ヘイトスピーチ容認のSNS|Metaの「後退」に世界が懸念

Credit: Tony Webster, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons


Facebook、InstagramなどのSNSを展開するアメリカの大手IT企業、Meta社。そのCEOであるマーク・ザッカーバーグは2025年の年初に、Meta社のSNSサービスにおける大幅な変更を発表しました。特に驚きをもって受け止められたのは、ヘイトスピーチに関する方針転換です。例えば、自らを人種差別主義者だと公言する、他人の容姿を侮辱する、男性は女性より優れているなどと発言すること。また、従来の性別認識とは異なる性的指向や性自認を行う人々を、精神疾患などと非難すること。これまで禁止されていたこのような発言への制限が、こともあろうか撤廃されてしまったのです。さらに、性別に関する言葉の使用ルールも緩和されました。これまでは「性別を限定した排他的な表現は禁止」とされていましたが、支援グループに限っては「例外」でした。例えば「授乳中の母親向けの支援グループ」は参加者が必然的に女性に限定されるため、「授乳中の親:parent」という表現の他に「授乳中の母親:mother」という性別限定の言葉を例外として使うことができたのです。ところが今回の改定では、トランスジェンダーの人々は身体的性別のトイレを使うべきだ、彼らが教職や軍隊、警察の職務などに就くのは問題がある、といった議論も許容される状況となりました。つまり、これまでとは逆に、性別を限定した表現や議論への制限が緩和されたことで、MetaのSNS上では「トランスジェンダーの人々を排除するような議論」が増える可能性が高いということです。ザッカーバーグは、今回の変更はトランプ氏勝利に終わったアメリカ大統領選挙の結果を受けたものであることを認め、「テレビや議会で発言できることが、私たちのSNSで発言できないのは不適切だ」と改定の理由を説明しました。

急速に後戻りするMeta

人権団体ヒューマン・ライツ・キャンペーン(HRC)の指摘にあるように、かつてMeta社のプラットフォームは同性婚の合法化運動に貢献する形で使われ、一般ユーザーから政治家まで幅広い層が議論に参加していました。しかし現在HRCは、Meta社の方針転換がLGBTQ+、特にトランスジェンダーの人々にとって大変危険なものであると警鐘を鳴らしています。

ザッカーバーグは、X(旧Twitter)の「コミュニティノート」のようなシステムを導入する方針も示しており、まるでイーロン・マスクの手法を踏襲するかのようです。このシステムでは、ユーザーが互いの投稿に対してファクトチェックを行い、補足情報を加えて指摘する「ノート」を残すことができます。しかし、このシステムが本当に差別発言を減らすことができるかは懐疑的です。実際、2022年のマスクによる買収後に状況は急速に悪化し、Xでは黒人に対する差別的発言が3倍に増え、また反ユダヤ的な発言は67%も増加しています。

MetaのCEOマーク・ザッカーバーグ

Credit: JD Lasica, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

以前からの差別の温床Facebook

Meta社はこれまでも、社会的に弱い立場の人々に対するハラスメント問題を抱えていました。2020年の調査では、オンライン上の嫌がらせが原因で、SNSから距離を置く女性が増えてきたことが明らかになりました。同調査では、約60%の女性たちがSNS上でいじめや嫌がらせを経験したと回答しています。中でも最も多くのハラスメントが報告されたのは、FacebookとInstagramでした。Facebookは反トランスジェンダー的なコンテンツを長年容認してきた背景があり、「DailyWire」や「LifeSiteNews」といった右派系ニュースメディアの投稿に、Facebook上で「いいね」を押したり誰かに共有するなどのリアクションがとても多いことは事実です。実際、ユーザーからのリアクションが多い投稿の65.7%は反トランスジェンダー関連であったのに対し、「PinkNews」といったトランスジェンダー支持のLGBTQ+系メディアの投稿はわずか15.4%に留まったことからも、現状がうかがえます。

女性やLGBTQ+の人々は、オンライン上でハラスメントを受けないよう、チャットルームなどは敢えて利用しない傾向が強くなっています。Meta社がこれまで女性やトランスジェンダーの人々へのハラスメント対策を十分に行えていない現状を考えれば、今後も有効な手段が取られる見込みは低いと考えた方が良いでしょう。Meta社の今回の方針転換に対し抗議の声が上がる中、同社の顧問弁護士であったマーク・レムリー氏はこの新しい方針には賛同できないとして、自らMeta社との顧問契約を打ち切りました。

新たなSNSサービスに高まる期待

最近は、新たなSNSサービスがリリースされることがあまりありませんが、より良いものを求める声はますます高まっています。Xへの対抗ツールとして2019年に登場した「Bluesky」は、当初はさほど注目が集まることはありませんでした。しかし、マスクがXのブロック機能の変更を発表し、プライバシーや安全性に不安を持つ利用者が増えた結果、安全性が高いBlueskyのユーザー数が急増することとなったのです。Blueskyの新規利用登録者数は、当時最大で「1秒間に12人」という爆発的な伸びを見せました。現在、Meta社の方針に不満を持つユーザーが増加する中、Blueskyの開発者たちはInstagramの代替プラットフォーム「Flashes」の開発を発表しました。Meta社が弱い立場にあるユーザーを守らなければ、どうなるか。この「Flashes」の発表は、他の企業がその地位を奪うこともできるという、Meta社に対する強いメッセージとも言えるでしょう。

スマホのホーム画面上に写るInstagramのプロフィールページ

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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