アメリカは長年にわたり、世界保健機関(WHO)にとって最大の支援国であり、また米国国際開発庁(USAID)を通じて、世界中に多大な援助を行ってきました。これらの機関は、世界各地で発生する災害や貧困問題、経済的困難に対して支援を提供し、世界的な保健医療ケアや開発支援、そして人道的援助の分野で重要な役割を果たしました。2017年から2020年の間に、USAIDは世界のおよそ240件の緊急事態や自然災害に対応し、2016年には全世界で5,300万人以上に食糧支援を実施しています。また、エイズ救済への取り組みにおいても知られており、2015年だけで950万人が治療によって命を救われました。
WHOが果たしてきた偉業と世界での役割
WHOもまた、これまで数多くの成果を挙げてきました。各国の人々の健康を守るために、加盟国の保健政策や行動計画の策定を支援し、長期的なビジョンや戦略、実行計画の設計にも貢献しています。1980年には、天然痘の根絶という公衆衛生史に残る偉業を達成しました。さらに、2016年にコンゴ民主共和国で発生した黄熱病の流行も、WHOの迅速な対応により封じ込められました。WHOはこれまでに40カ国以上で健康に関する取り組みを展開していますが、それ以降、黄熱病の新たな大規模流行は報告されていません。
アメリカの撤退で懸念されるリスク
しかし近年、アメリカはWHOやUSAIDへの資金提供を打ち切る決定を下しました。WHOにとってアメリカは最大級の資金提供国のひとつであり、USAIDの運営もアメリカ政府の支援なくしては成り立ちません。このような大幅な資金削減は、世界的な感染症予防体制を弱体化させ、HIV/AIDSのように、過去に抑え込まれていた病気が再び蔓延するリスクを高める恐れがあります。さらに、人道支援の中断や、支援物資の供給不足を引き起こす可能性も否定できません。アメリカが自国の利益を優先するのは理解できるとしても、こうした判断は、すでに社会的に不利な立場に置かれている人々をさらに追い詰め、WHOやUSAIDがこれまで取り組んできた構造的な格差の是正を逆行させる可能性があります。加えて、アメリカの撤退によって生じた空白に、中国のような新たな影響力を持つ国々が入り込もうとする向きも見られます。しかし、アメリカの代わりに別の大国が主導権を握るだけだとしたら、本質的な問題は変わらないのではという懸念の声も上がっています。
国際機関に頼らない未来を目指して
一方で、WHOやUSAIDの影響力から脱却し、自立を目指す国々も出てきています。とくにアフリカ諸国では、これらの機関が加盟国の主権に干渉し、政府との摩擦を引き起こしてきたとの批判も存在します。緊急事態への対応については、WHOの対応が官僚的で遅いという見方があり、それが経済的な利害関係に左右された結果ではないかと疑念を持たれることもありました。USAIDに対しても、援助に政治的な意図が含まれているとの批判が根強く、その活動の実効性について疑問を呈する声も聞かれます。
今やWHOやUSAIDは、単なる組織を超えた存在となりました。世界中の何百万人もの命を支える、まさに生命線とも言えるでしょう。医療、災害支援、開発といった分野における両機関の活動は、たとえ批判の声があったとしても、決して軽視されるべきではありません。一方で、こうした機関が一部の国から撤退することが、結果としてその国にとって良い方向に働く可能性も否定できません。とくにアフリカ諸国にとっては、今こそ手を取り合い、「他国に頼りすぎず自国の誇りを取り戻す(Make Themselves Great Again)」絶好の機会となるかもしれません。
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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