企業が抱える偏りの構造|学歴で勝る女性がなぜ経営層に不在か

職場における男女格差は、今も世界中に存在しています。実際、労働力人口のうち男性の就業率は72%であるのに対し女性は50%未満と大きな開きがあり、この格差は特に経営層において見られます。ニューヨークに拠点を置く大手金融サービス企業、S&Pグローバルの最近の調査によれば、上級管理職のうち女性の割合はわずか25.1%、取締役会における割合も24.9%にとどまっています。カナダでは、トロント証券取引所(TSX)上場企業の取締役会では女性の割合が29.8%とやや高いものの、男女同数にはほど遠いのは明らかです。ダイバーシティの重要性が認識される中、女性管理職の割合は着実に向上していますが、格差解消には更なる取り組みが必要です。今こそ、抜本的な行動を取るべき時が来ています。

女性リーダーの登用がもたらす経営力向上

取締役会に占める女性の割合について問う前に、なぜそれが重要なのかを理解する必要があります。実は取締役会のメンバーが男女ほぼ同数である企業は、経営状態が良好であることが分かっています。例えば、イギリスの株式市場における代表的な企業「FTSE350」を対象とした調査では、取締役会メンバーのうち女性が25%以上を占める企業の利益率は、女性役員が全くいない企業に比べて10倍も高いことがわかりました。グループシンク(集団浅慮)や同調バイアスは、周囲への過度な同調や異なる意見への抑圧により、間違った意思決定の要因にもなります。DEIの促進はこれらの影響を抑え、企業をより良い方向に導くものです。組織のトップが多様なメンバー構成であれば、複雑な課題への対処がより有効となり、顧客のニーズや関心に的を絞った手を打つことができます。

また取締役会での女性比率が高まることで、取締役という役職は女性にも手が届くというメッセージにもなり、次世代リーダー層にとってDEI推進の面でも良い刺激となります。そもそも女性がそのような役職に挑戦する機会がなければ、企業側は女性たちの能力に気づくはずもありません。例えばアメリカにおいて、大学や大学院を卒業し取得できる様々な学位の取得率は男性より女性の方が多く、その差は徐々に開きつつあります。優秀な女性たちにリーダー職の機会を与えないことは、企業や社会にとって大きな損失なのです。

米国女性の男性を上回る学士号取得率を示すここ数十年のグラフ
Credit: U.S. women have outpaced men in bachelor’s degree completion for decades, Pew Research Center, Washington, D.C. (November 15, 2024)

国によるクォータ制導入で増える女性取締役

男女格差を解消し、そのメリットを最大限に活用するには、女性が男性と同様の条件下で働くための直接的な対応が必要です。カナダの「Women Get On Board」などの組織は、女性リーダーを目指す人々にメンターシップや財務スキルを磨く研修、ビジネスの輪を広げる方法を提供するといった支援を行っています。カナダとイギリスでは「コンプライ・オア・エクスプレイン」というコーポレートガバナンスに基づき企業運営が行われていますが、これは企業が「男女格差を改善するか、もし改善しない場合はその理由を説明する義務を負う」というものです。他の国々では、取締役会における女性の割合についてガイドラインが示され、法律的に義務を課しているところもあります。日本では東京証券取引所のプライム市場上場企業に対して、2025年までに女性取締役を最低1名配置し、更に2030年までに女性取締役比率30%達成を義務付けました。ヨーロッパではデンマーク、フランス、イタリア、ノルウェー、スペイン、フィンランドなどが、公開企業の取締役会に40%以上の女性比率達成を求めています。

取締役会からのトップダウンで男女格差解消へ

アメリカの著名なビジネス誌、ハーバード・ビジネス・レビューによると、女性リーダーは意思決定の際、共感を示し周囲の協力を得ながら物事を進めることに優れ、これが企業の業績や改革に大いに貢献しているとのことです。私自身、自社の取締役会のサポート業務を行う中で、このことを実感した経験があります。女性リーダーのこういった特性は、取締役会において活発な議論とそこから生まれる相互作用、そして取締役同士の関係改善をもたらし、より効果的な社内ガバナンスを実現します。ある企業の取締役会で、新任の女性取締役が中々発言できずにいるということがありました。それを見た女性の議長がこの取締役に意見を促したところ、彼女の発言は大変優れた内容だったそうです。もし議長がその場で発言の機会を作らなければ、その貴重な意見に光があたることもなかったのです。

企業の女性取締役比率を高めることは、男女格差の解消だけでなく、売上や利益の改善にも直結します。しかしそれを実現するには、揺るぎない努力もまた不可欠です。もし皆さんの会社が、男女格差問題解決への目標を設定していなければ、まさに今が着手すべき時です。取締役会から始めるトップダウンのこの取り組みは、DEI促進への素晴らしい出発点となるでしょう。

ゲストライター K. Maseliによる寄稿

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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