Credit: Tony Webster, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
10月12日。アメリカでは、1492年にコロンブスが「新大陸」を発見したことを祝う記念日です。この出来事は、ヨーロッパ諸国による大陸開拓の始まりを意味する一方で、先住民の人々にとっては青天の霹靂のような混乱、強制労働、新種の疫病や多くの死の始まりを意味します。元々、この日はヨーロッパによる「発見」を称える祝日とされていましたが、最近では多くの南米諸国でその意味が見直され、「コロンブスの偉業を祝う日」ではなく「先住民の抵抗や文化的多様性を讃える日」へと徐々に変化してきています。実際、北米では「コロンブス・デー」や「先住民の日」とされる一方、南米のペルーでは「Day of the Native Peoples and Intercultural Dialogue(先住民と異文化間対話の日)」、アルゼンチンでは「Cultural Diversity Day(文化的多様性の日)」として制定されています。

クリストファー・コロンブス、1492年8月に群衆に囲まれながら船に乗り込む姿
対立する歴史認識
今年も南米各国の指導者たちが、この記念日に対する対照的な見解を表明しました。アルゼンチンの大統領ハビエル・ミレイは、この日を「進歩と文明の新しい時代の幕開け」として祝福しました。一方で、メキシコの新大統領クラウディア・シェインバウムは、こうした考えに真っ向からの異議を唱え、「ヨーロッパ人が文明をもたらすために来た」という考え方は誤りだと主張。「この地にはすでに偉大な文化が存在していた」と強調しました。このような見解の違いは、南北アメリカ各国政府の左派・右派間の対立を象徴しています。

メキシコ新大統領:クラウディア・シェインバウム
Credit: Eneas De Troya, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
植民地時代の過ちと謝罪問題
こうしたシェインバウム大統領の発言は、メキシコとスペイン王室の間で長年続く「植民地時代」に関連した対立の一部でもあります。メキシコの歴代指導者たちはスペインに対し、植民地時代の殺戮行為について正式な謝罪を求めてきました。しかし、スペイン側はスペイン帝国の過去の行為については責任を負わないと主張し、反発しています。この論争は2019年に、メキシコの前大統領アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)が、書簡でスペイン政府とローマ教皇庁に対し先住民への謝罪を求めたことで再燃しました。これに対しスペイン側は、「スペイン人が500年も前に現在のメキシコ領土に上陸し行ったことに関して、現代の基準で判断されるべきではない」と述べ、共有文化遺産のより高い重要性について強調しました。

フェリペ6世(スペイン国王)
Credit: Junta Informa, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
多様な視点を映し出す10月12日
メキシコ初の女性大統領であるシェインバウムは、スペイン国王フェリペ6世を自身の就任式典に招待しないことで、自身の主張や反発の立場を明確に示しました。これに対しスペイン外務省は「非常に遺憾で受け入れ難い」と批判し、国王の代わりに公式代表も派遣しない方針を明らかにしました。それでもシェインバウム政権は、スペインに対し歴史認識の受け入れと補償を求め続けています。
「10月12日」が南米各国で様々な名称と目的で祝福される中、この日の意味をめぐる対立は、地域全体に存在する議論を明確に反映しています。その中でも、シェインバウムやミレイのような主張は非常に対極的です。シェインバウムは植民地以前の文明を讃え、植民地時代の遺産からも目をそらさずに向き合うべきだと主張する一方で、ミレイは植民地化を近代化には必要な一歩だったと捉えています。考え方が正反対となるこの主張は、10月12日はヨーロッパ人の上陸を記念すべきなのか、先住民の勇敢な抵抗を称えるべきなのか、それともその両方を祝うべきなのか?といった問題を南米各国に投げかけています。少なくともメキシコ現政権にとっては、この日は歴史的な不平等を意味する植民地時代の象徴であり続け、今後もスペインに対し補償と歴史認識を求める声が止むことはないでしょう。
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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