Credit: katemangostar via FreePik
職場でのハラスメントは世界中に広がる問題であり、働く人たちのキャリアやメンタルヘルス、そして人間関係に深刻な影響を及ぼしています。実際の報告件数は増えているものの、それは被害者の純粋な増加だけが理由ではありません。社会全体でハラスメントへの意識は確実に高まり、防止策を講じる企業も増え、人々の考え方や感覚も変化しつつあります。そのため、被害に対し声を上げることへの心理的ハードルが、少しずつ下がっているとも言えます。それでもなお、ハラスメントによって自尊心を傷つけられ、心理的安全性が脅かされている人が数多く存在することも事実です。
世界に広がる職場ハラスメントの現状
ハラスメントは、身体的暴力、言葉による侮辱、精神的に追い詰める行為、性的嫌がらせなど、さまざまな形で現れます。世界全体で見ると、5人に1人が職場で何らかのハラスメントを経験しており、そのうち約3分の2は複数回の被害に遭っています。形は異なっていても、いずれのハラスメントも「権力の不当な乱用」であり、働く人の尊厳を深く傷つけ、仕事のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。現在、職場でのハラスメント被害が最も多く報告されているのはオーストラリアとニュージーランドで、企業で働く人の約半数が被害を経験しています。さらに、ライフクオリティが高いことで知られる北欧諸国も、全ての国がハラスメント報告上位10か国に入っており、制度が整い働きやすいはずの職場文化でも、この問題の解決は容易ではないことを示しています。

職場で暴力やハラスメントを経験した従業員の地域別割合(2021年)
Credit: Lloyd’s Register Foundation World Risk Poll 2021, via International Labour Organization
声を上げやすい職場づくりとERGの役割
ただし、報告件数が増えたことは、必ずしもハラスメントそのものの増加を意味するとは限りません。「声を上げても大丈夫」と感じる人が増えたことが、報告件数を押し上げた一因と考えられるためです。こうした変化は、DEIの推進活動が活発に行われ、すべての人に対する共感や尊重の気持ち、公平な対応を重視する価値観が広まった結果でもあります。また、共通の背景や関心を持つ従業員が集まる社内コミュニティ「従業員リソースグループ(ERG)」の存在も、働きやすい職場づくり、社内での意識向上やインクルージョン促進に大きく貢献しています。ERGは、さまざまなバックグラウンドを持つ社員が安心して意見を交換できる場であり、自然にイノベーティブなアイデアが生まれる環境を生み出します。そこで育まれた職場の一体感が、健全な組織文化づくりにつながり、企業と従業員の双方にメリットをもたらすのです。
DEI後退で従業員をハラスメントから守れるか
それでもなお、「被害を報告した後に報復を受けるのでは」という恐怖心や、社内制度への不信感がぬぐえず、声を上げられない人は多く存在します。中には、報告しても意味がないと感じたり、社内の通報制度やプロセスを十分に理解していない人もいます。アメリカでは、実際のハラスメントのうち、42%が依然として報告されていません。特に人種的マイノリティ、なかでも黒人従業員は、ハラスメント対象になりやすいだけでなく、被害報告によって報復を受ける可能性も高いとされています。DEIへの取り組みが世界各地で広がる一方、アメリカでは逆に後退するような動きとなり、政府や企業によるDEIプログラムの縮小や撤廃が見られます。その結果、マイノリティの従業員が排除される危険性が高まり、安心して相談できる場やアライ(支援者)とのつながりが断たれ、被害者が以前よりも声を上げにくくなる悪循環を生んでいます。
職場のハラスメントの根本的な解消のためには、社内意識の向上や従業員教育、そして責任ある行動が不可欠です。特に管理職は、先入観にとらわれず部下の話に耳を傾け、問題には迅速に対応しながら、自ら率先して行動で示す姿勢が求められます。従業員が安心して話しやすい環境を整えることこそが、管理職の重要な役割です。そしてハラスメント被害に遭った場合は、まずは被害の記録を証拠として残し、勇気を持って声を上げ、互いに支え合うことが大切です。特に、男性をはじめとするマジョリティの立場にある人々がアライとして支援の姿勢を示すことは、誰もが公平に扱われていると感じられる職場づくりの大きな鍵となります。職場文化を本当に変えるには、問題となる行動を誰もが見過ごさないという毅然とした姿勢が欠かせません。勇気をもって声を上げることは、今苦しんでい人を守るだけでなく、次に同じ被害を受けるかもしれない誰かを守ることにもつながるのです。

Credit: Mapbox via Unsplash
ゲストライター E. Takamuraによる寄稿
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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