移民=犯罪者のレッテル|米強制送還に抗うアライの役割

Credit: U.S. Immigration and Customs Enforcement, Public Domain, via Flickr


アメリカ国土安全保障省(DHS)の2025年度予算は、2024年の100億ドルからわずか1年で850億ドルへと大幅に増額され、連邦捜査局(FBI)や麻薬取締局(DEA)といった連邦法執行機関の中で最も多くの予算が割り当てられました。この莫大な資金が、監視体制の強化と米国移民関税執行局(ICE)執行官の大規模な増員に充てられた一方で、十分な研修が行われることはなく、新人執行官はわずか56日間の研修のみで、現場に配属されています。 

政府がメキシコ国境の警備に傾倒するなか、中南米系の移民や移住者、さらには米国市民への差別的取り締まりが拡大し、深刻な社会問題と化しています。その実態は、ラテン系住民の異常な拘留率の高さだけでなく、日常的な嫌がらせや不当な誤認逮捕といった数々の事例からも明白です。

第2次トランプ政権が推し進める「不法移民の一斉強制送還」の動きのなかで、「犯罪者」や「不法滞在者」といった言葉が、移民に対し同義語として扱われています。その結果、「移民は犯罪者である」という誤った固定観念がアメリカ社会に生まれ、定着していきました。保守系の政治団体やメディアは、このステレオタイプに、人種的な偏見を巧妙に絡め、「犯罪者」「移民」「ラテン系」という3つの属性を意図的に結びつけようと世論を誘導しています。


人種や言語への偏見から逮捕される住民たち

本来、ICEは米国市民を逮捕や拘束する権限を持っていません。そのため、移民と犯罪、さらには特定の人種を関連付ける偏見が不当な取り締まりや拘束を正当化し、それが本来対象外であるはずの市民にまで及ぶのではないかという懸念が広がっています。

この危惧を決定的なものにしたのが、25年9月に米国最高裁判所が異例の速さで下した決定です。下級裁判所はそれまで、人種や言語、職種などを理由とした不当な尋問、つまり人種プロファイリングを禁じる命令を出していましたが、最高裁の判断はこれを一時的に停止するというものでした。これにより、事実上、ICEによる人種プロファイリングが再び容認される事態となったのです。現在、ICE執行官は、ラテン系の外見やスペイン語の使用といった特徴を根拠に、合法的に彼らを不審者として扱うことが可能になっています。

こうした取り締まりの強化により、米国内ではラテン系住民が不当に標的とされる事態が常態化しています。メキシコ系米国市民であるハビエル・ラミレスは、ICEに身柄を拘束され、5日間にわたり勾留施設に収容されました。連行される際、彼は自分が米国市民であることを必死に訴え、その場で911番へ緊急通報したものの、ICE執行官たちは彼の話に耳を貸さず、その主張を虚偽と決めつけたのです。各都市でICEによる一斉摘発が激化するにつれ、彼のように有効な身分証明書を持つ市民であっても、違法に逮捕されるリスクが確実に高まっています。

移民関税執行局(ICE)の行動のうち、容認される、されないと見なされているかを示すグラフ

ICEの取り締まりに対するアメリカ市民の意識
Credit: How Americans See Immigration Officers’ Behaviors and Civilian Actions, Pew Research Center, Washington, D.C. (January 29, 2026)


人口の4%が逮捕者の24%を占める現実

このような状況を受けて、ニューヨーク移民連合は、ICEによる人種プロファイリングや、出身国別の不当な取り締まりの実態の追跡を続けています。2025年のデータによると、ニューヨーク在住のエクアドル出身者は非米国籍住民全体のわずか4%に留まるものの、ICEによる逮捕者においては全体の24%を占めました。同様に、住民の1%にすぎないグアテマラ出身者も逮捕者全体の8%と、人口比との乖離は明白です。こうした著しい歪みは、ニューヨークに限ったことではありません。メキシコ、ホンジュラス、ベネズエラ、ペルー出身者の逮捕率は、どの州においても実際の人口比率に対して不釣り合いに高いのです。

アリゾナ州メキシコとの国境で多数の不法移民を拘束されている様子

メキシコ国境で拘束される移民たち
Credit: U.S. Customs and Border Protection, Public domain, via Wikimedia Commons


強硬な移民政策に広がる疑問の声

こうした「犯罪者の排除」を掲げる強硬政策は、全米で支持されているわけではありません。 2026年にピュー・リサーチ・センターが実施した世論調査によると、米国市民の72%が「言語や容姿のみを理由とした逮捕」を容認せず、54%が「移民が多く暮らす地域におけるICEの取り締まり強化」に反対の意を示しています。 

この世論を裏付けるように、米国では市民権の有無を超え、地域ぐるみの自衛の動きが広がっています。不当な拘束から隣人を守るため、令状なしでは自分からドアを開けない、ICEの質問に対し黙秘権がある、弁護士の同席を求められるといった、自分の法的権利を守るための具体的な知識がマニュアル化され、共有されています。また一部の地域では、コミュニティー独自の警戒システムを構築し、クラクションや笛を使って、ICE執行官の接近を住民全体に知らせる地域もあります。

移民と共に築く地域社会

そもそも、人類の歴史において、人々の移動は常に進化する文明の一部でした。移民は決して「異分子」ではなく、学校やコミュニティを共につくり、さらには家族や友人として日常を支え合う、不可欠な存在です。人々が連帯することで、こうした不当な嫌がらせから大切なコミュニティーのメンバーを守ることができます。一人ひとりの力には限りがありますが、地域社会の中で力を合わせ、アライとしてその輪を広げることが、社会をより良い方向へ変える力となるのです。

米国でICEに抗議するデモ参加者が、移民支援を示すプラカードを掲げている様子

Credit: Trevor Stone, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

ゲストライター S. Jarvisによる寄稿

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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