ワーホリは現実逃避ではない|異国で磨くキャリアと多様性

短期間の旅行ではなく、実際にその国で暮らし、働く。

そんな憧れを抱いた経験がある人は少なくないはずです。そうした夢を持つ人々にとって、ワーキングホリデーは最良の選択肢かもしれません。とは言え、ワーキングホリデーに対して否定的なイメージを持つ人もいます。アジアの一部の国々では、「若者が異国で遊ぶための手段」「キャリアにブランクができてしまう」「現実逃避」といった声も聞かれます。

でも、本当にそうでしょうか?この経験は、人生の大きな転機になり得る可能性を秘めているのです。

50年の歴史を持つ国際交流プログラム

ワーキングホリデー制度が最初に導入されたのは、1970年代のこと。当時は、主に18〜30歳の若者を対象とした、協定国間の人的交流の促進が目的でした。導入当初の参加国は比較的少数でしたが、現在では世界約60の国と地域にまで拡大しています。

参加者には12ヶ月間の滞在ビザが付与され、飲食、観光業や農業など、慢性的な人手不足に悩む業種での就労が中心となります。 専門的なスキルを要する職種は現地の人が優先されるケースが多いため、未経験でも就ける短期的な仕事が大半を占めます 。ワーキングホリデーの渡航先として特に人気の高いオーストラリアでは、2023〜2024年のわずか1年間で、約19万4,000件ものワーキングホリデービザが発給されました。この数字は、20万人近い世界中の若者たちが、ワーキングホリデーに大きな魅力を感じ、可能性を見出している証でもあるでしょう。 

2024年 オーストラリアのワーキングホリデービザ発給数(国籍別)

オーストラリアのワーキングホリデービザ国籍別発給数(2024年)
Data via Australian Government, Department of Home Affairs


海外で働き、学び、成長する

ワーキングホリデーにあまり興味がない人にとって、その価値は中々理解しにくく、批判的になるのも無理はありません。しかし、この制度は単なる休暇でも、キャリアを中断するものでもありません。グローバルな視点を育む学びの機会であり、多様性の素晴らしさを実感した人たちの存在は、よりインクルーシブな社会の実現を力強く後押しします。その他にも、異文化コミュニケーションスキルや語学力、自立心、困難を乗り越えるレジリエンス、変化への適応力、そして主体的な意思決定能力。こうした力を育むことは、個人としての成長とキャリア形成に、確実につながっていきます。

私の義理の姉も、ワーキングホリデーがもたらす成長を体感した一人です。日系アメリカ人である彼女は、以前から「日本という環境を離れて、自分はどこまでできるのか挑戦したい」という強い思いを持っていました。その夢を実現する最適な手段が、まさにワーキングホリデーでした。約6年間にわたり、東京にあるイギリスの大手電機メーカーでデジタルマーケティングの仕事を担当したのち、キャリアを一時休止してオーストラリアへと旅立ちました。

シドニーとケアンズでの1年半、セールスマネージャー、観光ガイド、ウェイター、農業など多岐にわたる仕事を経験する中で、さまざまな業界の理解を深めるとともに、自分自身についても多くを学んだといいます。日本ではワーキングホリデーを「お遊び」的に捉える傾向が根強い中、帰国後の彼女はアメリカの有名アパレルブランドでマネージャーポジションを掴み、キャリアの大きな飛躍へとつながりました。

VUCA時代に必要なのは、多様な視点

慣れ親しんだ居心地の良い環境、いわゆるコンフォートゾーンから飛び出す経験が人生を変えるきっかけにもなることに、私たちはもっと目を向けてもよいのではないでしょうか。現在、グローバル化が加速する現代のビジネス環境において、世界的な視野に基づいた知識とスキルを身につけることは、自らの価値と競争力を高めるための必須条件となっています。

こうした背景から、若者にワーキングホリデーをはじめとする国際的なプログラムへの参加を積極的に奨励する動きが、韓国など一部の国々で広がっています。そして、このような機会を最大限に活かすためには、企業はもちろん、社会全体として、幅広い世代のグローバル人材の成長を支援していく必要があります。 

世界がどこへ向かうかは誰にも予測できません。だからこそ、多様な視点と知見を積極的に取り入れる姿勢が、これからの時代を切り拓く力になるのです。

ワーキングホリデー中に日本の野菜農家で働く若い女性

ゲストライター R. Oguraによる寄稿

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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