職場でヒジャブが問題の理由|女性の信仰とキャリアを守る未来へ

「ヒジャブ」とは、イスラム教徒の女性が髪や首を覆うために身につけるスカーフのような布のこと。イスラム教における慎みと敬虔さを示すものとされており、神への服従の表現の一つです。強さや献身、そして信仰に対する揺るぎない誇りの象徴でもあるヒジャブ、この布を頭にまとう女性は「ヒジャビ」と呼ばれます。ナイジェリアは、アフリカで最大級のイスラム教徒人口を有し、キリスト教とイスラム教が共存する国です。この国の「1999年憲法第38条第1項」では、宗教の慣習に従う行為や、それを自由に表現する権利が、信教の自由として明確に保障されています。しかし、こうした法律が存在しても、職場ではヒジャビたちが依然として差別や偏見に直面しており、法律と現実との間にはまだ大きなギャップが存在します。最近では、ヒジャビに対する認知度も徐々に上がり、周囲にも彼女達への理解が少しずつ広がっているのは確かです。それでも、業務の遂行能力や指導力、職場環境への適応性を疑う古い価値観が存在し、職場でのヒジャビへの差別は今も続いています

法律を動かしたヒジャビたちの声

とりわけナイジェリアの法曹界は、この問題に関して最も激しい争いが見られる業界であり、アマサ・フィルダウスのケースはその象徴的な例と言えるでしょう。2017年、ナイジェリア法科大学院の修了生であった彼女が、弁護士資格授与式への出席を拒否されるという事態が起こりました。ナイジェリアでは、イギリス植民地時代の伝統により、弁護士や判事が法廷や式典で白い人工毛のウィッグを着用する決まりがあります。これは公式な正装とされており、法曹界で重んじられている慣習です。フィルダウスが授与式への参加を拒まれた理由は、彼女がウィッグの下にヒジャブを着けて式に出席しようとしたことにありました。この出来事は、職場における信仰の自由をめぐり、国中を巻き込む大きな議論へと発展しました。その後、彼女は弁護士団体などから支援を得て、翌2018年にヒジャブを着用したまま、正式に弁護士バッジを授与されるに至りました。

教育界もまた、ヒジャビ着用に対して強い抵抗が見られる業界のひとつです。2014年、当時ナイジェリアの公立中学校の生徒であったアシヤト・アブドゥルカリームは、学校でヒジャブを着用する権利を求めて訴訟を起こしました。彼女はこの若さで、公立学校でのヒジャブ着用を禁じたラゴス州の措置に対し、最高裁まで争うこととなりました。そして2022年、最高裁は公立学校でのヒジャブ着用を支持する判決を下し、ラゴス州政府もすべての学校に対し、この判決を遵守するよう通達しました。とはいえ、現場レベルでは判決に従わないケースがなお散見されており、履行の徹底には依然として課題が残されています。

ヒジャビ差別のルーツは植民地時代に

こうした差別の根源には、植民地時代に作り上げられた、仕事着に関する昔から根付く既成概念があります。西洋風な服装をプロフェッショナリズムの基準と考えるこの価値観は、今なお多くのナイジェリアの職場環境に根付いており、ヒジャブを着用するような社員は柔軟性に欠け、実務能力が低いなどと見られる傾向があるのです。エンタメなどのメディアもこの偏見を助長しており、ヒジャブをまとう女性が権力者や人々を統率する役柄で登場することは滅多にありません。ドラマなどでは従順で受け身な人物に描かれることが多く、そうした描写を人々が視聴することで、彼女たちへの固定観念がさらに強まる悪循環が続いています。さらに、ヒジャビをめぐる職場でのマイクロアグレッションも頻繁に見受けられます昇進のチャンスに恵まれない、リーダー職に就けないなどの不公平な状況や、「仕事をする服装として適さない」といった理由でヒジャブの着用をやめるよう圧力をかけられるなど、その内容は様々です。特にナイジェリア南部はイスラム教徒が少ないこともあり、北部に比べて彼らへの偏見や反発が強い傾向にあります。

信仰の表現を許容するインクルーシブな職場へ

ナイジェリアの憲法が信教の自由を保障している限り、ヒジャビたちが信仰に関して差別を受けるようなことがあってはなりません。しかし、先述のフィルダウスやアブドゥルカリームに象徴されるような判例があるにもかかわらず、職場には依然として偏見が存在し、法律順守も徹底されていないため、問題は解決されないままです。職場が本当の意味でインクルーシブな場所となるためには、まずは各企業の方針として、従業員の宗教的表現を守る姿勢を明確に打ち出すことが重要です。その上で、ヒジャビが昇進の機会を奪われないよう十分に配慮しつつ、深く根づいた固定観念や偏見を排除するような社員研修を定期的に行うことが効果的です。イスラム教徒ではない他の従業員からの支援もまた、偏見を取り除く大きな力となります。周囲の理解と協力は、ヒジャビが服装などの外見ではなく、個々のスキルによって評価される職場文化をつくる一助となるでしょう。

課題は残るものの進展は見られ、さまざまな分野で障壁を乗り越え突き進むヒジャビたちが増えていることは、未来への希望につながります。企業や行政、そして私たち一人ひとりが連携して取り組むなら、職場における平等は確かなものとなるはずです。

オフィスで働くヒジャブを着用した3人の女性

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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