弁当でいじめられる子どもたち|食文化への偏見と民族の上下意識

現代に生きる私たちにとって、食べ物が持つ価値は、単なる栄養摂取だけにとどまりません。それは生き方を表し、文化や伝統を体現する象徴でもあります。「You are what you eat(あなたはあなたの食べたものでできている)」という言葉がありますが、これは私たちが思っている以上に本質を突いた表現です。

エスニックという言葉に潜む無意識の偏見

世界には地域や文化ごとに、多様で独自の料理が存在します。しかし、食の多様性に対する受け止め方は国や地域によって大きく異なります。経済的に豊かな国々では、人種や民族的マイノリティの人口が増えているにもかかわらず、国民が好んで食べる料理の種類に大きな変化はなく、あまり多文化的とは言えません。その国で古くから食べられている料理は普通とみなされる一方で、他文化に由来する伝統料理は「Ethnic(エスニック)」というカテゴリーにひとまとめに押し込められます。しかし実際のところ、「エスニックフード」という言葉は、少数民族の食文化にのみ使われる傾向があり、白人中心のアメリカやイギリスの料理を指して「エスニック」と呼ぶことはほとんどありません。このことは、料理の味や好みの問題ではなく、社会の中に潜む階級意識や人種的バイアスが言葉の中に反映されていることを示しています。

見慣れない食材や料理への先入観

残念なことに、多くの人が無意識のうちに抱えているのが「Food Neophobia(フード・ネオフォビア)」。つまり、見慣れない料理やその食べ方への抵抗感です。この心理的な壁が、私たちの中にある無意識の偏見を助長します。ある料理を「エスニック料理」と認識した瞬間、実際に食べる前から、「この食べ物は自分の口には合わないだろう」と考えてしまう人も少なくありません。学齢期の子供たちの「弁当」にまつわる研究によると、食を起点としたこうした反応は、ある要因によって形成されることが分かっています。それは、「他の子の弁当が自分にとって普通の食べ物かどうか」という感覚です。この普通という基準を通して、子どもたちは自分と他者を線引きし、誰がどのグループに属するかを判断します。その結果、民族的マイノリティの子どもたちは、周囲の子どもたちにとって馴染みのない料理を弁当に持っていくと、からかわれたり、いじめの対象になってしまうことがあります。そして、似たような弁当を持ってくる子どもたち同士で昼食を共にするようになり、弁当をきっかけとした自然発生的な分裂が生まれていきます。そこには、主流文化か、そうでないかという見えない上下意識も存在しています。私自身も子どもの頃、映画やテレビの影響で「洋食はおしゃれで上品な食べ物」だと思い込み、家で日常的に食べていたトウモロコシ粥のサザや野菜料理よりも、洋食を好んで食べていた時期がありました。

食べ物や料理は、どう表現されるかによって、人々が受ける印象は大きく変わります。そして食べ物に対する私たちの好みや捉え方には、意識的にも無意識的にも先入観が表れます。偏りのある先入観は、単なる味や好みの評価にとどまらず、他文化の料理を文化的背景を理解せずに取り入れる「食の盗用」という形で現れることもあります。さらに、料理の作り手によっても評価は変わります。たとえば、マイノリティのシェフが作った料理は「安っぽい」「質が低い」と感じられることがある一方、マジョリティのシェフが作った同じ料理が高く評価される場合があるのです。

さらに、文化によって「食べ方」の常識も異なります。日本では、麺をすするのは差ほど悪いことではありませんが、他国では行儀が悪く不快だと捉えられてしまいます。また、手で食べるのが一般的なインド料理は不衛生でマナー違反と見なされる一方で、ハンバーガーやピザを手で食べることはごく普通の行為として、誰も気にすることなく受け入れられています。

未知の食を通じて広がる世界

私たちがまず意識すべきは、「すべての料理は、その土地ではエスニックである」という事実です。本当の意味でのインクルージョンとは、人種やジェンダーだけでなく、食の選択といった日常の行動にも広がるべきものです。異なる食文化に触れるとき、そこには敬意が必要です。未知の味や食べ方に挑戦し、受け入れることで、自分の世界も広がっていくのです。食べ慣れない料理を最初から否定することなく、食に対しオープンで柔軟なスタンスでいることで、まだ知らない食文化の美味しい料理に巡り会えるかもしれません。

インドの魚市場で、魚を入れた桶のそばに座る女性

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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