国際支援の縮小は自立のチャンス|依存なき医療がアフリカを救う

アフリカ疾病対策センターは、アフリカ55か国の政府間組織として設立された公衆衛生機関で、感染症対策や医療体制の強化を担っています。近年、アフリカ諸国に対する医療支援が大幅に削減されており、同センターは、これによって毎年200万から400万人の命が失われる恐れがあると警鐘を鳴らしています。また2030年までに、さらに最大4,000万人程度が極度の貧困状態に陥る可能性も指摘されています。特にアメリカは、トランプ大統領の前回任期中に大規模な支援削減を行い、その余波が現在も続いています。アメリカではこの方針を歓迎する声も一部で聞かれますが、現地アフリカには深刻な影響をもたらしています。こうした支援の縮小は、困難な状況にあるアフリカの地域社会に暮らす人々を命の危険にさらすだけでなく、新たな感染症の世界的流行を引き起こすリスクもはらみます。EUやイギリスなどの主要援助国も支援予算を相次いで削減する中で、これはもはや一つの地域の問題ではなく、全人類に関わる安全保障上の問題となってきました。

医療支援の削減が招く感染拡大

これまで、アフリカ各国への国際的な支援は、HIV/AIDS、結核、ポリオ、マラリアなどの感染拡大の防止と治療において極めて重要な役割を果たしてきました。特に医療インフラの整備が遅れている地域では、その支援が多くの命を救うことにつながっています。しかし現代では、人々が容易に海外を旅行し、移住できる時代であり、ある地域で発生した感染症は瞬く間に他国へと拡大していきます。ワクチン接種や予防対策への資金減少が要因となり、上述のような既存の感染症に加え、新型コロナウイルスやサル痘などの新たな感染症がアフリカ国外に広がる可能性も否定できません。医療支援が削減されることで、これまでの感染症対策の効果を損なうおそれがあり、ここから慎重な対応が求められます。仮にパンデミックが再び発生した場合、経済や医療体制に課題を抱えるサハラ以南のアフリカでは、人々の命と暮らしが深刻な打撃を受け、元の状態に戻るのは非常に難しくなるでしょう。

12年から22年までの各国の対GDPの医療支出割合を示すグラフ

医療支出のGDP比率(イギリス、日本、サハラ以南、アメリカ)
Credit: World Health Organization Global Health Expenditure database, CC BY-4.0


地域特性に配慮した対策を

こうした状況の中、アフリカ各国は資金調達の新たな道を模索し、自らの力で医療を支える仕組みづくりに動き出しています。外国からの支援が軒並み削減される影響は深刻ですが、地域による違いを無視した画一的な対策もまた、危険を招く恐れがあります。従って、解決策を考えるにあたっては、アフリカ各国の多様性や地域ごとの特性をまず理解し、考慮しなければなりません。また、ジェンダー、社会経済的背景、障害の有無といった個別の状況や、地域ごとの特有の課題についても分析する必要があります。例えば、内戦で医療体制が崩壊しているスーダンやコンゴのような国もあれば、比較的医療制度が整っている南アフリカのような国もあり、それぞれに必要な支援の形は大きく異なるのです。

各国からの国際的な支援は、アフリカ諸国の医療体制の整備にこれまで大きな貢献をしており、将来的にも多くの命を救う力となるでしょう。しかしその主要国が相次いで支援を削減する今、これからは国内投資と国際支援を効果的に組み合わせた、より連携の取れた対策が求められます。例えば、ナイジェリアの「基礎医療提供基金(Basic Healthcare Provision Fund)」は、貧困層を含むすべての国民が、ナイジェリア国内のどこに住んでいても同等の基礎医療を受けられるよう体制を整えています。この取り組みにより、約2億3000万人のナイジェリア総人口に対し、2024年には新たに260万人もの国民が医療保険に加入しました。基金は主に国の公的資金を財源としつつ、企業や国際的な支援団体からの資金も取り入れています。


依存を断ち切り自立した医療の構築を

いま求められているのは、国際支援団体や外国からの資金援助に依存することではなく、アフリカ各国が自ら医療資金の確保に取り組む姿勢です。アメリカが資金援助を縮小する一方、中国が支援に名乗りをあげていますが、そこで新たな依存関係を築いてしまっては本質的な変化にはつながりません。むしろ、各国の支援削減は、医療体制を自国の力で持続可能にしていく絶好の転機と捉えるべきです。アフリカ各国がそれぞれに抱える課題に向き合い、医療政策の優先順位を見直すこと。そして、国内外のパートナーと連携しながら、すべての人に同等な医療サービスを届ける仕組みを築くことが今こそ重要です。医療は限られた人々の特権ではなく、すべての人に保障されるべき基本的な権利です。その原点に立ち返り、地域の現状に即した取り組みを着実に進めていくことで、公平でインクルーシブな未来への道を開くことができるのです。

カメルーンの保健所で医療スタッフと子どもを抱える母親

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


Learning Cycle Logo

組織の状況に合わせた個別プログラムで、DE&Iの促進に踏み出しましょう。私たちLearning Cycleが皆さまのサポートをどのように行っていくか、詳細はこちらで確認いただけます

Top Posts This Week


Learning Cycle Editorial Team

世界各国のスタッフライターから、旬なDE&I関連ニュースやトピックスをお届けします!

私たちは、社会や職場におけるダイバーシティの促進に日々全力を注いでいます。DE&Iの浸透に向けて、グローバルの色々な意見に触れてみてください。(更新日は毎週火曜日、木曜日を予定しています。) まだ一般的には数少ない、「DEIイベント・セミナー」も毎月ご紹介しています。こちらも是非お勧めです!

日本語と併せ、オリジナルの英語バージョンもお読みください。尚、時差と公開タイミングの関係から該当ページが表示されない場合があります。


Categories


In Association With

聴くテレ朝「ホンマのホンネ」(株式会社テレビ朝日)
サストモ(LINEヤフー株式会社)
「Pride Action30」特設サイト(パナソニック コネクト株式会社)