シリコンバレーは本当に理想の職場?DEI浸透へ鍵を握る経営層

シリコンバレーはIT分野の中心地と見なされ、その代名詞にもなっています。GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)の成功でその魅力が広く伝えられていますが、近年では、ネガティブなイメージも広がりつつあります。男性中心の職場環境が長く続き、多くの有能な人々が立ち去っている業界としても知られるようになっています。今日のIT業界において、女性、特に有色人種の女性が、職場での頻発する差別やハラスメントを報告しています。IT業界で働く女性の約3分の1が、いつでも仕事を辞めたいと考えており、結果として、全ての女性がこの業界を離れてしまうという悲劇的な結末に至る可能性も否定できません。実際に、50%の女性が35歳になる前にIT業界でのキャリアを諦めています。

多様性向上への取り組み

このような風潮は決して新しいことではなく、「ボーイズクラブ」と揶揄される閉鎖的な男性中心社会に対する問題提起は、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズの時代から始まっています。そのような中、IT業界の多様性を拡げることを目的とした試みも行われてきました。一つの例として、Googleの「I Am Remarkable」プログラムが挙げられます。このプログラムは、女性参加者がマイノリティとしての存在価値を再認識することを目的とし、彼女たちの活躍を促進しています。しかし、業界全体で「男性優位」カルチャーにシフトチェンジを促すような、経営層による意識改革が起きない限り、IT業界が多様な才能を引き寄せ、業界で働き続けてもらうことは難しいでしょう。これまで、その存在自体さえも無視されてきた有能な女性たちに対して、インクルーシブな環境構築に向けての取り組みを理解してもらうことは簡単ではありませんが、不可能ではありません。

一進一退が続く女性の登用状況

2022年には33.9%であったGoogleの女性従業員の割合が、2023年には34.1%過去最高の数字となりました。同期間において、女性管理職の割合も30.6%から32.2%へと増えました。この数字の変化は注目に値し、称賛されるべきですが、同時に女性従業員の定着率が低いことも指摘されるべき事実です。IT業界において長く続く女性への敵対心、嫌悪感の悪影響によって、活躍中の女性従業員が2024年が終わる頃までその職に留まっているとは限りません。

このように状況は好転しているように見えますが、2023年から2024年にかけては、むしろ状況は再び悪化傾向にあります。高い利益率をもとにした強力な米国経済にもかかわらず、Googleを含む大手IT企業は、従業員を大幅に削減しています。そして、DEIプログラムに対する風向きも怪しいものとなっています。2023年11月までに、DEI関連の求人は前年比で23%減少してしまいました。この削減によって起こりうる状況に関しては、IRレポートなどにはまだ記されていません。そして、どのくらいの数のマイノリティのスタッフが解雇されたかなどの数字が明らかになるのには少し時間がかかりそうです。いずれにせよ、女性にとって働きやすい職場環境が作られているかは、疑問が残るところです。

カルチャーチェンジは経営層から

このような後ろ向きな流れを見せている中、IT業界がマイノリティのために状況改善に本気で取り組んでいることを理解してもらうには、一層の努力が必要となります。まずは、なによりも、経営層を筆頭にリーダーの変化が期待されます。米国の従業員に対する調査によると、職場の「カルチャー浸透」に対して、最も責任を持つのは経営管理層です。個々の従業員は、組織全体に広がるような大規模な変革を率先する力を持っていません。そのため、インクルーシブなカルチャーを作り上げることを望むリーダーは、自らそれを変える責任を負う必要があります。経営層は企業の進む方向を俯瞰的に見渡すことができる立場にあり、会社の未来に対するビジョンに沿ったカルチャーを浸透を推し進めることに最も適した立場にあります。カルチャー浸透に対しては、今までのような頭ごなし的なトップダウン型アプローチではなく、従業員に寄り添いつつ、トップ自らが変化を実践するトップガイド型アプローチが期待されます。その形は、DEIの取り組みを後押しし、最終的には組織全体に広がり、すべての人々にとってより良い環境を作り出すでしょう。

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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