子なし社員が被る不平等|「いつでも残業可」の不当な看板

「お子さんはいらっしゃいますか?」

日常会話の中で何気なく尋ねられる質問ですが、大抵の場合、純粋な好奇心や相手を知るためのきっかけとして使われます。しかし、同じ質問を職場で尋ねるとなると、その意味が突然重みを増すことがあります。一見当たり障りのない質問に見えても、たとえ尋ねる側に悪意がなくても、受け取り方によって、聞かれた側を傷つけてしまう可能性があります。家族構成などの個人的な事情は、職場とは一切無関係であり、従業員の評価基準とされるべきではありません。従業員がどんな家族構成であっても、差別や不当な扱いを受けず、各々が公平に扱われることが重要なのです。

「共通認識」のメリット、デメリット

家族構成についての話題はセンシティブですが、多くの人はそのトピックに対し、越えてはならない一線を十分に認識できていません。子どもがいるかいないか、その理由は人それぞれですが、その理由自体は重要ではありません。しかし、子どもがいない、または意図的に持たない従業員の多くが、職場で偏見にさらされているという報告があります。米国人材マネジメント協会(SHRM: Society for Human Resource Management)の調査によると、74%の従業員が「子どものいる従業員の方が、子供がいない従業員よりも職場で優遇されている」と感じていることが明らかになりました。子どものいない従業員は、子どものいる従業員と比べ、「家庭の事情に左右されにくい」「時間に余裕がある」と見なされ、より多くの勤務シフトを引き受けたり、休日出勤や急な業務対応を求められる傾向があるといいます。

このような偏見は特段の問題ではなく、むしろ合理的と考える向きもありますが、実際には子どものいない従業員を構造的に不利な立場に追いやり、業務負担やバーンアウト(燃え尽き症候群)のリスクを高めています。興味深いことに、「子どものいる従業員の方が職場で優遇されていると感じる」と回答した人のうちの80%以上は、子どものいる従業員本人たちによるものでした。このことから、子どもの有無にかかわらず、家族構成による格差は問題であるという共通認識の存在がうかがえます。

分かりにくい線引き:「配慮」と「優先」の違い

SHRMの調査では、子どもがいないことを理由に休暇を許可されなかった経験がある人は63%、残業を頼まれたことがある人は69%、子どもがいる同僚の業務をカバーするために業務量が増えた人は70%にも上りました。

この問題は、ホリデーシーズンになると特に顕著になります。セントアンドリュース大学ビジネススクールのジュリア・ジュンティ(Giula Giunti)博士の研究によれば、年末年始の時期には、子どものいる上司や同僚が、子どものいない従業員に対して、長時間勤務や遅くまでの残業を遠慮なく依頼する傾向が見られるとのことです。これは、子どものいない従業員のプライベートな時間が軽視される様子を示しています。

子どもがいないことを理由に、休暇を認められなかったり、追加の勤務を強いられた割合を示すグラフ

子どもがいないことを理由に休暇が許されなかった人、残業を頼まれた人などの割合  Data: ResumeLab via SRHM.org


無意識の偏見と対峙するには、その存在を「認識」すること

こうした差別は表立っては見えにくく、禁止事項として規則に明記されるものでもありません。まるで「よくある普通のこと」としてしまうことで、誰もが疑問を持たずに、その状態が続いてしまうのです。問題の根底には、「子どものいる人は、子どもがいない人のどんな役割よりも、正当で重い人生の責任を担っている」という、社会的な偏った思い込みにあります。しかし、子どものいない従業員も様々な責任を当然ながら背負っており、守るべき境界線や個人的に大切にしているものがあることを忘れてはなりません。今後、特に女性を中心に、多くの人が独身を貫いたり、子どもを持たない選択をする人が増えると予測されます。これまでの価値観は社会全体で見直され、職場の常識にも大きな変化が及んでいくでしょう。

職場での子どもがいる従業員、いない従業員双方に対する偏見は、DEIの文脈においても比較的新しいテーマです。子どものいない従業員への差別を認識することは、子どものいる従業員から何かを奪うことではありません。それは、他の人が免れている負担を、特定の人たちが黙って背負わされる状況を防ぐことにつながるものです。つまり、こうした偏見の存在を「認識」することで初めて、職場は公平でインクルーシブな、そして長期的に安定した環境へと近づいていくのです。

家族と過ごす時間と、友人と過ごす時間を対比した並列画像

ゲストライター F. Makoniによる寄稿

(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)


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