インターネットが生活のあらゆる場面に当たり前に存在する現代、一昔前と比べ、子どもや若者を取り巻く環境は大きく変化しています。私の幼い親戚の子たちが、日常的にTikTokやInstagramといったSNSや、Robloxのようなオンラインゲームに長時間を費やしている様子を思うと、私が育った時代とはまったく異なる世界に生きているのだと実感します。SNSは、人と広くつながり、学びの機会を得て、新しいコミュニティを築く場を提供するなど多くの利点があります。しかし一方で、学校の中だけでは終わらない「いじめ」のような暗い側面も存在します。さらに、ネット上で個人情報がさらされる危険や、子どもたちのメンタルヘルスに深刻な影響を及ぼすリスクもあります。
24時間逃れられないネットいじめ
いわゆる「ネットいじめ」とは、ネット上のコミュニケーションツールを使って、他人に嫌がらせや脅迫、侮辱などを行う行為です。SNSでは、投稿されたコメントや画像が残り、瞬時に拡散されるため、こうしたいじめの影響は深刻化しやすい傾向にあります。InstagramのストーリーズやSnapchatのように、24時間など一定時間で自動的に消える投稿であっても、スクリーンショットや録画によって保存され、瞬時に広範囲に拡散されることは避けられません。さらに、短時間で消えることは、悪質な投稿を行う側の心理的ハードルを下げ、軽率な行動を誘発することにもつながっています。匿名性が高く、証拠が残りにくい点も問題です。また、アルゴリズムによる自動拡散機能により、悪意ある内容が一瞬で多くの人の目に触れることもあります。たった一つの心ないコメントが、被害者にとっては長く消えない心の傷となる場合もあります。従来のいじめと決定的に異なるのは、いじめが起きる学校や職場といった物理的な場を離れても、そこから決して逃れられない点です。誰もが日常的に使うスマートフォンが新たないじめの場所となり、嫌がらせは四六時中続くのです。
その被害は決して軽いものでは無く、強い不安症やうつ症状、自傷行為に発展することもあり、最悪の場合、自殺まで考えてしまうケースもあります。特に若者は、継続的に敵意にさらされることで自己肯定感が失われ、自ら声を上げる力すら奪われてしまいます。また、女性や社会的に弱い立場の人々は、オンライン上でのヘイトスピーチやセクシャルハラスメントの標的になりやすい傾向があります。こうした攻撃は個人を傷つけるだけでなく、相互信頼に基づく健全なコミュニティや表現の自由をも徐々に蝕んでいきます。
オンライン上で広がるいじめや嫌がらせの数々
ネットいじめは、個人への攻撃そのものに焦点が当てられがちですが、SNS自体が個人のプライバシーに関わる大きなリスクを抱えていることを忘れてはなりません。中でも「ドキシング(Doxxing)」は、本人の同意なしに氏名や住所などの個人情報を公開する行為であり、極めて危険なものです。他人への復讐や恐喝、集団による嫌がらせの手段として使われ、被害者はストーキングやなりすまし行為、また虚偽通報によって警察が呼ばれる「スワッティング(Swatting)」に巻き込まれるようなこともあります。さらに深刻なのは、子どもたち自身が無意識に自らの個人情報を公開してしまうケースです。フルネームや学校名、自分のリアルタイムの居場所などを軽い気持ちでプロフィールに書き込んでしまい、悪用される危険にさらされます。現行の法律では、こうした被害から子どもを十分に守ることは難しく、一度拡散した個人情報をネット上から完全に消し去ることはほぼ不可能です。

ドキシングで最も懸念されるのは個人情報の漏洩
Credit: SafeHome.org
子どもを守るために親や社会にできること
一般的に「デジタルベビーシッティング」とは、デジタルデバイスを用いて子どもの様子をリアルタイムに遠隔で確認したり、スマートフォンやタブレットを子供をあやすために使うことをを指します。子どものネット利用において、単に端末の使用時間を制限したり、ただ見守るだけのデジタルベビーシッティングでは、子どもたちを危険から守ることはできません。保護者自身がデジタルリテラシーを高め、子どもがどのようにインターネットを利用しているかを、積極的に知ろうとする姿勢が必要です。2025年の全米を対象にしたある調査では、子どもの約9割が「ネットで不安を感じたときには親に相談できる」と答えており、親子のオープンな対話と積極的に関わることの重要性が示されています。家庭において一貫したルールを設けつつ、子どもの自主性を尊重し、温かい態度で接することで、学校やネット上でのいじめを大きく減らすことができます。
個人にできる対策としては、まずインターネットでのプライバシー設定を強化し、個人情報の発信を最小限に抑えることです。そして、万が一被害に遭ってしまった場合には、その証拠を何らかの形で残すことが大切です。一方でSNSの運営側にも、通報機能や、不適切な表現や画像を自動的に検知し遮断するフィルター、監視体制を常に改善する責任があります。現在、Cybersmile Foundationのような非営利団体が、ネットいじめに悩む人々への支援や教育を提供していますが、オーストラリアのように法改正を通じて国民を守ろうとする国も出てきています。
もはや、SNSがこの世界からなくなることはまずないでしょう。そしてSNSが人と人を強く結びつけるポジティブなツールである反面、その結びつきが原因となる問題も消えることはありません。だからこそ、デジタルの世界に潜むリスクを正しく理解し、それらを利用する個々人、子どもの保護者、プラットフォーム運営者、そして政府や自治体がそれぞれ具体的な対策を講じることが何より求められます。個人のプライバシーと尊厳を守ることは、一人ひとりの責任にとどまらず、社会全体が果たすべき義務でもあるのです。

ゲストライター G. Johnsonによる寄稿
(こちらは英語による執筆記事の日本語訳です。是非、オリジナル英語版もご覧ください。)

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