稼ぐ父親から育てる父親へ|育児への深い関わりを望む男性の葛藤

いまもなお多くの社会では、「親の実質的な役割は母親が担うもの」という考え方が根強く残っています。特に子育ての場面ではその傾向が顕著であり、仮に父親が積極的に関わろうとしても、無意識のうちに補助的な役割を担わされることが少なくありません。従来通り、家庭より仕事を優先する父親は未だに大多数である一方、子どもの日常に関われないことに寂しさを感じる父親もいます。家族のあり方が多様化する中で、「本当の親になるとはどういうことか」という定義は変わり続けています。しかし、昔ながらの価値観がいまだに父親の役割を形づくり、「Equity at Home(家庭における公平性)」の実現を妨げています。

多様化する家族形態と変わらない固定観念

現代の家族の形は今、これまでになく多様化しています。共働き家庭や再婚家庭、同性カップル、そして離婚後も両親が協力して子育てを行う共同養育など、さまざまな形が広がっています。そうした中、学校行事への参加や日々のケアなど、子どもに愛情をもって積極的に関わろうとする父親が増えています。それでも、「育児は母親、稼ぐのは父親」という固定観念はいまだに消えず、職場や保育施設では母親が主な連絡先となることもよくあります。こうした一つ一つが、子どもの育児において父親が補助的な存在となる風潮を助長しています。

こうした状況の中で、父親が平等に育児に関わることは容易ではありません。離婚や別居によって子どもと離れて暮らす父親は、親権制度など社会的な仕組みにより、子どもとの関わりを制限されることもあります。育児の場から外されてしまった父親が感じる心の痛みは、決して小さくありません。積極的に子どもと関わりたい彼らにとって、「親」ではなく「ベビーシッター」のように扱われることで、罪悪感や無力感を抱くことさえあります。一方で、実際に育児に深く関わっている父親たちも、別の形の壁に直面しています。父親が主たる養育者として関わるケースがまだ少ないこともあり、周囲からは逆に懐疑的な目で見られてしまうのです。

父親の積極関与が子どもに与える好影響

家族の多様化が進む今、「親とは何か」について改めて見直すことが求められています。特に、再婚家庭や同姓カップルによる家庭など最近の新しい形の家庭では、古い父親像が男性の育児への関与を妨げることがあります。しかし、血縁による親子関係にこだわり過ぎることなく、子どもへの愛情と積極的な関わりを示すことこそが、親という役割の本質です。父親が子どもの心に寄り添うことで、子どもは情緒的に安定し、コミュニケーション能力も高まり、ジェンダーにとらわれない柔軟な価値観を身につけることができるなど、数々の良い面があります。こういった環境での育児は、家庭での絆を深めるにとどまりません。両親が公平な価値観で育てた子どもたちは、人々の支え合いの構造を小さい頃から学び、未来の社会づくりに大きな影響を与えていきます。

また、職場の役割も大きいと言えます。父親の育児参加を「例外」ではなく「当然のこと」として定着させるには、すべての親が平等に支援される制度が不可欠です。具体的には、父親の育児休暇の取得促進、フレックスタイム制や時差出勤などの柔軟な働き方を支える制度、そして多様な家族形態を認める社会的な理解の拡大が挙げられます。これらの取り組みは、父親の育児参加を極めて一般的なことにするための、一つの重要なステップです。

従来の固定観念を変えるには、地域社会において父親向けの育児セミナーや地域イベントなどを行い、自由に意見を交わす場を作ることが大切です。母親と父親の双方が、仕事と家庭のバランスを取り支え合えるようになれば、家庭も周囲のコミュニティも、より健やかに安心して生活できる場となります。

第1子誕生後に、休暇を「取得した親」と「取得しなかった親」の割合を示したグラフ

第1子出産後の育休取得状況と退職等の割合(アメリカ)
Credit: U.S. Census Bureau, via Census.gov


両親の平等な責任としての育児

育児におけるインクルージョンの実現は、性別による役割分担を越え、両親が子育ての責任を共有することから始まります。育児における役割は、父親と母親に対する固定観念に縛られるべきではありません。子どもに寄り添い、彼らの日常に深い愛情で積極的に関わることこそが、親の本質的な役目なのです。

父親が幼い娘と一緒にドールハウスで遊んでいる

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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