クリスマス休暇は不公平|ヒジャブも断食も尊重する多宗教な職場へ

「信仰に基づく多様性」とは、特定の宗教に限らず、無宗教の人も含め、あらゆる信仰的背景を持つ社員を受け入れ、尊重することを意味します。宗教は多くの人にとってアイデンティティの重要な一部であり、それは信仰を持たない人も同様です。DEIへの取り組みでは、性別や人種、民族といったテーマに焦点が当てられることが多い一方で、信仰について議論される機会はまだ多くないのが現状です。しかし、互いの信念や宗教観の違いを尊重することは、職場での帰属意識や連帯感を高め、不要な対立を減らし、チームの士気を向上させるために欠かせません。自分の宗教的価値観や慣習が尊重されていると感じられるとき、社員たちの仕事への意欲は高まり、同僚との一体感を感じることができるのです。

カレンダーに潜む見えない不平等

ハーバード・ビジネス・スクールの調査によれば、「職場で宗教をどのように扱うべきか」について、明確な方針を示している企業はほとんど存在しません。キリスト教徒が多数を占める国々では、祝日がクリスマスやイースターといったキリスト教の行事に合わせて毎年設定されており、企業も自動的に休日となるのが一般的です。

しかし、少数派宗教の重要行事は、休日になることはありません。キリスト教以外を信仰する社員は、仕方なく出勤するか、有給休暇や傷病休暇を使って休みをとるかという選択を迫られます。

宗教におけるこのような不平等は、職場の服装規程やオフィス環境にも表れます。具体例として、業務に支障がないにもかかわらず、信仰上の理由で着用するヒジャブやターバン、男性信者がひげを伸ばす行為に対し、制限が課されたり禁止されることがあります。また、祈りや断食など、信仰に基づいた習慣を持つ社員にとって、祈りのための静かなスペースがない、食事の選択肢が限られているといった職場環境は、信仰上の行いを難しくします。その結果、社員が自身の宗教を隠したり、自己抑制的になるケースもあり、ストレスや疎外感につながることもあります。

香港国際空港第1ターミナルの祈祷室の様子

Credit: BrokenSphere, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

多様な信仰に配慮した職場づくりの広がり

一方、信仰の多様性を尊重する職場づくりに取り組む動きも広がっています。一例として、多宗教社会のシンガポールでは、その特性を踏まえた包括的な取り組みが功を奏し、職場での宗教に関する衝突や摩擦が少なくなっていますオーストラリア、イギリス、香港などでも、宗教行事に合わせて柔軟に勤務時間や休暇を調整できる制度を導入する企業が相次いでいます。

一見小さな取り組みでも、職場の文化や方針を少しずつ改善していくことで、信仰を含めたインクルーシブな環境づくりが着実に前進します。例えば、管理職や従業員を対象に宗教リテラシー(宗教に関する理解や知識)を高める研修を行うことで、偏見を減らし、異なる価値観を持つ人への共感を育むことが可能になります。また、宗教行事や個人の事情に合わせて柔軟に休める制度や、断食期間中の時差出勤制度が整えば、宗教という括りを超えて、育児や介護などのニーズにも社員たちは容易に対応できるようになります。さらに、ドレスコードの緩和による宗教的服装の容認、祈りのための静かなスペースの確保、食事制限への配慮を含むメニューの提供なども、企業がすべての社員に敬意を示す、実践的な方法です。

職場で自らの信仰を隠している宗教実践者の割合を、宗派別に示したグラフ

職場で自分の宗教を隠したことがある人:宗教・宗派別の割合
Credit: Gallup Faith at Work Survey 2021, CC-BY-ND, via The Conversation


信じる、信じない ― それも人のあり方

信仰の多様性を尊重することは、宗教を特別扱いすることではありません。それは、公平性を大切にし、他者への理解や受容を深め、「誰もが安心して自分らしくいられること」を大切にする姿勢です。社員が自分の信仰や宗教的価値観を自由に表現できる職場は、企業の発展に不可欠な「心理的安全性」を生みだします。このように、宗教を含めたDEIへの取り組みは、すべての人が自分らしく働ける社会への一歩です。互いの違いを認め合い、共に歩む職場こそ、これからの時代に求められる本当のインクルーシブな環境と言えるでしょう。

ゲストライター A. Oruiによる寄稿

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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