近年、移民に対する敵対的な感情が世界各国で広がっています。こうした感情は、移民への理解不足や、事実とは異なる情報で生じた誤解や警戒心によるものがほとんどです。このような状況の中で、アメリカでは移民関税執行局(Immigration and Customs Enforcement:ICE)が移民政策の執行を担い、ICEは職場や地域社会での一斉摘発を通じて、移民法違反の疑いがある人々を一時的に拘束しています。ICEの一斉摘発は大抵が事前通告なしに行われ、時に強硬な手段で自宅や職場、公共のスペースへも捜査官が立ち入ります。その過程で、外見や話し方だけで移民と判断されることも少なくありません。その結果、非正規滞在者だけでなく、合法的に滞在する移民や、容姿が外国人に見えるアメリカ市民までもが拘束される事態が起きています。
移民の犯罪率はアメリカ市民より低い
このような取り締まりは、移民への不信感を植え付け、犯罪者のレッテルを貼り、差別を正当化する社会的な空気を生み出しています。移民の家族は分断され、親と子が引き離されたまま二度と再会できないケースもあります。しかし、移民と犯罪の間に明確な相関関係があることを示すデータはありません。移民に対する犯罪不安は事実に基づくものではなく、偏見や先入観、そして一定の意図を含んだ政治家の発言によって形成されたものです。実際には、移民の犯罪率はアメリカ生まれの市民より低く、移民人口が増加している都市ほど犯罪率が低下する傾向さえ見られます。

世界の移民数(2020)
Credit: Esteban Ortiz-Ospina, Max Roser, Hannah Ritchie, Fiona Spooner, and Marcel Gerber, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
反移民が世界的な潮流に
移民を犯罪に結びつけ、脅威的な存在とみなす先入観や通説は、アメリカに限ったものではありません。日本においても、急速な高齢化や出生率の低下による深刻な人手不足という現実がある一方で、外国人への不安や不満を訴える言動が支持を集め、否定的な感情が広がっています。ヨーロッパでも同様の動きが見られ、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相が、移民政策の「誤り」を正すとして、大規模な強制送還を行うべきであると公の場で発言しました。こうした国の指導者による誤った発言は、移民への誤解や警戒感、排外主義を助長し、マイノリティコミュニティをより危険な状況に追い込むおそれがあります。
移民が経済に貢献する現実
実際のところ、移民は地域経済を強化し、社会を安定させる上で不可欠な存在です。移民が公共サービスに負担をかけているという主張とは逆に、彼らは受けるサービス以上の税金を納めています。多くの国で労働力不足が深刻化する中、移民は労働人口を拡大し、生産性を高め、GDPの成長に貢献しています。また、国内の労働者だけでは人手が確保できない、あるいは担い手が集まりにくい産業において、移民は重要な役割を果たしています。さらには起業家精神までもたらし、新たなビジネスや産業の活力を生み出している点も見逃せません。アメリカでは、企業価値が10億ドルを超えるスタートアップの半数以上が移民による創業であり、移民が経済の活力に大きく貢献していることは明らかです。こうした事実からも、移民は公共サービスへの負担どころか、国の競争力と長期的な繁栄を支える中核的な存在だと言えます。
受け入れ側の敵対的な態度や差別は、当然ながら移民がその社会に溶け込むことを難しくします。一方で、移民は新しい文化や視点、価値観を生み、地域全体を豊かにする可能性を持っています。研究によれば、多様性のある社会は、同じ価値観の人だけで構成された単一的な社会よりも創造性や柔軟性が高く、イノベーションを生み出しやすいことが分かっています。異なる視点に触れることは、課題解決力を高めるだけでなく、他者の立場や背景への理解を深める第一歩となります。自分とは違う考えに接する機会を積極的に増やし、それを受け入れるインクルーシブな姿勢を持つことが、地元住民と移民の相互理解を深めていきます。
移民への警戒心が高まる現在の状況は、非常に憂慮すべきものです。移民は決して、社会にとっての脅威ではありません。支援が多少必要でも、彼らは移住先の地域社会を活性化し、レジリエンス(立ち直る力)や新たな可能性をもたらしてくれます。歴史的に見ても、人類が移動することによって世界は形づくられ、グローバルな発展と繁栄へとつなげられてきました。私たちが移民を社会の一員として迎え入れることができれば、彼らはこれからも、現代社会の多様な文化や地域社会を支え、発展させる存在となっていくのです。

Credit: Molly Adams, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
ゲストライター E. Takamuraによる寄稿
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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