主人公はLGBTQ+|インディーが描くビデオゲームの多様性

ゲーム業界では今、多様性を巡り変化が起きています。アメリカのLGBTQ+擁護団体「GLAAD(Gay & Lesbian Alliance Against Defamation)」が発表した、2024年のゲーム業界に関する報告書によると、アメリカのゲーマーのうち17%がLGBTQ+を自認しており、2020年の10%から増加傾向を示しています。しかし、LGBTQ+のキャラクターが中心的な役で登場するゲームは、いまだ多くありません。近年、LGBTQ+の登場人物が描かれる大手映画作品は全体の28%、夜のゴールデンタイムのテレビ番組では11%という状況ですが、2023年に発売されたゲームではわずか2%にとどまりました。この数字からもわかるように、社会全体でLGBTQ+の存在がより認知されるようになった一方で、ゲーム業界では依然として、多様な性指向をストーリーに取り入れることに消極的な姿勢が続いています。

LGBTQ+のストーリーを敬遠する理由

大手ゲームメーカーは、LGBTQ+の登場人物やストーリーにはことさら慎重です。というのも、LGBTQ+の表現が規制されている国や地域では、発売禁止や修正を求められるリスクがあり、そうした反発地域ごとの問題を最小限に抑える必要があるためです。また、多様性が前面に出るゲームは、ネット上で誹謗中傷の対象となりやすく、開発側が低評価を恐れこの分野のゲーム開発に手を出しにくいのも理由の一つです。そのため、LGBTQ+のキャラクターが登場したとしても脇役にとどまったり、発売後の有料コンテンツとして加えられるのが一般的です。しかし近年では、大手メーカーの作品にも少しずつ変化が見られるようになりました。たとえば「The Last of Us Part II」ではレズビアンの主人公が細かく描かれ、「Apex Legends」でも、ノンバイナリーやトランスジェンダーのキャラクターが、更新版では中心的な人物として登場するようになったのです。

Data: LGBTQ Video Game Archive and Moby Games Database via Public Books


インディーゲームがけん引する多様性

一方で、自主制作のゲームでは、LGBTQ+の人々の生き方を丁寧に扱った作品が次々と登場しています。こうした作品は、小規模な開発チームが、売上や広告主の意向に左右されることなく、自由な発想で制作しています。この開発環境により、LGBTQ+の人々を主人公とするストーリーや、ゲームの進め方そのものへの工夫で、彼らが抱える悩みや葛藤をよりリアルに描くことが可能となっています。たとえば、根強い人気を誇る「UNDERTALE」では、ノンバイナリーの主人公に対して英語では一貫して中性の代名詞「they/them」が使われており、レズビアンの恋愛も取り上げています。これまで大手ゲームメーカーは、プレイヤーのほとんどが異性愛者の男性であり、LGBTQ+をテーマにしたゲームには需要がないと考えてきました。ところが実際には、多様な性指向を持つ人々がすでにゲームの世界に存在しています。そうした作品が高く評価されることで、LGBTQ+のコンテンツが持つ大きな可能性が、あらためて示されています。

ゲームが変えるアンコンシャスバイアス

こうした自主制作のゲームは、LGBTQ+のプレイヤーにとってただの娯楽にとどまらず、仲間とつながる大切な場でもあります。ゲームにLGBTQ+のキャラクターが登場することに加え、プレイヤー自身が自己肯定感を得られるような体験がゲームに盛り込まれ、彼らが抱える葛藤や喜びなども丁寧に描かれています。そのきめ細やかな描写により、さまざまなプレイヤーたちの中に強い共感が生まれ、それまで無意識に抱いていた固定観念すら変わることもあります。ゲームを通じて起きるこのような変化が、LGBTQ+の人々への理解や思いやりにつながっていくのです。

私自身もゲーマーとして、最近のこうした動きに大きな期待を寄せています。世の中には、偏見や差別を恐れ、自分の性的指向や価値観を隠して日常生活を送る人たちがいます。そうした人々にとって、ゲームの中で「自分はここにいてもいい」と感じられることには、計り知れない意味があります。インクルーシブなゲーム空間は徐々に広がりつつありますが、LGBTQ+のプレイヤーの数やその多様性の幅に比べると、まだまだ大きな隔たりがあります。だからこそ、ゲーム開発者とプレイヤーの双方がこれからも声を上げ続け、ゲームの主人公がLGBTQ+でも違和感が持たれない未来を目指すべきなのです。LGBTQ+の人たちにとって、シスジェンダーと同様に自分たちの存在を自然だと感じられるゲームが、これから一層増えていくことを願っています。

ゲストライター T. Chiramboによる寄稿

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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