Credit: Andrew Smith, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
もし、近所の家が火事になり助けを求められたとしたら、あなたはどうしますか?たとえその人が数軒先のよく知らない人であっても、助けようと思うのではないでしょうか。難民の人道的危機の問題はこの例え話ほどシンプルではありませんが、難民に対する誤解もあり、世界の関心度は余り高くありません。
数千万人が故郷を追われる時代
2024年、世界の難民の数は約10年前の3倍以上にもなる4300万人。全人類のうち、67人に1人が難民という計算になります。戦争や気候変動、様々な人権問題により住む場所を強制的に奪われる人は、今後も増加することが予想されます。難民と移民は背景や経緯も全く違うものですが、北米やヨーロッパで高まる移民への人種差別的・異文化嫌悪的な感情から、難民の権利もが侵害される事態となっています。
ある研究によると、EUの一部地域では、難民の中でも白人やキリスト教徒、高学歴、若年層、女性などが比較的歓迎される傾向にあることがわかっています。文化や宗教が受け入れ側の国と共通しており、人種や外見も似ていることが、その背景にあります。また、即戦力となる高学歴でスキルを持つ人材や、弱い立場にある女性や子供も優先されやすいとのことです。難民が世界からどのように見られ、避難先の国からどのような対応を受けるか。そこには上記のような難民の特性により扱いが大きく変わる、明らかなダブルスタンダードが存在しています。
難民の出身地により変わる対応
メディア報道の仕方もまた、難民に対する世論を大きく左右します。国連国際移住機関(UN IOM)が発表した報告によれば、2015年にヨーロッパに流入したイスラム系難民と、2022年のウクライナ難民に関するニュースでは、それぞれの報道表現に大きな違いが見られました(※ 1 )。シリア難民が避難先の国に到着した際、世界のニュースもローカル報道番組も、「危機」「侵略」といった言葉を多用し、さも彼らが暴力や犯罪を避難先の国で起こすかのようなイメージを植え付ける結果となってしまいました。一方、「被害者」という立場で報じられたウクライナ難民に対しては、多くの人々が極めて同情的な反応を示しました。

世界で強制避難を余儀なくされた難民の数(百万人単位) Data from the UN Refugee Agency via UNHCR.org
何らかの事情で自国からの避難を余儀なくされ、外国に亡命を求めることは、国際法の基本的な権利です。そのため、受け入れ国は原則的に難民や亡命希望者を完全に拒むことはできません。しかし表立って拒否が出来ない代わりに、国によっては入国自体のハードルを上げる策に打って出るところもあります。たとえばアフリカからの難民は、木製の漁船や小さないかだで地中海を横断し亡命するという危険な方法を取りますが、これは比較的安全で距離的には短い陸路が、国境管理の強化により封鎖されているためなのです。危険だと分かっていてもそれ以外の選択肢はなく、これまでに子どもを含む数千という人々が命を落としました。たとえ生きて他国に辿り着いても、国境で拘束されたり、その後別の国へ移送されることがほとんどです。また運良く安全な場所にたどり着いても、受け入れ手続きに気が遠くなるほどの長い時間が掛かることもあります。さらに、難民キャンプには生活に必要な最低限の設備さえ整っておらず、そこでの暮らしは非常に過酷なものです。

Credit: Alisdare Hickson, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
自国以外には無関心な先進国の姿勢
とは言え、西側諸国側に難民受け入れの体制が整っていないわけではありません。しかし体制以前により大切なのは、「自分たちとは異なる存在」、すなわち、見た目も食文化も信仰も自分たちと異なる人々を受け入れるという、心の準備や覚悟です。同時に、避難先の国で許可された労働により難民は納税を行い、またその国の高齢化社会においては貴重な労働力となるなど、受け入れ国の経済にむしろ良い影響をもたらす存在であることも正しく認識する必要があります。難民問題は明らかに世界的な人道危機であるため、それぞれの国が単独で対応するのではなく、各国が協力体制のもとに対策を講じることが重要です。
難民たちは、自ら進んで故郷を捨てるわけではありません。生きるためにすべてを捨てる、それは想像を遥かに超える決断であり、命を懸けた闘いです。過酷な状況にある彼ら難民に必要なのはさらなる試練ではなく、差し伸べられる温かい手なのです。

(※ 1 )メディア報道が難民への世論形成に果たす役割:比較分析 by Katherine McCann, Megan Sienkiewicz, Monette Zard from Columbia University, published under CC BY-NC-ND 3.0 IGO via International Organization for Migration
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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