女性を追い込む更年期ペナルティ|男性の理解で組織を動かす

世界では今、働く人々の高齢化が進んでいます。G7諸国では、2031年までに労働人口の25%以上を55歳以上の労働者が占めると予測されており、日本のように40%に達する見込みの国もあります。こうした変化を背景に、高齢化する労働者の中でも、とりわけ女性が直面する医療面や就労面でのニーズへの対応が重要になってきています。

50歳を過ぎて身体に起こる変化と影響

女性が年を重ね、月経が止まり12か月以上経つ状態を「閉経」と呼びます。アメリカの著名な医療機関であるクリーブランドクリニックによると、閉経を迎える平均年齢は52歳前後とされ、この閉経期を挟んだ前後5年、合計10年がいわゆる「更年期」です。この時期には、就寝中の寝汗、関節や筋肉の痛み、集中力の低下などの認知機能の変化といった、日常生活に支障をきたす様々な症状に多くの女性が悩まされます。

その結果、更年期は女性の日々の生活だけでなく、仕事のパフォーマンスにも影響を及ぼします。イギリスを拠点とする女性の健康支援団体Women’s Health Concernの調査では、45%の女性が「更年期の症状が仕事に影響した」と回答し、47%は「症状が重く仕事を休んだことがある」と答えています。こうした実態を背景に、2022年にはイギリスのEmployment Appeal Tribunal(雇用上訴審裁判所)が、重度の更年期症状について「障害」の法的定義に該当し得るとの判断を示しました。このように、更年期への社会的な理解は以前に比べて前進しつつありますが、依然として多くの課題が残されているのが現状です。

働きながら更年期症状を経験している女性の割合を示したグラフ

中高年女性が仕事中に経験したことのある更年期症状                 Credit: Menopause in the workplace via IPSOS


女性が直面するいくつもの更年期ペナルティ

更年期は経済的にも大きな損失をもたらします。アメリカを代表する世界的な医療機関メイヨークリニックによると、アメリカでは更年期に関連する体調不良によって、年間約180万ドル相当の労働時間が失われており、医療費を含めた経済的損失は266億ドルに達します。

出産や育児によって女性の所得が下がる「マザーペナルティ」という現象が存在するように、更年期を迎える女性にも、いわゆる「更年期ペナルティ」が生じます。実際、更年期が始まってから約4年後には、女性の収入が平均で10%減少することが分かっています。また、更年期症状を理由に離職する女性や、障害認定を申請する女性が増えるため、このペナルティは女性の就業率低下という形でも表れます。さらに衝撃的なのは、こうした経済的損失は45歳以上の女性が多い職場ほど大きく、更年期への理解や対応が、当事者を多く抱える職場でも十分に進んでいないことが示されています。

スタンフォード大学の「Menopause Penalty(更年期ペナルティ)」研究によると、アメリカの労働力の約60%は中高年女性で構成されており、更年期を迎える女性を支援することは経済的にも極めて重要との指摘があります。しかし、女性の45%は更年期について医師にすら相談していない現状を考えると、勤務先にそのことを伝える可能性はさらに低いと言えるでしょう。

更年期に関する相談は、当事者からはとても言い出しにくいものです。そのため、企業側には、更年期について安心して話せる環境整備が求められます。研究によると、管理職の理解を深めると共に、体調に合わせて柔軟に働ける勤務時間を導入することは、更年期を迎える女性を支援するうえで最も効果的だとされています。加えて、十分な換気や温度管理の改善、動きやすく通気性の良い服装や制服を認めるなど、より快適で働きやすい職場環境への工夫も重要です。

誰も老いからは逃れられない

労働力の高齢化と世界的な出生率の低下が進む今、人生の転換期にある中高年労働者をどう支えるかは社会全体の重要な課題です。女性を一人の人間として捉えるのではなく、「子どもが産めるかどうか」を重視する社会では、更年期を迎えた女性が自らの存在意義を見失い、周囲から取り残されていると感じることも少なくありません。

企業が十分な支援を行わなければ、こうした貴重な働き手たちの力を活かすことも、長期的に人材を確保することも、もはや難しい時代に入っています。誰もが老いるという現実を直視し、中高年層に不利益を与える構造の変革が、今後の企業と社会の持続性を左右するのです。

ビーチの遊歩道を歩きながら、ヨガマットと水筒を持つ高齢の女性たち

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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