新卒の学生にとって、就職活動は大きな不安や恐怖を感じさせるものです。就職活動は、自分の能力を試すチャンスでもありますが、この期間に経験する様々な出来事により精神的にかなりのダメージを負うこともあります。フレッシュな視点や、新しい知識・情報を持つ若者は、企業にとって魅力的な求人対象と考える人も多いかもしれません。しかし、就職活動を行う学生たち、特に外国人留学生にとっては、そう単純ではない現実があります。
期待と現実とのギャップに潜む罠
皆さんは、「clickbait(クリックベイト)」という言葉を聞いたことがありますか?これは、ネット上で人々の関心を引きクリックさせる虚偽・誇大広告のことを指しますが、内容は詐欺的なものがほとんどです。そして企業の求人にも、釣り広告に近い手段が横行しています。よく見かける「エントリーレベルOK(初心者歓迎)」という文言がそれにあたります。こういった求人はたとえ「経験不要」と記載されていても、実際には経験者であることを求めるケースが多々あります。このように、求人広告に記載されない要件が存在することで、新卒学生が応募資格をクリアできないだけでなく、企業の多様化が遅れ、ジェンダーバイアスにまで繋がるとも言われています。
BBC(イギリス国営放送局)の報告によりますと、求人関連プラットフォーム「LinkedIn」に2017年末以降に掲載された「エントリーレベル」求人は、約400万件にも上ります。しかしそのうち35%の求人は、数年程度の実務経験が必要だったということです。特にソフトウェアやIT業界による「エントリーレベル」求人のうち60%以上が、実に3年以上の経験を必要としていました。企業はもはや、社会人になったばかりの学生には、エントリーレベルのポジションは適さないと考えているようです。

エントリーレベルの求人で実務経験を求められる可能性が高い職種トップ10
Credit: Jobs most likely to require experience, CC BY-SA 4.0, via StandOut CV
期待は高まる一方、給与は実質頭打ち
このように求人広告と実際の採用条件との間にかなりの差異があるため、実際に企業が使う「エントリーレベル」という言葉の意味が、一般的な意味合いとは違うことがわかってきました。現在では、「ある程度の職務経験があるため研修は不要、それでいて業界の既存の人々の立場を脅かすほどのスキルはまだない人材」を指すようになっています。この定義により、企業は手厚い研修の実施義務を負わずに済む一方、募集要項の条件を上回るような優秀な人材であっても、エントリーレベル並みの低い給与水準に留められるということになるわけです。
留学生や低所得者に不利な状況が続く
ここで疑問なのが、「エントリーレベルの仕事内容は本当にエントリーレベルなのか?」ということです。企業側は無給のインターンシップも職務経験に含めて良いと言いますが、無給であるが故に、低所得者層は参加できない実情があります。このためインターンシップは、「経験を積むためなら無給でも構わない」という学生向けの機会となってしまい、低所得者層はその経験すら出来ません。また、多くの留学生は、言語や文化の壁、さらには財政的・法的な制約により、在学中に職務経験を積む機会が限られています。学生ビザでの就労は労働時間に制限がある場合が多く、長期では働けない留学生を採用対象外とする企業も少なくありません。
では、企業は新卒学生に対する求人要件をどのようにすべきなのでしょうか?まず、必須ではないスキルや実務経験に関する要件を削除することが考えられます。これにより、より広範囲で多くの人材の中から採用が可能になります。また、職務に不要と思われる条件をなくし、性別や年齢で不利になりがちな人々でも応募できるようにすること。募集要項において多様な応募者を公平に扱うことは、インクルーシブな社会の構築にも役立ちます。企業側が「裏の条件」を撤廃し、求人情報を透明化することで、応募者は自分に合った職種を選びやすくなります。学生たちにとって就職活動はただでさえハードな経験ですので、求人広告の文言に偽りがあることなど、本来あってはなりません。採用担当者は、応募資格の制限をなくし求人を透明化することで、今まで着目すらしなかったような優秀な人材に出会い、その可能性に嬉しい驚きを体験することでしょう。
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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