Credit: Alaafiabami Oladipupo (Haylad), CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
人生の90%以上を、家の中で過ごす生活。皆さんは、そのような人生を想像できるでしょうか。
それは決して、本人が望んだ生き方ではありません。外に出たくても、道路や建物といった社会の設備は、車いす利用者にとって非常に利用しにくいのが現状です。それ以前に、「車いす利用者が自分の力で、行きたいところへ行く」ことを想定していない街の構造が、彼らの行動の自由を大きく制限しています。それが、私のいとこが実際に生きてきた日常でした。
どんなに理不尽な場面に遭遇し、厳しい現実に直面しても、彼女はいつも明るさを失いませんでした。まさに「ジョイ(Joy:喜び)」という言葉を体現するかのような人柄だったため、ここでは彼女を「ジョイ」と呼ぶことにします。
ジョイはアフリカのジンバブエで育ち、幼い頃から車いすで生活してきました。移動には多くの制約がありましたが、彼女はとても幸せな印象を与える人でした。いつも笑顔で場を明るくし、私たち親戚が訪ねるたびに、心から喜んで迎えてくれました。ただ、当時まだ幼かった私は、彼女がどれほど「家」という場所に縛られた生活を送っていたのかを、十分には理解していませんでした。
家の中では可能だった車いす利用者の自立
その認識が大きく変わったのは、今から20年ほど前のことでした。ある日、私の両親がジョイを我が家に連れてきたのです。家に入ってきた彼女は、いつものように明るい笑顔と、少し大きくて優しい笑い声で、すぐにその場を和ませました。
普段使っている車いすはガレージにしまい、ジョイは腕の力だけを使って驚くほど器用に室内を移動していました。それは暮らしの空間で自立のために身につけた、彼女ならではのスキルでした。私はこの時に初めて、彼女が環境に適応するためにどれほどの工夫と努力を重ねてきたのか、そして同時に、車いすで生活することが、屋外での移動や外出をどれほど制限してきたのかを目の当たりにしたのです。
外出をきっかけに見えた現実
その後、家族で外食に出かける話をしていたときのことです。「ところでそのお店、ジョイも行けるの?」と、誰かが何気なく口にしました。その瞬間、それまで和やかだった部屋の空気が静まり返ったのを今でも覚えています。父は言葉を選びながら、その日行く予定のレストランは車いすに対応していないと、私たちに説明しました。
この出来事は、まだ幼かった私の理解と価値観を大きく変えることとなりました。私たちが日常的に利用していた多くの場所が、実は車いす利用者にとっては「アクセスできない場所」だったのだと、初めて意識するようになったのです。家族や親戚が集まる家、レストランやさまざまなお店、さらにはトイレに至るまで、狭い出入り口やスロープのない階段など、車いす利用者が使うことを想定されていない動線が当たり前のように存在していました。
ジンバブエには現在、225万人以上の障がいのある人が暮らしています。しかし現実には、彼らの自立を支える環境が十分に整っているとは言えません。アクセスできない空間は社会参加の機会を奪い、ドアを開けることや交通機関を利用するといった、ごく基本的な行為でさえ、家族や友人の助けに頼らざるを得ない状況を生み出しています。

Credit: 障害者人口の現実:世界で6人に1人が重大な障害、その80%が開発途上国に集中Global Disability Statistics, World Health Organization, via Medium
インクルーシブな街づくりは最初の設計から
誰もが無理なく利用できる環境づくりに、特別な技術や過剰な投資が必要なわけではありません。大切なのは、最初からインクルーシブな視点で計画を立て、ほんの小さな工夫でも確実に役立つ設計を積み重ねていくことです。本当のインクルージョンとは、単に同じ空間に「存在している」ことではありません。能力の違いにかかわらず、すべての人が生活し、社会の一員として居場所を感じられる状態を指します。
ジンバブエの近隣国の中には、政策や制度整備、支援者による働きかけを通じて、アクセシビリティを前進させている例もあります。例えば、ジンバブエと同じアフリカ南部に位置するナミビアでは、国家障害者評議会(The National Disability Council)が中心となり、障がいのある人々の生活環境改善に向けた法制度の整備が進められています。また、南部に接する南アフリカ共和国でも、障がいのあるすべての人の平等とアクセシビリティを保障することを目的とした「障がい者の保護および促進法案」が提出されています。
ジンバブエでも、これまで障がい者インクルージョンに向けた取り組みは進められてきましたが、その歩みは依然として遅く、地域間の格差も大きいのが現状です。それでも、障がいのある人々とそのアライたちが力を合わせれば、社会は少しずつ変わっていきます。その先にこそ、ジョイのような人たちが尊厳をもって自立し、選択肢を手に生きられる未来が広がっていくのです。

ゲストライターによる寄稿
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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