準に疑問を呈することを恐れ、声を上げられずにいました。やがてこの問題は公表されるに至り、当然ながら三菱電機の評判は大きく損なわれることとなりました。
東芝や三菱電機が多様性を受け入れ、少数派の意見を尊重できるインクルーシブな文化を築けていたなら、同調バイアスに陥ることなく、強い倫理基準のもと、このような不正が起こることはなかったでしょう。
多様な人々を受け入れる重要性
筆者自身、以前こういった同質的な文化を持つ日本企業で働いていた経験があります。そこで、経歴や考え方の似たメンバーのみで構成されたチームが、一定の思考パターンに陥る状況によく遭遇しました。企業内の同質性により、「内輪の基準」が全ての評価に当てはめられ、社会的な常識から逸脱することも多々ありました。それにも増して問題だったのは、多くのケースにおいて、内部にいる社員たちがその逸脱自体に気付かなかったことです。東芝や三菱電機の不正事件にも見られるように、認識の甘さが常態化し、組織の自己修正能力が働かないことで、企業価値を損なうほどの重大な問題につながることもあるのです。
この状況を根本から変えるためには、たとえ社風に合わなくても、「異なる価値観を持つ人々」を積極的に採用し、その意見に真摯に耳を傾けることが重要です。歴史のある古い組織では中々難しいことですが、とにかく異なる感覚や考えを受け入れ、尊重することが第一歩となります。終身雇用や年功序列といった古い日本の企業文化は、社内の安定や忠誠心を育むという利点もありますが、フレッシュで多様な視点を持つメンバーを意識的に受け入れることが今は重要なのです。そういった人を組織に迎えることで、同調圧力の危険性がバランスよくコントロールされ、成功へと近づくことができるでしょう。

Credit: 呉, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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