近年、子どもを持ちたいと考える人の男女差に変化が表れています。アメリカの調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、まだ子どものいない若年層では、「将来、子どもが欲しい」と答える割合は女性よりも男性の方が高いことが明らかです。
また、カナダの国営公共放送局であるCBC(Canadian Broadcasting Corporation)が18〜34歳のカナダ人男性を対象に行った調査では、子どもは2人以上欲しいと回答した人が多く、1人でよいと考えている人はわずか7.4%にとどまりました。

将来子どもを持ちたいと答えた若年層の男女比(2023年) Credit: Among young adults without children, men are more likely than women to say they want to be parents someday, Pew Research Center, Washington, D.C. (February 15, 2024)
父親になる覚悟は射精の瞬間から
これまで、避妊や妊娠に伴う負担は、長らく女性だけに押し付けられてきました。アメリカでベストセラーとなった「Ejaculate Responsibly(邦題:射精責任)」の著者ガブリエル・ブレアは、「妊娠や出産に対する責任は、子どもが生まれる瞬間ではなく、射精の時点から始まる」と指摘します。そして、その当事者である男性こそが、自らの生殖能力に対して責任を負うべきだと訴えています。
とりわけ、妊娠や出産、中絶について、法律や慣習によって女性が自由に選択できない国や地域では、妊娠に至る要因は男性の精子にあるにもかかわらず、無責任に女性を妊娠させた男性が社会的責任を問われることはほとんどありません。
今、男性に求められているのは、「子どもが欲しい」というただの願望から、「父親になりたい」という自覚への転換です。それは、自らの生殖能力を軽視せず、より慎重に向き合う姿勢を意味します。単に「子どもを持つ」ことではなく、親としての役割を引き受ける覚悟が問われているのです。
依然として残る母親への過度な育児負担
CBCの報告によると、多くの男性は子どもを持つことを前向きに捉えている一方で、それによって自分の人生や生活が大きく変わるとは考えない傾向があります。しかし実際には、出産や育児には経済的負担が伴い、働き方や時間の使い方、さらには心身の健康に至るまで、大きな影響を及ぼします。
この認識のギャップは、これから父親になる男性たちが、育児に主体的に関わることを十分に想像できていないことを示しています。本当に親になることを望むのであれば、育児や家事を女性と同等に担おうとする姿勢が当然求められるはずです。
それにもかかわらず、社会には今なお「女性は育児、男性は仕事」という伝統的な性別役割が根強く残っています。父親の育休取得は増加しているものの、最も手のかかる6歳未満の子どもの育児を担うのは、依然として母親です。世界的なデータでも、子どもの食事や寝かしつけといったケア労働において、女性は男性より1日あたり平均約2.8時間も多く費やしていることが報告されています。
子どもを「所有物」のように扱うことの危うさ
世界の多くの文化において、男の子が家事を担う存在として育てられることはありません。幼少期に家事や育児のおままごとをするのは女の子、洗濯機やキッチンのおもちゃも女の子向けに作られています。「男性が子どもを欲しがるのは、子どもが子犬を欲しがるのと同じだ」とも言われますが、これは可愛らしさや楽しさといった表面的な側面に惹かれる一方で、育児に伴う責任や苦労を引き受ける覚悟が伴っていないことを揶揄する表現です。
親として、子どもの心にどう向き合うのか、また日々の育児でどのような役割や責任を担うのかを具体的に思い描けないまま子どもを望むことは、やがてそれが自己中心的な欲望へと転じる危険性をはらんでいます。その極端な例として、PayPal創業者の一人であるピーター・ティールや、通信アプリTelegramの創業者であるパーヴェル・ドゥーロフのように、自らの遺伝子を「レガシー」として残すことを目的に精子提供を行う、一部の億万長者が挙げられます。こうした、親としての責任や役割を一切引き受けない彼らの行動は、その欲望の象徴と言えるでしょう。
自らの生殖能力に責任を持つということは、子どもを単に「遺伝子を継承する存在」としてではなく、自律した人格を持つ一人の人間として理解することと同じです。またそれは、女性が妊娠や出産で健康を損なう可能性や、適切な医療を受けられないリスク、さらには命の危険にまで及び得る現実を、正面から受け止める姿勢でもあります。そして何より重要なのは、父親としての役割に自ら主体的に向き合い、実際に行動することです。それは、大切な子どもとパートナー、そして自分自身に対する責任として、欠かすことのできない姿勢なのです。

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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