何かを購入する際、最近では実店舗に加え、オンラインショップを利用する人も多いのではないでしょうか。実店舗であれば、顧客にとって少しでも使いやすいと感じてもらえる工夫を、店側が思いつきやすいものです。日本でも「アクセシビリティ」という言葉が「使いやすさ」を意味する場面で使われるようになりましたが、車椅子利用者のためのスロープやエレベーターがあるか、視覚障がい者のために点字や大きな文字が使用されているかなどはその一例です。一方オンラインショップのアクセシビリティを考えることは、実店舗と比べて難しい面もあります。それでも、顧客の使い勝手を一番に考え、知識や技術を駆使し、様々な改善を試みることはできます。デジタルアクセシビリティの向上は、障がいのある人々だけでなく、高齢者や外国の利用者にも大変親切で有効な対策です。
デジタルアクセシビリティの国際基準
ウェブ技術の標準化を推進するための国際的な団体「World Wide Web Consortium(W3C)」は、デジタルアクセシビリティのガイドラインを作成しています。ウェブサイトを誰でも使いやすいものにするためは、以下の基本原則を満たす必要があるとしています。
- キーボードだけでも簡単に操作可能であること
- ユーザーが視覚・聴覚・触覚などを通じて知覚可能であること(画像の代替テキストが提供され、視覚障がいのある人がスクリーンリーダーで内容を理解できる)
- 平易な文章で書かれ、容易に理解できる内容であること
- 新しい技術に対応できる設計であること
アクセシビリティを設計段階から最優先に考えることは、誰もが快適に使えるウェブサイトに欠かせない条件です。ウェブサイトのデザインは上記の通り知覚可能であることが重要ですが、この場合の「知覚可能」とは、「利用者が知覚できる形で情報が提示されている状態」を指します。そのため、サイト上に表示する色、フォントの種類やサイズを工夫して読みやすくすることも大きなポイントです。アクセシビリティを重視した色を選択すれば、色覚異常のあるユーザーでも無理なくそのウェブサイトを読むことができるようになります。また読み書きに困難がある学習障がい「ディスクレシア」のユーザーには、14ポイント以上の「Sans Seriff font」が推奨されています。ディスクレシアの人々は、文字の順番を入れ替えて読んでしまったり視覚に障がいのある場合が多いのですが、「Sans Seriff font」は文字間の詰まりが少なく、他のフォントと比べて読みやすいためです。
ウェブサイトによる体調不良と使いやすさへの最大の配慮
視覚デザインへの配慮は、読みやすさだけでなく、視覚からの予期せぬ不調をユーザー側に与えないためでもあります。例えば、一見「明るいトーンで良い印象のデザイン」のウェブサイトでも、光に対して過度に敏感な光過敏症の人々には深刻な影響を与える場合があります。以前、編み物愛好家のオンラインコミュニティ「Ravelry」がサイトをリニューアルした際、同社の新しいサイトを閲覧したユーザーから片頭痛やてんかん発作などの体調不良を訴える声が多数寄せられたことがありました。そういった様々な症状は、同社のサイトに使用されていた色や動画が引き金になったと考えられています。

様々なタイプの色覚異常 Credit: Johannes Ahlmann, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
ウェブサイト作成時には、ユーザーにとって明確で分かりやすく、誰でも迷うことなく操作できるかを十分検証することが大切です。ニューヨーク大学の「アクセシビリティ・チェックリスト」によりますと、ハイパーリンクが付けられた箇所の言葉には曖昧なものを避け、具体的にするようにとあります。それにより、リンク先でどのような情報が得られるかが分かり、視覚障がい等でスクリーンリーダーを使用するユーザーがより快適にウェブサイトを利用することができるためです。さらに、キーボードやスイッチデバイスなど複数の入力方法が使用可能であれば、視覚や身体に障がいのある人々にとってより使いやすいウェブサイトとなります。
そして最後に、ウェブサイト上の画像やグラフ、見出し全てに代替テキストを組み込むことで、視覚障がいのある人でも使いやすくする工夫を忘れてはいけません。見出しの中には、文字を画像として表示しているためスクリーンリーダーで読み込めないものもあります。スクリーンリーダーは、その画像やグラフの内容を音声で説明してくれるものですが、代替テキストの設定が絶対的に必要です。SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)ソフトウェアを扱うMoz社によれば、障害のあるユーザーが経験したアクセシビリティ問題の61%は、代替テキストの不備に起因しているそうです。上記のような見出しに代替テキストを組み込むことで、ユーザーは必要な箇所に素早く移動できるようになり、より快適な利用となるはずです。

買いやすいオンラインショップと売上の相関関係
潜在顧客を拡大し、様々な統計データを取るためにも、上述のようなアクセシビリティ強化は大変有効です。ウェブサイトの構想段階からこれらを意識し設計に反映させることで、検索結果が上位に表示され、アクセス数が増加します。その好循環がさらにSEOを向上させ、市場における様々な顧客へのリーチを広げることに繋がってくるのです。Moz社によりますと、障がいのある消費者の約83%が「使いやすいオンラインショップ」を選ぶ傾向にあり、商品の価格よりも買いやすさを優先させるといいます。つまり、アクセシビリティの強化が利益に直結するということです。SEOの改善やZ世代の関心の高まりを背景に、すべてのユーザーや消費者にとって使いやすいサイトを提供することは、市場における大きな競争優位性を生み出す重要な要素となるのです。
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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