成績重視と人物評価に割れる大学入試|ヨーロッパ教育環境の公平性

大学進学を決めてから入試に至るまで、学生たちは不安と期待が入り混じる時期を迎えます。特に出願の際には、それまで自分が何をやってきたか、どんな将来を思い描いているのかをいかに上手く表現するかが問われ、名門大学に入るためにはライバルたちとの熾烈な戦いに勝ち抜かなくてはなりません。イギリスでは、大学入試に「ホリスティック・アプローチ(総合的評価)」と呼ばれる方式を導入しており、試験だけでなく、志望理由書や教師からの推薦文などによって学生を多面的に評価します。これは、成績だけでは測れない個性や経験、成長の過程を、学生が大学側に伝える絶好の機会となります。

入試以外も考慮されるイギリスの大学

イギリスの大学では、コンテクスチュアル・オファーと呼ばれる、「学生の事情を考慮した合格基準」が設けられる場合があります。これは、学生が通っていた学校の教育環境、地域ごとの格差、家庭の経済状況など、成績に影響を及ぼす可能性のある要因について配慮を行う制度です。数値だけで学力を判断せず、学生一人ひとりの潜在能力を引き出すことを目的としており、より公平な入学機会を提供しようとしています。

とはいえ、高等教育における公平性は合否だけでは判断できません。入学後に安心して学び続けられる環境が整っているかどうかも、重要な要素です。イギリスでは低所得層や有色人種、LGBTなどマイノリティの学生を積極的に受け入れているものの、必ずしも入学後の環境が良好であるとは限りません。そのため、彼らは名門校を目指すべきか、それとも安心して学べる大学を選ぶべきかという選択に迫られます。たとえば、オックスフォード大学とケンブリッジ大学は学業成績ランキングで1位と2位を独占していますが、多様な学生の受け入れ状況を示すランキングでは、50校中47位と48位にとどまっています。そのため、一部の学生はこれらの名門大学への出願を見送り、結果的に高度な教育機会を逃してしまうことがあります。

ホリスティック入試制度が、テストスコア以上に重視されていることを示すインフォグラフィック

入試の際に合否判断で検討される項目
Credit: Globaladmissions.com


メリトクラシーが抱える合格基準の不平等

一方、多くのヨーロッパ諸国では、メリトクラシー(能力主義)に基づく入試制度が採用されています。つまり、学業成績や共通試験の結果を主な判断基準とし、個人的な経験や育った環境などはほとんど考慮されません。たとえばドイツでは、高校の成績に加え、志望学部による指定科目の試験結果で入学が決まります。一見すると、これは全員同じ基準で評価する公平なやり方のようにも思えますが、家庭の経済状況や地域格差などを考慮しないため、かえって不平等を助長する恐れがあります。そもそもこの制度は、すべての学生が質の高い教育を受け、学習環境も平等である前提に立っています。しかし現実には、教師不足など教育体制が整わない学校に通う生徒や、低所得層やマイノリティの人たちは、出願の段階で進学を断念せざるを得ない場合があるのです。これこそが、「努力すれば誰でも成功できる」というメリトクラシー神話の典型です。実際に、学業で良い成績を収め無事に卒業するためには、才能や努力だけでなく、家庭の経済力や社会的優位性といった背景も大きく影響します。

とはいえ、ヨーロッパの大学には、学費の負担が比較的軽いという利点もあります。ドイツやオランダなどでは授業料が無料、または非常に低額に設定されており、費用面では比較的容易に高等教育へ進むことができます。一方、イギリスの大学では、特に留学生の場合、年間の授業料が2万ポンド(約400万円)を超えることもあり、経済的負担は非常に大きいのが実情です。このように、イギリスの入試制度は多面的でインクルーシブである一方で、費用面では大きなハードルがあり、機会の平等と経済的な不平等が同居するという矛盾を抱えています。

多角的な評価と手が届く学費の両立

最終的に、大学が目指すべきは「入学における公平性」だけではなく、「入学後に学生が安心して学び、成長できる環境をいかに支えるか」にあります。出願から入試に至る評価方法を見直す大学が増える中、インクルージョンの本来の目的とは、ヨーロッパのような経済的負担を抑えつつ、イギリスのような背景を考慮した多面的評価の両立にあるのかもしれません。そして何より重要なのは、入学条件の緩和にとどまらず、すべての学生が尊重され、支援を受けながら自らの可能性を最大限に伸ばせる学習環境をつくることです。

バルーク大学の5階講義室に集まる学生たち

Credit: Xbxg32000, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

ゲストライター K. Kanliによる寄稿

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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