現在、重度の障がいのある人々は世界人口の約16%、およそ13億人にのぼります。それにもかかわらず、社会のあらゆる場面でアクセシビリティに対する壁が依然として存在しています。アクセシビリティとは、すべての人が製品やサービス、情報などを利用できる状態や環境の度合いを指しますが、障がいのある人々はそれらを活用することが難しく、教育や雇用の機会から取り残されるという現実があります。その結果、安定した収入を得られず、経済活動への参加も制限されるという負の連鎖が続いています。OECD(経済協力開発機構)のデータによると、障がいのある人の失業率は、障がいのない人と比べて2〜3倍に上り、国によっては40ポイントもの差が生じています。ただし、こうした社会的排除は、働き始める頃に突然始まるものではありません。
学習環境の不備と教育水準の低下
障害のある人に立ちはだかるアクセシビリティの壁は、幼少期から大人になるまでのあらゆる段階で機会を奪い、不平等を生涯にわたるものとしています。近年の調査では、若年層の約8%が何らかの障がいを持つといわれています。しかし、多くの学校では専門的な訓練を受けた教員が不足し、障がいのある生徒に対応した教材、設備が十分に整っていません。その結果、学業の継続が難しくなり、中途退学に至る生徒も少なくありません。その影響で、障がいのある人の約30%は「低い教育水準」にとどまり、障がいのない人よりもその割合が10%も高くなっています。十分な教育を受けられないことで、定職からの収入の確保や社会保障の受給もできないまま、社会から取り残される人が後を絶ちません。

Image via The World Bank
障がい者救援策を打ち出した国々
こうした状況を打破しようと、いくつかの国では法整備が進められています。たとえば、アフリカのウガンダでは、2006年に「障がい者法(Persons with Disabilities Act)」を制定し、その結果、障がいのある子どもの就学率が56%上昇しました。南米アルゼンチンでは、深刻な貧困の拡大を背景に、議会上院がミレイ大統領による拒否権行使を覆し、障がい者手当を拡充する緊急法を可決しました。人口の約半数が非正規就労で医療保険に加入できない同国において、この法改正は極めて重要な意味を持ちます。またチリでは、誰もが利用できる医療制度の整備に加え、大企業に障がい者枠での採用を従業員の1%と義務付ける、クォータ制が導入されています。
しかし、大学で学位を取得し、採用のハードルを乗り越え働き始めても、障がいのある人々はなお構造的な障壁に直面します。多くの国では、建築物へのスロープ設置やエレベーター導入など、物理的アクセシビリティへの法的な義務づけはありますが、職場環境や業務システムを個々の状況に合わせて調整するかどうかは、企業の裁量に委ねられているのが実情です。障がいのある人々の状況や必要なサポートは一様ではなく、一律的な対応ではインクルーシブな職場は実現できません。そのため、同僚や上司を含む、職場全体の教育と理解促進が不可欠となります。
排除の連鎖を断ち切るために
障がいのある人々が、教育や雇用の機会から一生涯取り残される負の連鎖。これを断ち切るためには、経済的支援を権利として保障し、彼らの自立を支える制度を再構築することが必要です。OECDは、制度設計の不備が「給付の崖(Benefit Cliffs)」を生み、働き始めた途端に支援を打ち切られることで就労意欲が削がれ、不安定な状況をさらに強めてしまうと警告しています。したがって、政府が障がい者手当や教育制度、職場環境の整備に取り組むにあたっては、その政策が障がい者のエンパワーメントにつながるよう、慎重な運用が求められます。約8,500万人もの障がい者を抱え、不平等と非正規労働に直面している南米各国では、政府による支援は選択肢の一つではなく、責務と言えます。それこそが、学校教育に始まる「排除の連鎖」を断つ、唯一の手段なのです。

Credit: Hiki App, via Unsplash
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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