日本の企業は、概して数値目標の達成を重視し、それを最重要とする傾向があります。昨今話題になることが多い「男性の育児休暇」に関しても、例外ではありません。日本では2025年4月より、男性の育休取得率などの数値目標設定が法律で義務化され、さらに従業員300人超の企業に対し一律に「男性の育休取得率等の公表」が義務づけられます。現在、男性の育休取得率が50%を越える上場企業は約6割、1年前の前回調査との比較では20%も上昇しています。しかし、この数字に実態が全て反映されているというわけではありません。たった1日でも育休を取ると、統計上では取得したとしてカウントされてしまうためです。これでは、育休の取得率は高いものの、男性が家庭で十分な時間を育児に費やしているとは言い切れません。育休の目的に立ち返れば、男性がこの休暇中に実際の家事や育児に主体的に携わることにこそ意味があるのは明らかです。まずはその必要性を男性社員たち自身が正しく理解し、自ら家事や育児が出来るようになろうとする姿勢が強く求められます。
先日、当社ラーニングサイクルは都内で企業の人事やDEI担当者を対象とした招待制DEIイベントを開催しました。本イベントでは、都内テレビ局で育休推進を担当する細川大輔氏を迎えて、同社における男性の育児休暇の現状について学び、活発なディスカッションを行いました。細川氏は現在、自身が1年半の育休を取得した経験を活かし、同社育休制度の推進に精力的に携わっています。その実体験に基づいた取り組みは社内でも高く評価され、父親である男性社員にとって素晴らしいロールモデルとなっています。
男性育休は家族を大切に思う気持ちから
「仕事をしていれば、会社に対し失望するような経験が誰しもあるでしょう。しかし、家族や子どもは決してあなたを裏切りません。そのような大切な存在である家族のために、是非この機会を活かし、育休を取ってください。」と、細川氏は言います。
また同氏は、「男性の育休取得はとても重要なことである」という意識をより多くの男性が持ち、家庭内の様々な家事や育児をもっと男性自ら主体的に行うべきだと考えています。そのために細川氏が勧めるのは、最低でも6か月間の育休取得です。6か月あれば、家庭での仕事の大変さを実感できるだけでなく、男性も一人で育児をこなせるようになるからです。細川氏はまた、こう続けます。

「皆さんの会社に、簡単な仕事も満足に出来ず、いつまでも指示待ちで1人では何もできない新入社員がいたらどうでしょう。きっと周囲の誰もが『中々成長しない困った社員が入ってきた』と危機感を覚え、追加指導など何かしらの手を打とうとするのではないでしょうか。しかし、家庭における家事や育児の場面では、男性がこの新入社員と同様一人で何もできなくても、『男性だから仕方ない』といってなぜか許されてしまうことが多いのです。」
育休取得推進より前に必要な意識改革
細川氏が社内で育休取得推進を行う中で、まだまだ育休に消極的な男性社員がいることがわかりました。そのため、彼は父親となった男性社員たちと個別で面談を行い、利用可能な社内制度や選択肢にはどのようなものがあるかなどを、一つ一つ丁寧に説明するようにしています。経験者である同氏が具体的なアドバイスを行うことで、不安を抱く男性社員たちが育休期間を最大限に活用し、収入面の不安を解消できるようにしています。このような手厚いフォローもあり、同社には男性社員たちが安心して育休を取得できるような環境が整っています。
細川氏によるプレゼンテーション終了後、会場では参加者によるグループディスカッションが行われました。その中には、男性の育休制度は導入されているものの社内で十分に根付いておらず、とにかく社員たちに「育休取得は良いこと」と理解してもらうのが喫緊の課題という声もありました。
また、男性社員の育休取得は順調に進んでいるものの、他の社員が育休中の社員の業務を抱え、負担となる現状に悩む声も聞かれました。参加者が個々に課題を抱える中、細川氏の男性育休推進の取り組みと分かりやすいプレゼンテーションに、参加者からは多くの賛同の声が上がっていました。一般的に、企業のDEI推進活動は女性の人事担当者が主導するケースが多いため、男性のロールモデルが育休推進の先頭に立つことには非常に説得力があり、大変納得度の高いものでした。

「ワンオペ育児」ができる父親の重要性
イベントの第2部では、私たちラーニングサイクルから、国内外の男性育休の状況についての調査データを共有しました。今後、育休取得率と平均取得期間は徐々に増加すると見られますが、企業側は各社員がいつ、どのように育休を使っているかに注意を払うことが必要です。育休は通常の有休とは全く異なり、その目的を達成できなければ意味がありません。
日本の大手住宅メーカー、積水ハウスの調査によりますと、育休を有効活用出来ず、男性が家事や育児にしっかり参加できていない「取るだけ育休」が依然として多いことが明らかになりました。実質的に有意義な育休を実現するためには、企業が男性社員に対して「妻と家事や育児を分担し、積極的に取り組む意識」を強化する必要があることが分かります。
(Slides from Learning Cycle’s presentation)
「男性の意識を変え、家事や育児分担を見直す」ことは、家庭内での公平な関係を築く基本となります。性別による従来の役割分担ではなく、それぞれの家族の中で最もバランスの取れた偏りのない分担が重要なのです。細川氏からは、「男性が仕事で出世し、現在そのポジションにいる現状は、妻がキャリアを犠牲にした結果成り立っているものである」との言及もありました。家庭内での家事や育児を夫婦で分担することで、まず男性は家族を支えるために何が必要かを実体験から直接理解できるようになります。またこうした視点を持つことから、職場で働く母親たち、そして父親たちに対してよりインクルーシブで温かく受け入れる姿勢と、彼らをサポートする意識が社内に芽生えます。
今後、より多くの男性が育休を適切に活用するようになれば、職場全体でモデルケースも増え、上長の理解も進み、男性の育休が更に一般的になることが期待されます。今回のDEIイベントに携わった、当社に出向中の社員も、これまでの意識が大きく変わったと話しています。まだ彼自身に子供はいませんが、従来の男性基準の視点を超え、妻との生活において「公平性」を常に強く意識し、行動に移しているそうです。
育休によってワンオペ育児ができる男性が増えること。それは、育休が夫婦の家事分担にとどまらず、子どもたちにも大きな影響を与える素晴らしい選択であることを社会に広めるきっかけとなります。両親が家事や育児を協力して行う姿を見て育った子どもたちは、公平性や多様性を自然に身につけた大人へと成長していきます。そのような子どもたちが、やがて社会のジェンダーバイアスを乗り越え、DEIをさらに推進する中心的な存在となっていきます。子どもたちの未来のためにも、今こそ男性が考えを変え、自ら家事も育児も主体的に行うことが強く求められるのです。

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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