子どもの人権を奪う親たち|子の自律と親の保護責任のはざまで

「人はいつから人権を持てるのか。」 このテーマは、人々の間でしばしば議論になります。中絶をめぐっては、胎児の生命を尊重する立場のプロライフ(Pro-life)と、女性の自己決定権を重視し中絶を否定しないプロチョイス(Pro-choice)の間で、胎児の権利が大きく取り上げられてきました。しかし、実はそれと同じくらい重要なのが「子どもの権利」です。

子どもの権利と現実とのギャップ

1989年、ユニセフは「子どもの権利条約」を制定し、世界中のほぼすべての国がこれを批准しました。この条約によって、子どもはそれまでの「守られるだけの対象」から「権利を持つ主体」へと、その位置づけが見直されました。しかし、理想とは裏腹に、現実には公共の場でも家庭の中でも、子どもの権利は日常的に侵害されています。特に、人種や使用言語などによる偏見や経済格差が存在する場所では、その傾向が一層顕著です。

国連「子どもの権利条約」の旗

Credit: Paolo Mazzoleni, CC BY 2.0, via Flickr


自律と保護のはざまで

人間の脳は20代半ばから後半にかけて成熟するといわれています。そのため、「道徳上の人格」と「法的な人格」の間には隔たりが生じます。道徳的には、子ども自身の人生の選択には、本人の意見や気持ちが尊重されるべきです。しかし法的には、子どもは未熟であり、自らの意思で判断を下すのは危険だと考えられます。ここに、「自律」と「保護」の間のジレンマが生まれるのです。子どもに自己決定権を認めることは、親による保護の権利とどの程度ぶつかるものなのでしょうか。また、子どもの選択が自身を傷つける可能性がある場合、親はその意思を尊重すべきか、あるいは反してでもそれを阻止し、保護するべきなのでしょうか。

各国における結婚の最低合法年齢を示している世界地図

世界における女性の法定婚姻年齢
Credit: ComradeHirohito, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons


結論として、親には子どもの健康と安全を守る確固たる義務があると考えられています。しかし、すべての親がその責任を果たしているわけではありません。現在も多くの子どもたちが、親が自覚しているか否かに関わらず、実の親からの被害を受けています。一例として、児童婚はいまだに世界各地で認められており、これまでに6億5000万人もの少女が18歳未満で結婚を強いられてきました。児童婚は女性の教育を受ける権利を妨げ、心身や性的被害のリスクを高めます。また、子どもが自らの身体について決定する権利もまた制限されがちです。ある地域では、LGBTQ+の子どもに対するホルモン療法や性別適合手術などのジェンダー医療が犯罪とされる場合があります。さらに、医学的に不要な上に本人の同意無しの女性性器切除、割礼や性別適合手術などが、世界的な批判を浴びながら今も続いています。

児童婚の国別件数を示したグラフ。南アジアが44%を占める。

南アジアが44%を占める児童婚の地域別割合
Data via UNICEF


文化によって異なる子供の役割

忘れてはならないのは、文化によって子どもの役割や義務の捉え方が大きく異なるという点です。いつまでが子どもで、いつから大人として扱われるのかも、社会によって定義が異なります。ある地域では「児童労働」とされる行為が、別の地域では「家族を助ける当然の役割」とされることもあります。その結果、国や地域ごとの背景によって、教育という子どもたちの基本的人権が奪われることもあります。実際、2023年には学校に通っていない子どもは世界で2億5000万人にのぼりました。特に貧困地域では、子どもたちは学校に通う代わりに家計を支え、家事を担うことが求められるのです。

子どもは親の所有物ではありません。彼らはひとりの人間として尊重されるべき存在です。もちろん保護の必要性はありますが、自分の人生に関する考えや意見は尊重されなければなりません。

子どもには、安全が保障され、尊厳を保ちながら、豊かに生きる権利があります。そして私たち大人は、その権利を守る大きな責任を負っているのです。

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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