私たちの身近な食べ物が命を危険にさらす、食物アレルギー。近年この深刻な問題は、世界中で認識されるようになりました。アメリカで食物アレルギー研究を支援する非営利団体、End Allergies Together によると、現在、世界中でおよそ2億2,000万人が何らかの食物アレルギーに悩まされているといいます。アレルギーを引き起こす食べ物は「食物アレルゲン」と呼ばれ、その種類はおよそ160にのぼります。特に多いのは卵、魚、牛乳、ピーナッツ、甲殻類、大豆、ナッツ類、小麦の8種類。さらに、世界アレルギー学会誌(The World Allergy Organization Journal)の報告では、世界中で数分に1人が食物アレルギーによるアナフィラキシーで入院を余儀なくされているとのことです。死亡率自体は年間5,000万人に1人と極めて低いものの、人々の安全な暮らしのために、社会全体での配慮が求められています。
国や地域によって異なるアレルギー事情
現在、66か国では加工食品にアレルゲン表示が義務付けられています。しかし、アメリカのFDA(米国食品医薬品局)が定める表示義務は、先ほどあげた主要8大アレルゲンのみ。さらに、小麦粉を使った粘土のおもちゃや化粧品のように、食品以外の商品には表示の義務がありません。また、食文化や食習慣の違いによって、発症しやすい食物アレルギーは変わります。そのため、どの食物が大きなリスクとなるかは国や地域によって異なるのです。たとえば、日本では「そばアレルギー」の人が比較的多い一方で、アメリカではほとんど見られません。このような状況から、海外旅行や輸入食品を口にする際には細心の注意が必要です。世界共通でのアレルゲン表示ガイドラインが存在しない現在、食物アレルギーを持つ人にとって、何が安全な食べ物かを見極めるのは容易ではありません。
食事への恐怖と隣り合わせの人たち
アメリカでは現在、レストランにも食品成分表示が義務付けられていますが、対象範囲はたんぱく質や脂質、カロリーなどの一般栄養素で、主要アレルゲンについては任意となっています。今のところ、レストランにもアレルゲン表示を義務としているのはカリフォルニア州のみ。食物アレルギーを持つ人にしてみれば、外食の十分なアレルゲン情報が得られないことで、料理のソースや添え物に対しても常に不安がつきまとい、食事を心から楽しむことができません。死亡リスクは低いといっても、食は生活の質につながる大きな要素であり、常に不安や問題を抱えながらの食事は心身ともに大きな負担となります。とくに珍しいアレルギーを持つ人にとっては、楽しいはずのレストランでの食事やイベント参加が、時として命懸けになることさえあります。
食物アレルギーへの対策を進めるには、政府や企業、個人も含めた社会全体の取り組みが不可欠です。世界共通のアレルゲン表示基準が設けられれば、日常生活や旅行先でのリスクを大幅に減らすことができます。
また、レストランのスタッフが料理に使われている全ての食材を正確に把握し、注文を受ける際にアレルギーの有無を客に確認することで、安心感を高めることができます。こうした積み重ねにより、食事中の不安を最小限にし、食べることを心から楽しむ環境は実現できるのです。

食物アレルギーの有無を事前に確認すべきだと考える人の割合
Credit: The New Food Fights: U.S. Public Divides Over Food Science, Pew Research Center, Washington, D.C. (December 1, 2016)
個人イベントでも可能な食物アレルギーへの配慮
そしてまた、各自が食事を持ち寄り楽しむホームパーティーなどでも、食物アレルギーへの配慮は十分に可能です。事前に参加者にアレルギーの有無を確認し、そのうえで提供する料理に材料を明記するだけでも、参加者の安心と安全につながります。食物アレルギーという、当事者以外は無関心になりがちな事情にも細やかに配慮し他者を思いやることで、より信頼と安心に満ちた、インクルーシブな人間関係を築くことができるはずです。

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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