労組を認めないAmazonの実態|成長の裏で苦しむ従業員たち

数多くの通販サイトの中でも、Amazonは世界一の利用者数を誇ります。そのAmazonの成功は、豊富な商品ラインナップとスピーディな配達実績への高い評価により成り立っています。同社は年間を通じ、ブラックフライデー、プライムデー、クリスマス、バレンタインデーなどの大きなショッピングイベントを開催し、その度に記録的な売り上げを更新。イベント期間中は、Amazonが年間で最も忙しい時期となります。2024年第3四半期だけでも、Amazonは約4,000万個の荷物を即日配送しました。しかし、この1兆ドル規模の成功の代償は、企業ではなく、最前線で働く従業員たちが負っています。

このようなイベントのピーク時には、倉庫作業スタッフは残業が避けられず、1日10〜12時間の長時間労働が当たり前の状況となります。一部の倉庫では1日に40万個の荷物を扱うこともありますが、その膨大な業務量に、休憩時間抜きで働くことも稀ではありません。

Amazonによる労働法違反の実態

アメリカのバーニー・サンダース上院議員が行った調査では、Amazonの労働災害発生率は業界平均より30%も高いことが判明しました。さらに、Amazonは企業イメージを守るために自社のデータを改ざんし、労災発生件数を過少申告していたことが明らかになっています。この調査報告では、Amazon側が社内に設置した医療機関を利用するよう従業員に強く促し、外部の医療機関の受診を妨げるような動きを見せていたことも指摘されています。こうした対応は、Amazonが労災の実態を隠す手段として機能している可能性だけでなく、同社の労働環境の劣悪さを裏付けるものでもあります。従業員は障害給付や労災補償を受ける権利も合わせ持ちますが、同社においては有給病欠を取ることすら非常に難しく、また上述の通り適切な治療も受けられず、長期的な健康リスクを抱える状況に追い込まれているのが現状です。

Amazonは、アメリカの小売業界において第2位の売上高を誇る大企業でありながら、従業員に圧力をかけるような言動や、労働組合結成の動きを一貫して阻止するなどの行為が繰り返し報告されてきました。その結果、同社で正式に結成された労働組合は、2022年にニューヨーク州スタテンアイランドの倉庫作業スタッフによって設立された「Amazon労働組合(ALU)」の1団体のみです。しかし、同社はこの組合を承認するに至っておらず、倉庫作業スタッフとの団体交渉を拒否し続けています。これに従業員側が対抗する形で、医療従事者や公務員、アメリカ最大の貨物輸送企業UPSのドライバーなど、幅広い業界の労働者を代表する国際労働組合「Teamsters」が、ALUと提携。適正賃金や労働環境の改善、充実した福利厚生の実現を求める動きを強化しています。

ドライバーを従業員と認めないAmazonの思惑

しかし、負担が掛かっているのは倉庫作業スタッフだけではありません。Amazonの配送ドライバーも同様に過酷な労働環境に置かれていますが、彼らは同社の正規従業員ではありません。「デリバリー・サービス・パートナー(DSP)」という名称の、Amazonの配送業務を担う「独立請負業者」として分類されているのです。これは「誤分類(misclassification)」と呼ばれ、Amazonをはじめ、Uber、Lyft、DoorDashなどの企業が広く行っている手法です。アメリカの法律では、適正賃金や労働組合結成の権利など、基本的な労働者の権利は正社員にのみ認められています。このため、ドライバーを社員ではなく「請負業者」に位置付けることで、企業側はこれらの基本的な権利を与える義務がなくなるのです。

現実に、Amazonの配送ドライバーによる最初の労働組合メンバーは、結成直後に解雇されました。Amazonはドライバーとの直接の雇用関係を結んでいないため、実際には彼らを雇用していた外部企業との契約を打ち切るという手段に出たのです。しかしその後、アメリカにおける労働法の重要な監視機関である全米労働関係委員会(NLRB)は、Amazonを「ドライバーの共同雇用主」であると認定しました。この裁定により、Amazonはドライバーに対して責任を負うべきだという法的な判断が下されたことになります。

フィラデルフィアでパレードに参加するアマゾン労働組合メンバー

Credit: Joe Piette, CC BY-SA 2.0 via Flickr


従業員の優先は企業の責任

NLRBによる調査や監視には一定の効果が見られますが、現在のAmazon従業員の労働環境を考えると、企業としての社会的責任はまだ十分に果たされているとは言えません。同社は1日に数千万個の荷物を配送する、2兆ドル規模の大企業です。その規模に見合った適正な残業規則や、より健全な労働環境、さらには労働者の基本的な権利として組合結成の自由を認めることは、企業として必要最低限の義務ではないでしょうか。

地球上で最高の雇用主」を目指すAmazonが、その企業理念を掲げる一方で、実際には労働環境や従業員への対応に問題があることは非常に皮肉なことです。Amazonが対外的に様々な社会貢献活動を行っていることは事実ですが、今後はそれを単なるPR戦略として利用するのではなく、上述の理念を企業文化の中核に据え、顧客のみならず従業員からも信頼される企業を目指すべきです。企業の真の成功は、単に利益だけでは測れません。企業がどのように従業員を扱っているかどうかによっても、評価されるべきだと考えます。

ドイツ・ニーダーザクセン州のアマゾン物流センター

Credit: Bärbel Miemietz, CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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